ロングテールで「宇宙学部」を実現?

マイスターです。

サイバー大学の説明会が開催されていたようですが、その中に興味深い発言があったようなので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「『宇宙学部も作りたい』–吉村作治学長が語る『サイバー大学』の教育構想とは」(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20337992,00.htm
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今後2~3年以内には他学部の新設も予定しているが、吉村氏は「既存の大学にはない学部を作りたい」と語る。たとえば日本語だけを教えるのではなく、日本の文化や歴史、現状を教える「日本学」や地球物理学ではなく、宇宙から人間を考えるという「宇宙学部」などを設立したいという。一方で、学部新設の課題として「良い教員を集められるか、良いコンテンツを提供できるかということがある」とした。
(上記記事より)

この記述を見て「ロングテール」という言葉を連想する方は、現代のネット事情をよくご存知なんだと思います。

宇宙学部なんてのは、普通の大学では成立しません。

例えば東京のどこかの私立大学に宇宙学部を設立したとしても、学生を十分集めることはまず、できないでしょう。
「首都圏の大学に通えて」「18歳~25歳くらいを中心にした」学生集団を、「毎年コンスタントに集める」ことができるほど、宇宙学にはニーズはありません。

そして、学生が10人やそこらでは教員組織を維持できません。学部一つ作るのに十分な教員をそろえようと思ったら、大変な費用がかかります。「宇宙学」は特殊ですので、教えられる教員は他の学問に比べれば少ないと思われます。数人の学生達のために全国から貴重な教員達を一箇所に引っ張ってきていては、コストに見合いません。

そんなわけで普通の人はまず、宇宙学部なんてのをつくろうとは思わないのです。
(東大など、十分な研究設備や資金の後ろ盾を既に持っていて、かつ世界中から学生を集めることが考えられるところはまた別ですが)

でも、サイバー大学ならどうか?

サイバー大学は、日本語に限定された教育ではありますが、マーケットは世界全体を想定できます。

日本中、世界中のニーズをかき集めたら、毎年100人、200人くらいの学生を集めることはできるのかもしれません。
きちんとした優秀な教員陣がそろっていて、魅力的な授業を展開できるのだとしたら、学問的にはマニアックな宇宙学でも、勝負を打つことはできるのかもしれない……そう思わせる要素はあります。

これは、「ロングテール」の発想です。

※「ロングテール」の意味をご存じない方は、↓こちらをご覧下さい。
(参考)
・「ロングテール」を捕まえろ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50093005.html

もしかすると「マニアックな学びの欲求を満たす」という目的のために、IT技術が使われる時代が来たのかもしれません。

これまで学びたくても学べなかった学問を学べるようにしてくれる仕組みなのだとしたら、サイバー大学のようなインターネット大学に対する評価も変わるかもしれない。マイスターなどはそう思います。

サイバー大学には既に、「世界遺産学部」などという、それこそサイバー大でしか成立しないマニアックな学部がありますので、これが試金石になりそうです。

でもマイスターが思うに、どうせやるなら、わざわざ別の学部組織に分ける必要はないんじゃないでしょうか。

学部組織で分けることにこだわるのではなく、「リベラルアーツ学部」のような広い領域をカバーする組織にして、それを「○○学プログラム」とか「○○研究コース」とか、「○○スタディーズ」とかいった緩やかな専攻でつなぐ形式にしたほうがいいのでは。

もし、「ロングテール」理論を大学の授業履修に生かすのであれば、数多くの授業の中から、興味にあわせて自分で自由に授業を選択できる方式にしたほうが、効果的であるように思われます。
カリキュラム選択の自由度は、ロングテールな大学の生命線です。

……などと、すっかりサイバー大学がロングテール理論を実践しようとしている前提で書いてしまいましたが、さて、実際のところはわかりません。

ただ、仮に吉村学長が夢とロマンで「世界遺産学部」や「宇宙学部」を構想しているだけだったとしても(笑)、孫正義氏とソフトバンクの皆様は、その背後で絶対に、ロングテール・モデルを意識しているはずです。

学部を段階的に増やして、十分な人数および領域の教員がそろったら、そのときに全学部を一本化するんじゃないかという予感がしないでもありません。

そういった意味ではもしかすると、「学び」をめぐる壮大な社会実験になるかもしれません。部外者がこんなことを言うのもなんですが、なんだかちょっと楽しみです。
一体どうなるんでしょうね。

以上、マイスターでした。