慶應義塾大学と共立薬科大学が合併 慶大薬学部新設

マイスターです。

ちょっと前では想像もしなかったことが当たり前に起こる、そんな時代ですね。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「慶応大と共立薬科大、合併へ 08年4月めどに」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/1120/016.html?ref=rss
■「<慶應義塾>共立薬科大学と合併へ 08年慶大薬学部新設」(毎日新聞 Yahoo!NEWS掲載)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061120-00000103-mai-soci
■「慶応大と共立薬科大が合併へ」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061120AT1G2003I20112006.html

■「Keio Top News:学校法人慶應義塾と学校法人共立薬科大学は、合併を前提として協議に入ることで合意」(慶應義塾大学)
http://www.keio.ac.jp/news/061120.html
■「News:共立薬科大学と慶應義塾との合併について」(共立薬科大学)
http://www.kyoritsu-ph.ac.jp/news/061120.html
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慶応義塾大(東京都港区)と共立薬科大(同)は20日、合併する方針を決めたと、発表した。08年4月をめどに、慶大は共立薬大を吸収する形で薬学部と大学院薬学研究科を設置する。少子化で、計算上は大学・短大の入学志願者数と入学者数が同じになり、選ばなければ全員が入学できる「大学全入時代」が07年度にも到来するとされる。すでに経営破綻(はたん)する私大が出てくるなかで、今後再編の動きが加速しそうだ。
(略)
健全な財政基盤を持つ共立薬大との合併は、医学部や看護医療学部を持つ慶大にとってもメリットは大きい。薬学の研究が多様で高度になるとともに、医学、医療分野とも連携できる。
(略)
同日、記者会見した安西祐一郎・慶大塾長は「研究水準の向上が期待でき、質の高い学生の確保など私立大学が直面している競争に有利になる」。共立薬大の橋本嘉幸理事長は「総合大学となる利点は非常に大きい。慶応と一緒になることでグローバルな視点も広がる」と話した。

共立薬大は07年度まで学生を募集する。すでに在籍している学生が卒業する際に、どちらの大学の卒業生となるかについては、今後両大で検討するとしている。
(「慶応大と共立薬科大、合併へ 08年4月めどに」(Asahi.com)記事より)

いよいよ、大学同士のM&Aも本格化してきた観がありますね。

慶應義塾大学は医学部と看護医療学部、それに国内最大級の大学病院を持っています。また、理工学部やSFCでは先端的な生命科学の研究も行われています。
これに薬学部および薬学研究機関を併設し、医療・生命科学分野の研究・教育力を強化したいという思いがあったのでしょう。
Yahoo!のニュースでも、以下のように書かれています。

関係者によると、慶応大が薬学部を持つ他大と合併するという話は2~3年前からあったという。慶応大にはこれまで医学部と看護医療学部はあったが、薬学部はなかった。慶応大のメリットについて、学校情報に詳しい出版社「大学通信」の安田賢治情報編集部長は「総合大学として薬学部を持てば、生命科学の分野など研究や教育の幅が広がると考えたのでは」とみる。
(「<慶應義塾>共立薬科大学と合併へ 08年慶大薬学部新設」(毎日新聞 Yahoo!NEWS掲載)より)

このように、慶応にとっては大いにメリットがある話みたいです。

では、共立薬科大学にとってはどうでしょうか。
それについては、合併理由について触れた、以下の記述が参考になります。

両大学によると、合併に踏み切った要因は、06年度入学者から導入された「薬学部6年制」の影響が大きいという。

薬剤師になるためには、これまでの4年から、原則6年の履修が必要になった。このため、学生の間では学費の負担感が強まった。一方、ここ数年続いた薬学部人気で大学や学部の新設も相次いだ。全国の私立薬科大は06年度、前年度より大幅に志願者を減らしたものの全体の学生数は増えたため、実習先の医療機関の確保も課題となっていた。

薬剤師国家試験の合格率が高く伝統がある共立薬大でも、04年度に約10倍だった志願倍率は、06年度は約5倍に落ち込んだ。さらに、今後少子化で18歳人口が減り続け、現在の経営状況を悪化させないようにするため、キャンパスの近い慶大との合併に踏み切ったとみられる。
(「慶応大と共立薬科大、合併へ 08年4月めどに」(Asahi.com)記事より)

どうやら共立薬科大学としてもメリットが大きそう……というより、これは「生き残りをかけて選択した」という表現の方が正しいのかも。
共立薬科大学は、薬剤師試験の合格率などでも成果を上げていますし、現在はまだ経営も健全のようです。「今後二度と増加に転じることがなさそうな18歳人口カーブ」を考慮に入れつつ、できることがあるうちに先手を打った、というところなのかもしれません。
かなり大胆な決定ではありますが、先を見越した上での迅速な決断は良い経営者の条件の一つ。この点、評価される向きもあると思います。

ちなみに、受験生からの評価というところでは、↓今、受験ランキングはこのようになっております。

■「私立大学入試難易ランキング表(2007年度用)薬・保健衛生学系」(代々木ゼミナール)
http://www.yozemi.ac.jp/rank/gakka/s_yaku1.html

共立薬科大学、現時点でも受験生から好評価を受けているようです。2008年度入試では、私大薬学部の受験生獲得競争が、ここから若干変わるのかも知れませんね。

さて、このように、基本的には双方にとって喜ばしい話のようです。
共立薬科大学の学生さんにとっては、しばらく混乱させられることもあるかもしれませんが、そのうちメリットの方も享受できるようになると思います。両大学は、学生が不利益を被らないように配慮してあげてください。

(ところで、共立薬科大学の同窓会組織も、慶應義塾の「三田会」と一本化したりするんでしょうかね・・・・・・? 別々に存続し続けるのも何かおかしい気がしますし……)

ただ、もちろん、順調なことばっかりではないでしょう。
こうしたM&Aにつきものなのは、そう、リストラです。

3.今後の協議の進め方
今後、慶應義塾と共立薬科大学は、協議推進のための組織として「両法人合併推進会議」(仮称)を立ち上げる予定です。そして、前述の目指すべき方向をふまえ、双方の歴史と現状を尊重し、かつ法人合併により双方に不利益が生じないように特に学生が最大の受益者であるよう、十分考慮を重ねて、具体的な検討を行ってまいります。
慶應義塾プレスリリースより)

今の段階では、まだ↑このくらいのことしか具体的な合併の進め方が公表されていません。
もしかしたら、共立薬科大学側は、既に教職員の雇用の確保などを条件としてつけておられるのかも知れませんが、もしそうでないのだとしたら、話をまとめていくのは結構大変だろうなと思います。

■「関学と聖和大の合併、09年4月に延期」
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000166636.shtml

↑関西学院大学と聖和大学の合併話も、

学科や合併後の職員待遇などを決めるのに時間がかかり、予定に間に合わなくなった

という理由で、予定が延期されることになったようです。
そのあたりの話の進み方次第で、慶応と共立薬科大学の合併も先に伸びる可能性はあります。詳細のほどはわかりませんが、そのうち大学から発表されるかも知れません。

生き残りをかけた大学同士のM&Aは、今後も様々なところで行われると思われます。
お互いの強みを高められ、ステークホルダーの皆様にとってもメリットを与えられるM&Aであれば、必ずしも悪いことではないと思います。

ただ、企業の世界と同様「どこからも合併してもらえない大学」も、おそらく世の中にはたくさんあるわけです。これまでなあなあで経営されてきた大学とか、これといった特徴を磨いてこなかった大学は、最後の最後まで苦労すると思います。
また、いざ合併となったとき「残してもらえない教職員」も、それなりに出てくると思います。ちゃんと普段から研鑽して、自分の商品価値を磨いておかないといけませんね。
(って、これ他人事ではありませんね。がんばらねば……)

そんなわけで今日は、大学同士のM&Aに関する報道をご紹介させていただきました。

以上、マイスターでした。