アメリカの大学と、アジアの学生との関係

マイスターです。

アメリカの大学に関して、こんなニュースを見つけました。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「同時テロ以降減っていた米大学への留学生が再び増加」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20061114i112.htm?from=main1
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米国際教育研究所が13日発表した調査結果によると、2001年の米同時テロ後、減り続けてきた米国の大学への留学生が再び増え始めた。

それによると、この秋に始まった06~07年の学年に新たに登録した留学生は約14万3000人で前年より8%増えた。同時テロ後のビザ発給規制が緩和されたこと、政府や各大学が優秀な外国人学生の獲得に本腰を入れ始めたことが増加の理由という。

中でも熱い視線を向けているのがアジアで、現在もスペリングズ教育長官が、ジョンズホプキンス大、ニューヨーク州立大など12校の学長を率い、米国留学を呼びかけるため、日本、韓国、中国を歴訪している。

アジアはすでに米国への留学生の最大の供給源になっている。05~06年の留学生(約56万人)を出身国・地域別に見ると、インド、中国、韓国、日本が1~4位を占めたほか、6位に台湾、10位にタイが入っている。このうち韓国は前年比10%を超える大幅な伸びを記録した。一方、日本は減少傾向が続いている。
(上記記事より)

このように、減少気味だったアメリカへの留学生が、どうやらまた増えてきているそうです。

「同時テロ後のビザ発給規制が緩和されたこと」というのは、非常に想像しやすい理由ですが、「政府や各大学が優秀な外国人学生の獲得に本腰を入れ始めた」というのも気になりますね。

このブログでも、ちょうど先日、教育省長官をはじめとするアメリカの大学関係者達が、留学受け入れPRのために日本、韓国、中国を訪問するというニュースをご紹介したばかりです。

・米国の大学教育関係者団が、アジアで留学をPR
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50262100.html

この大学教育関係者団ですが、14日に日本側の学長達と「日米学長会議」を行い、留学ビザの取得改善など、様々な意見を交わしたようです。

■「米教育長官、留学ビザ取得の改善約束」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/1114/015.html

留学生が減ったことに危機感を覚え、さっそく行動。PRも上手。ううむ、アメリカってこういうところはやっぱりすごいですよね。
今回のアジア行脚も、「政府や各大学が優秀な外国人学生の獲得に本腰を入れ始めた」ことの一つの表れなのでしょう、きっと。

なお、

韓国は前年比10%を超える大幅な伸びを記録した。一方、日本は減少傾向が続いている。

……という記述も、冒頭の記事にはあります。この点は、また色々と考えさせるものがありますね。

さて、このように、特にアジア諸国で人気なアメリカ留学。

しかし、そんな空気に水を差すような報道も見つけてしまいました。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「名門大学はアジア系に不利?~公民権局、プリンストンの調査を開始」(U.S. FrontLine)
http://www.usfl.com/Daily/News/06/11/1114_017.asp?id=51398
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全米の名門大学が、入学を希望するアジア系米国人の選考基準を他人種・民族より厳しくしているとの見方が浮上している。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、プリンストン大学に入学を拒否された背景には人種差別があるとして、中国系米国人のジャン・リーさんはこの春、教育省公民権局に苦情を申し立てた。現在イェール大に籍を置くリーさんは、全米共通の大学入学適性試験 SATで満点に当たる2400点、SAT2でも2390点を獲得した。イェールのほかスタンフォードとMITにも合格したが、プリンストンは不合格となった。

同局は、1度はリーさんの訴えを「証拠不十分」として退けたが、高校で同級だった白人生徒がより低い SAT点数でプリンストンに入学を認められたとの説明を受けて調査開始を決めた。リーさんは、同大が人種の選り分けや卒業生の子女の優遇といった慣習を改めるまで政府の資金援助を凍結するよう求めている。

プリンストンは同局の調査への協力を表明している。
(上記記事より)

正確には、こちらは留学生ではなく「アジア系アメリカ人」の話ですね。ただ、今後の留学生受け入れにも影響を与える可能性がある内容です。

アメリカの大学では、有名人や、寄付金をがっぽりはらってくれそうな金持ちの子弟を優遇して入学させるような大学もある……これは、よく耳にする話です。
マイスターには真偽のほどわかりません。もちろん、アメリカのすべての大学がそうであるわけでもないでしょう。ただ、様々な人の話を聞く限り、「やっているところはやっている」のかな、という気はしています。(日本にも、そういう大学がないとは言い切れませんしね)
上記のジャン・リーさんの訴えは、そんな不明瞭な大学入学の実態を糾弾するもののようです。

正直、上記の報道だけでは、「人種差別」を理由に不合格になったのかかどうかはわかりません。
例えばSATの点数以外にも、各種の書類を提出していたりするでしょう。アメリカではボランティア経験などがないと名門大学には入れない、なんて聞くことがありますが、そういう部分で落とされたかも知れませんし……。

ただ、SATで圧倒的な高得点を取っていた受験生の訴えであるだけに、「不明瞭だな」と感じさせる部分はありそうです。

プリンストンは同局の調査への協力を表明している。

とあります。
そう言えば我が国では最近、年齢を理由に不合格にしたのでは?と訴えられたのに、結局「疑わしかろうがなんだろうが、選ぶのは俺たちの権利なんだから、つべこべ言われる筋合いはない」という論理で一切の情報を出すことを拒んだ国立大学がありました。どうやらこの2大学では、入試というものの認識が全然違うようです。
「大学が受験生を選抜する権利を持っている」とだけ考えるのか、それとも、それに加えて「受験生も、大学によって公平に審査される権利を持っている」と考えられるか、その違いなのかなという気がいたします。
「不明瞭なことがあるというのなら、どうぞ調べてください」というプリンストン大学の姿勢は、やましいことをしていない自信があるんだな、と周囲に思わせるものです。

もっともここには、有力なマーケットであるアジアの学生達から疑いの目を向けられるとマズイ、という経営的な判断も働いているのでしょう、たぶん。
同大ではアジア系が全体の13%を占めていると記事にもあります。「アジア系に厳しい大学」というイメージを持たれると、それが海外に伝わり、今後アジアからの優秀な海外留学生達がみんなプリンストンを避けて他の大学に行ってしまうなんてことにもなりかねません。大学は大きな損失を被ることになりますので、それは避けたいのでしょう。
またアメリカには各種の人種差別問題があり、それを撤廃するための運動も盛んです。そういう流れに逆行している大学だと思われるわけにもいかないのだと思います。

記事には

米人口の4.5%を構成するアジア系は、名門校ではどこでも全学生の10~30%を占めている。しかし、一般的にアジア系の学力は高いため、現在以上に入学を認められてもおかしくないというアジア系の不満は高まっている。
(「名門大学はアジア系に不利?~公民権局、プリンストンの調査を開始」(U.S. FrontLine)記事より)

ともあります。プリンストン大学がジャン・リーさんを納得させられるかどうか。その結論次第で、アジア系が全体として持っているこうした不信感も少しは解消されるかも知れません。(もしくは今以上に高まるかも知れませんが)

というわけで今日は、アジアとアメリカの大学との関係についての報道をご紹介いたしました。(後半は「アジア系アメリカ人」の話でしたけれど)

以上、マイスターでした。