マイスターです。
皆様は神戸市の「ポートアイランド」をご存じでしょうか。
マイスターはこの場所にはこれまであまり縁がなく、せいぜい『ポートピア連続殺人事件』を連想する程度だったのですが、少し前から、この人工島に興味津々です。
神戸市の「ポートアイランド」には、現在神戸女子短期大学が所在しています。
アイランドの北西部ですね。以下の地図をご参照ください。
この神戸女子短大キャンパスの西の海岸、がらんと空いているように見える部分に、なんと3つの大学が新たに開学するのです。
しかも隣り合わせに並んで、邪魔な外壁のない連続したキャンパスとして作られるのです。
■「ポートアイランド新キャンパス|周辺環境」(神戸学院大学)
http://www.kobegakuin.ac.jp/~kikakubu/shintoshin/env.html
■「ポートアイランドでキャンパスライフが始まります」(神戸夙川学院大学)
http://www.kobeshukugawa.ac.jp/px/modules/tinyd1/index.php?id=4
■「キャンパス案内」(兵庫医療大学)
http://www.hyo-med.ac.jp/new-u/campus/index.html
神戸女子短大も敷地内に系列の「神戸女子大学」の学部を増設しますので、これで5つの大学・短大が、ポートアイランド北西部にできることになるのです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「神戸・ポーアイ『全入』生き残りへ 結んで開く『3大学』」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/kansai/wakuwaku/info1206-4.html
■「ポーアイに3大学新たな学生街に」(Asahi.com)
http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000170602080002
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最初に進出を決めたのは神戸学院大。神戸市西区の本キャンパスが手狭だったため、14.5ヘクタールを122億円で購入、法、経済、経営、薬の4学部を移すことにした。ポーアイは神戸・三宮から新交通システムで約10分。「好立地が受験生へのアピールにつながる」と判断した。
続いて、兵庫県西宮市の兵庫医科大と、同市で中学・高校や短大を運営する夙川学院が共同で7.5ヘクタールを66億円で購入。それぞれ、兵庫医療大(薬、看護、リハビリテーション学部)と、神戸夙川学院大(観光文化学部)を新設する。
道路を挟んで向かい側では今春、神戸女子大が既設の短大に加えて4年制の健康福祉学部を開設しており、五つの大学・短大の全学年がそろえば、学生と教職員は1万人にのぼる見通しだ。
(「神戸・ポーアイ『全入』生き残りへ 結んで開く『3大学』」(Asahi.com)記事より)
この少子化の時代、各大学は選ばれるために様々な工夫をしていますが、いや、このような方法もあるのか、という感じです。
せっかく一緒に開設するんだからということで、(新しい3大学は特に)相互の連携に関して熱心なのですね。
新設の3大学は「開かれたキャンパス」にしようと、敷地に外壁を設けず、学生や地域住民が自由に行き来できるようにする。移動時間が必要ない長所を生かして単位の互換も採用。神戸学院大の担当者は「他大学のユニークな授業を受けられるのは、大きなメリットのはず」と話す。
神戸学院大の構内には、地元・神戸ポートピアホテルのレストランや大手書店・丸善などが運営する売店が入る。兵庫医療大は500人収容の講堂をつくる。いずれも学生が相互に利用できるようにする予定だ。図書館の学術雑誌なども重ならないように購入して充実させる。
(「神戸・ポーアイ『全入』生き残りへ 結んで開く『3大学』」(Asahi.com)記事より)
兵庫医大と夙川学院は共同で約7万5600平方メートルを約66億円で購入。校舎は別々に建てるが、食堂などの厚生施設の共同利用を計画している。2大学は今春にも文部科学省に設置認可の申請をする予定だ。
(「ポーアイに3大学新たな学生街に」(Asahi.com)記事より)
新設の3大学は、初めからキャンパス内の売店やレストラン、講堂、図書館などの施設を共同利用するものとして計画しているようです。こうしたものを全部合わせれば、質・量・種類ともにかなり充実した環境になるでしょう。学生にとっては非常に大きな魅力です。
ちなみに、実際にどういった位置関係になるかというと、↓こんな感じです。
■「ポートアイランド土地拡大図」(神戸市みなと総局)
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/39/port/business/06pi.jpg
※図の左上の方、「ポートアイランド」と大きく書かれた部分の下のあたりをご覧ください
単位互換の仕組みも、これだけ近ければ大いに活用されることでしょう。
昨今では、複数の大学で単位互換のための協定を結ぶ程度のことは珍しくありませんが、だいたい実際に活用している学生はごく一部。一般の学生や受験生は互換制度の存在を知らなかったり、仕組みは知っていても通うのが遠くて敬遠していたりというケースも多いのではと思います。
ポートアイランドの学生達はその点、やる気さえあれば気軽に互いの授業を履修できる環境にありますので、恵まれていると言えそうです。
さっそく以下のような合同イベントも行われています。
■神戸ポートアイランド 四大学シンポジウム
http://www.asahi.com/ad/clients/kobe4univ/
また、これだけ学生が集中すれば、キャンパスの様子もさぞ活気に満ちたものになることでしょう。サークルなどの学生活動も、共同で運営されるものがたくさん出てくるに違いありません。もしかするとこの「大学の活気」こそが、このプロジェクトに参加することで得られる最大のメリットかもしれません。
オープンキャンパスなども、せっかくですからなるべく合同で行えばいいのではと思います。
これは単科大学を作るというよりも、「協力してひとつの巨大な連合大学体を作る」というのに近いのではないか、とすら思えてきますね。
少なくとも、そういう運用が十分に行えるくらいの環境にあるのは確かでしょう。
報道には、こんな記述もあります。
神戸学院大の北側には、学生たちの実習の場にもなる介護施設を備えた分譲住宅約190戸、学生や教職員向けの賃貸住宅約550戸も建設され、「職住近接」の新たな街が生まれる。
(「ポーアイに3大学新たな学生街に」(Asahi.com)記事より)
いよいよ大学街っぽいイメージになってまいりました。
いっきに1万人規模の大学街が、住宅地とともに誕生するわけですから、街の雰囲気が一変しますね。
どうやら学生の増加に備え、ポートアイランドへのアクセスを支える「ポートライナー」も増便されることになっているようです。
■「ポートライナー、3大学開校で増便へ」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/chiho/hyogo/061205/hyg061205004.htm
さて、これだけの大きな事業ですから、行政も大きく関わっています。
みなさま、新設される学部は薬学を始め、医療系が目立つような気がしませんでしたか。
実は神戸市は、「新産業医療都市構想」というビジョンを持っており、ポートアイランドの別の地区では、医療系の研究機関を集中的に整備しているのです。
(参考)
■「神戸ポートアイランド西地域 プロフィール <H18.4.1現在>」(都市再生本部)
http://www.toshisaisei.go.jp/04toushi/hyogo/port/02.html
この医療都市構想と今回の大学進出地区は形式上、別のプロジェクトとされています。でも市としては、「できれば医療系の大学に来てもらいたい」という思いもあったんじゃないかな……なんて、マイスターは想像します。
実際、↓こんな記事もありました。
いずれの大学も、単位互換や教員の交流などの連携に加え、生涯学習や図書館の一般開放による地域住民との交流を模索している。ポーアイ2期地区で市が推進している医療産業都市に進出した企業との産学連携も視野に入れているほか、神戸空港が近いことで教員の学会活動などが盛んになる点にも期待が大きい。
(「ポーアイに3大学新たな学生街に」(Asahi.com)記事より)
大学と行政が自らの将来を賭け、一体になって取り組むポートアイランドの開発です。
キリがないのでこのくらいにしますが、いかがでしょうか。
今回ご紹介する取り組みは、大学の魅力を高めるための新しいアプローチとして注目されるかも知れません。
(と同時に、行政関係者にとっても気になる事例になる……のかも?)
この5つの大学&短大、そして神戸市が成功を収めたら、他でも似たような計画が持ち上がるかも知れません。
もちろん、これだけの共同事業を起こす機会、そうそうあるものではありません。しかし、他の地域の大学と差別化を図る充実した環境を、なるべく経営リスクを抑える形で手に入れられるということで、大いに参考にはされそうです。
すべての大学がポートアイランドに出そろったら、ぜひ一度観に行ってみたいと思ったマイスターでした。
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(おまけ)
■「神女MOVIE」(神戸女子大学 神戸女子短期大学)
http://www.smile-navi-web.com/movie/#top
本文の内容とは直接関係がないのですが、面白かったのでご紹介します。
いわゆる広報ムービー配信コンテンツですが、手作りっぽいユニークな映像が多く、見ていて癒されます。もしかして広報部の方が自ら編集しておられたりするのでしょうか。いいなぁ。
神戸もすごいですね!刺激的な記事をありがとうございました。