「文科省、LEC大に改善勧告へ 設置基準に違反の疑い」

マイスターです。

文部科学省は、「LEC東京リーガルマインド大学」について、大学設置基準などの法令に違反している疑いがあるということで学校教育法に基づく改善勧告を行うための手続きに入ったとのこと。
センター試験が入ってしまったのでご紹介が遅れましたが、先週、各メディアが報道していましたね。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「文科省、LEC大に改善勧告へ 設置基準に違反の疑い」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200701180189.html

■「特区大学に初の改善勧告、株式会社設立『LEC東京』文科省が発動へ」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070118ur03.htm
————————————————————

LEC大は、構造改革特区制度を利用して04年4月、資格試験対策の予備校を経営する株式会社「東京リーガルマインド」が開校。昨年3月、単位認定方法などをめぐって文科省から「警告」を受けていた。
文科省がその後調査したところ、専任教員の中に担当授業をせず研究もしていない教員がいる▽一部のビデオ授業で教員がおらず学生との質疑応答ができない――といった疑いが出てきた。
(「文科省、LEC大に改善勧告へ 設置基準に違反の疑い」(Asahi.com)より)

…文科省の複数の調査で、〈1〉予備校のテキストを使い、大学生と予備校生が同じ教室で授業を受けている〈2〉約170人の専任教員の多くが別の仕事と掛け持ちで、担当の授業を持っていない上、大学での研究活動もしていない〈3〉ビデオを利用した授業で教員がおらず、学生との質疑応答などができないケースがある――などの実態が次々に明らかになった。
これらの一部は、専任教員に大学での教育・研究を求めた大学設置基準などに違反する疑いが強い。同省はLEC大側に文書で指導を重ねてきたが、改善が見られなかった。
(「特区大学に初の改善勧告、株式会社設立『LEC東京』文科省が発動へ」(読売オンライン)記事より)

どうやら、このようなことが起きていた疑いがあるようです。事実だとしたら確かに問題です。
例えば「研究も教育もしない専任教員」を大学設置の申請時に記載していたのなら、それはほとんど「名義貸し」のようなものなのでは……? なんてマイスターは感じてしまうのですが、さて、実態はどうだったのでしょう。

同大は「法令違反にあたるかどうかは文科省の判断をまつ。改善勧告を受けた場合は内容を検討し、真摯(しんし)に改善していきたい」とのコメントを出した。
(「文科省、LEC大に改善勧告へ 設置基準に違反の疑い」(Asahi.com))

と記事にはあります。
しかし両メディアの報道によれば、同大は以前から、単位認定方法などをめぐって文科省から何度も文書などで警告や指導を受けていたとのこと。

それに、設置認可の審査を行った大学設置・学校法人審議会の委員達からは、

LEC大の経営母体となる株式会社「東京リーガルマインド」が展開する予備校との区別について、疑問視する声も委員の間で上がっていたという。委員を務める前筑波大学長の北原保雄・日本学生支援機構理事長は、「(大学が)給料を払わない専任教員がたくさんいるなど、審査途中でおかしい点にいくつか気付いたが、『改善します』と約束され、どうしようもなかった」と明かす。
(「特区大学に初の改善勧告、株式会社設立『LEC東京』文科省が発動へ」(読売オンライン)記事より)

などという意見も出ているようです。
大学側は、問題だと指摘を受けていたけれど、それにうまく対応できていなかったということなのかな……と思わせる報道です。

いずれにせよ今後、大学設置・学校法人審議会への諮問を経てより正確な調査が行われると思いますから、ここはさらなる報道を待ちましょう。
問題のある行為はなかった!と関係者が主張されるのだとしたら、それをちゃんと説明する機会でもあると思います。いずれにしても説明責任を求められている局面でしょうから、日本の大学全体の信用のためにも、明快な形で対応していただきたいなと思います。

ところで読売の記事が、気になる指摘をしてくれています。 

文部科学省が大学に対する初の改善勧告に向けて動き出した。「LEC東京リーガルマインド大学」(本部・千代田区)は、特例によりわずか3か月の審査で設置認可されていた。審査を行った大学設置・学校法人審議会の複数の委員は「認可時の審査が性急だった」と証言している。

大学の設置認可は通常、4月末までに申請を行い、7か月の審査を経て、11月末に出される。しかし、構造改革特区制度で株式会社に大学設立が解禁された初年度の2003年度だけは、新制度を推進するためという理由から、10月末に申請を出せば、翌2月中旬に認可が出されるという特例が認められた。このため、LEC大学は3か月の審査で、04年4月に開校した。

「全く新しいことを始めるのだから、慎重にやるべきだったが、短い期間で結論を出さなければならず、良いとか悪いとか判断できる状態ではなかった」。同審議会の委員として、審査を行った荻上紘一・元東京都立大学長は振り返る。
(「特区大学に初の改善勧告、株式会社設立『LEC東京』文科省が発動へ」(読売オンライン)記事より。強調部分はマイスターによる)

「特例」が認められた背景には、構造改革特区を広めようという政治的な意図などがあるのでしょう。この特例のために審査が十分にできなかったのであれば、確かにそれは少々問題です。
審議会の委員の方々はその点を悔やまれているようですが、「改善します」と言われたら信用せざるを得ない、そんな状況だったのでしょう。

ところで日本では今「設置基準は厳しいけど、一度作ったらそう簡単にはつぶせない」という仕組みから、「設置基準の間口は広いけど、問題があったら改善させたり、廃校にしたりする」という仕組みにシフトしていこうとしているわけですよね。「事前規制」から「事後チェック」へ、というやつです。

こういう仕組みでやっていこうとすれば、遅かれ早かれ問題のある学校は出てきたでしょう。その主旨でいくと今回の報道のようなことは「予想の範疇」ということになるのでしょうか。
発見が遅くなったという反省はあるにせよ、ちゃんとこうして問題のある行為を発見し、改善勧告を出す流れにできたことは、好意的に考えれば新しいシステムが順調に機能しているということなのかも知れません。

そう、事後チェックを重視する仕組みにするということは、

「問題と思われる行為が多少見つかるのは当然で、それをちゃんと発見して改善さえできれば、それで良しとする」

という、ある意味ちょっと開きなおった考え方でいくということなのですよね。今回の報道で、改めてそのことを理解できたような気がします。
となると今後は、こうしたニュースをしばしば目にするようになるのかも知れませんね。

改善勧告が出され後、LEC大はどのようにそれを受け止め、反映させるのでしょうか。個人的にはそこに注目していきたいと思います。

以上、マイスターでした。

————————————————
(関連リンク)
■「LEC東京リーガルマインド大学」(フリー百科事典『ウィキペディア』)
http://ja.wikipedia.org/wiki/LEC%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%AD%A6

■「LEC UNIV. NON OFFICIAL COMMUNITY LEC大学非公認コミュニティー」
http://www.lecdai.com/

真偽のほどはわかりませんが、内部の学生さんや教職員の方々によるものと思われる様々な情報が書き込まれています。

※ところで今回、「株式会社立大学がやっぱり問題を起こした!」というニュアンスの報道がいくつもありました。もう記事が消されてしまいましたが、例えばNHKは「”株式会社大学”改善勧告へ」というタイトルのニュースをサイトに掲載していました。まるで、株式会社立大学すべてに問題があるかのようなタイトルです。今回問題を指摘されたのはLEC大だけですから、他の株式会社立大学が少々気の毒でした。