「米国で理工系博士取得の韓国人、70%以上が帰国に否定的」

マイスターです。

海外への人材流出は、どの国にとっても大きな悩みです。
(研究者の方ですと「頭脳流出」という言い方もしますね)

学業に仕事に、国境を超えてグローバルな活躍をする人が多いのはとても喜ばしいことですが、優秀になればなるほど周囲から「できれば母国でその能力を発揮して欲しい」という贅沢な注文をつけられるようです。本人にとっては悩ましい問題でしょうが、帰国を期待する側の気持ちもわかります。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「米国で理工系博士取得の韓国人、70%以上が帰国に否定的」(東亜日報)
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2006121920558

■「米留学組が語る『韓国に戻りたくないこれだけの理由』」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/12/20/20061220000023.html
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そんなわけでお隣、韓国のニュースから。

韓国職業能力開発院が、興味深い調査結果を発表しました。

……04年に米国で工学・自然科学・バイオ科学分野の博士学位を取得した韓国人901人のうち、米国に残ることを希望する人の割合は73.9%だった。これは、20年前(1984年)の50%に比べて23.9%上昇したもの。
(「米国で理工系博士取得の韓国人、70%以上が帰国に否定的」(東亜日報)記事より)

この通りアメリカで工学、自然科学、バイオ科学分野の博士学位を取得した韓国人の間で、母国に帰らずアメリカでそのまま活動することを希望する方が増加しているとのことなんです。それが実に7割以上(!)に上るとのこと。本人はともかく、韓国国内の研究機関や企業、政府などから見れば、これは非常にゆゆしき問題だろうなと思います。

彼らがアメリカ残留を希望する理由はなんでしょう?

冒頭の記事では調査の結果から、そのあたりの「動機」を紹介しています。

開発院が01年以降、米国で博士学位を取得した人454人(米国に残留した博士255人、帰国した博士199人)を対象に今年6~9月調べた結果、米国に残った博士らは優秀な勤務条件(51.4%)、子女教育(16.2%)、専門性の伸張(10.8%)などを理由に帰国しなかったことが分かった。また、同調査によると、帰国した博士らも同じ理由から、米国行きを考えていた。
彼らの大半は、職務への満足度が低く、37.7%が「機会があれば再び出国する考えだ」としており、民間企業に就業した人の61.7%は「学位より低いレベルの業務に携わっている」と回答した。
(「米国で理工系博士取得の韓国人、70%以上が帰国に否定的」(東亜日報)記事より。強調部分はマイスターによる)

やはり一番の理由は、勤務条件の差であるようです。
学ぶ動機は人によって様々です。一概に、全員がこうであるといった言い方はできません。ただ、留学して高度な学業に励んできたわけですから、せっかく身につけた能力を生かせないのはやはりもったいないですし、本人にとっても悔しいことでしょう。「一体何のために苦労して海を渡ったんだ」と考える方が出てくるのも無理のないことだと、マイスターなんかは思います。
アメリカでも十分にやっていける力をお持ちの方なら、より存分に活躍できる舞台を選ぶのは自然なことでありましょう。

朝鮮日報の記事では、さらに具体的な「理由」が調査結果から抜粋されています。

「韓国企業でアイビー・リーグ(米国北東部の名門私立8校)は課長クラスだが、司法試験出身は次長か部長クラス。米国に戻りたい」、「韓国では雇用も安定しておらず、研究所で非正社員として働かなければならない。これでは韓国に戻ろうとする人などいない」
米国で博士学位を取得した理工系の博士らが韓国職業能力開発院のアンケート調査で吐露した「博士学位を取得しても韓国に戻りたくない理由」だ。
(略)
アンケート調査に応じた博士は政府レベルの政策が必ず必要であると指摘した。ある博士学位取得者は「愛国心に訴えるのはもう効果がない」とし、高級人材を流出させない画期的な対策が必要であると強調した。
(「米留学組が語る『韓国に戻りたくないこれだけの理由』」(朝鮮日報)記事より。強調部分はマイスターによる)

米国にいる方が、収入やポスト、労働環境等の面ではるかに恵まれた生活を送れる……、そんな思いを博士号取得者の皆様は抱いているようです。実際、おそらく両国で得られる「待遇」や「環境」の差は決して小さくはないのでしょう。
それに、そもそも留学して博士号を取るまでに結構なお金がかかりますよね。「元を取るまでは帰れない」という状態の方も少なくないかもしれません。

さて、この事態に韓国国内の皆様はどう対処されるのでしょうか。
母国で待っている側としては、ずっと手をこまねいているわけにもいかないでしょう。大学や企業が自ら人材を獲得する努力を起こすのを期待するのか、それとも国をあげて対策を打っていくのでしょうか。
(多分、今だって何もしていないわけではないのでしょうけれど)

こうした「悩み」については、日本も韓国と状況はそう大きく変わらないような気がします。というか、どの国でも多かれ少なかれこういった問題を抱えているんだろうなと思います。
着実に自国の取り組みを進めながら、他国の動向も大いに参考にしていきましょう。

以上、マイスターでした。