「第三新卒」という言葉から思うこと

マイスターです。

・大学院生に特化した職業紹介会社
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50272393.html

↑昨日の記事を書いている過程で、初めて知った言葉がありました。

【第三新卒】

第三新卒(だいさんしんそつ)は、大学院博士後期課程修了者、もしくは大学院博士後期課程在籍者などの25歳以上の就労経験がない(もしくは3年未満)の就職希望者のこと。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)

「第二新卒」という言葉は今や、よく耳にしますよね。一般的には、新卒入社後、何らかの理由により3年以内に転職を希望している人を指す言葉であるようです。
現在、企業は団塊世代の退職に備えて積極的な採用活動を行っています。しかしバブル崩壊後、新卒採用を控えてきたため、そのあたりの年齢層の正社員があまりいないのです。社員の年齢構成が偏っているというのは、企業にとってあまりいいことではありません。そこで今は、そこに第二新卒を充てるといったことが行われています。もう市民権を得た言葉なのではないでしょうか。

しかし、「第三新卒」は……社会の中で定義がまだ固まっておりません。

wikipediaには上記のような定義が掲載されていますが、ネットを調べてみると、他の意味で使われている例も見かけます。

例:
■「未来工学研究所メールマガジン 2006年5月16日号(第66号)」(未来工学研究所)
http://blog.mag2.com/m/log/0000048573/107275573.html

正直、wikipediaの通りの意味で「第三新卒」という言葉を使っているのは、昨日ご紹介したDFSHR社くらいなんじゃないかという気もします。(というよりwikipediaの記事は、このDFSHR社の事業をよく知る人が、同社の事業内容に合わせて書いたんじゃないか、という印象すらあります)
ですので、上記で引用させていただいた定義は、そのうち変わるものかも知れないと思っていただいた方がよさそうです。

しかしながらこの「第三新卒」という言葉、なかなか興味深い示唆を与えてくれる言葉であるようにも思います。

○どうしてわざわざ「新卒」という言葉を使うのか

日本の企業が、長らく「新卒採用」にこだわってきたのは皆様もご存じの通りです。これは年功序列・終身雇用の人事制度と密接に絡んでいます。

以下は、マイスターなりの、年功序列制度の説明ですが……

年功序列というのは、その名の通り、年齢が上がるにつれて然るべきポストが与えられ、それにともない給与も自然に上昇していくというシステムです。若い人はどんなに優秀でも「若いなりの」仕事しかさせてもらえず、年長者はどんなに仕事ができなくても高額の給与をもらえます。

裏にあるのは、「若いうちはつまらない単純作業のような仕事ばかりをさせられるし給与も安いけれど、いつかはほぼ確実に管理職にもなれるし給与も上がる、だから今は我慢してね」という発想です。企業内には、どうしてもそういう単純業務に携わる方だって必要です。そこで、給与を低く抑えた若い正社員達をそこに充てていたのですね。

この仕組みのポイントは、「若い」ということが、給与を低く抑える理由にされるという点です。
誰だって単純作業に従事させられるのは嫌でしょう。そこで、「大学でどんなにいい勉強をしてきたとしても、君たちはまだ『若い』のだから、こういう仕事しかさせないよ。でも、そのうち給与も上がるし、面白い仕事をさせてあげるからさ」という論理が使われるのです。
すると「同じ年齢の社員は、同じ水準のポスト、同じ水準の給与」という原則の人事制度になるのです。で、このシステムに都合が良いのは、「社員は全員、22歳の新卒時に一括採用し、極力、途中で余計な人は入れない」という採用方法であるわけです。今なら、こんな仕組みにこだわることをナンセンスだと考える人も少なくないでしょうが、かつてはうまく機能していたのです。

以上、年功序列の説明終わりです。

で。

こういった経緯をふまえると、マイスターなんかは、「第三新卒」のように無理矢理「新卒」という言葉を使う風潮の裏には、やっぱりこういった「まっさらの新人をまとめて採用。若いうちは相応の仕事しかさせない」という発想があるのかな、と感じるのです。
(少なくとも「第二新卒」は、今のところそういったニュアンスで使われていることが多いです)

新卒には仕事の経験がないのですから、いきなり高度な業務を任せられないのは当然かもしれません。ただ、博士課程を出た学生を「第三新卒」という名で採用する場合はどうでしょうか。
なんだか企業から、「新卒に毛が生えた程度の、より便利な労働者。新卒だから安価」みたいな認識を持たれそうな気がしないでもありません。ちゃんと将来的に「育成」されることを前提としての第三新卒採用ならいいのですが、そうでないケースもいっぱい出てくるんじゃないかな、なんて思います。

もちろん、これはマイスターの杞憂かも知れません。

例えばDFSHR社の場合、ベンチャーなど、年齢主義ではなく正当に実力を評価する企業や、大学院卒達の育成方針をちゃんと持っているところを顧客にすると、サイトで書いておられました。そういった企業であれば確かに、従来「年功序列制度における新卒というポジション」が担わされてきた役回りを、そのまま院卒生達にまわすだけということは少ないかも知れません。

ただ個人的には、大学院生の採用市場を作るのは大いに賛成ですが、「第三新卒」なんていう言葉はやっぱりなるべく使わない方がいいのではないかと考えます。

以上、「第三新卒」という言葉から感じたことでした。
マイスターでした。

———————————–
※最近では、こんな本も売れているようです。
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

マイスターも先日読みましたが、なかなか考えさせられる内容でした。
今回書かせていただいたような、「新卒」が今後どう扱われるのかといったテーマについても触れられており、大学関係者の皆様には参考になるのではと思います。
よろしければどうぞ。