イラク、高等教育関係者の危機

マイスターです。

今日は朝から、この事件の経過を気にしていた方も多かったのではないでしょうか。

【教育関連ニュース】—————————————–

■2006年11月14日 23:48
「教育関係者ら150人拉致 イラク、大学閉鎖へ」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006111401000762.html

■2006年11月15日 09:45
「拉致事件で警察高官拘束 イラクで死者117人」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006111501000159.html

■2006年11月15日13:45
「イラク警察幹部5人、教育省職員の拉致巡り逮捕」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20061115id03.htm

■2006年11月15日 20:39
「研究施設の集団拉致、大半の解放情報も錯綜 イラク」(CNN.co.jp)
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200611150003.html
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イラクの首都バグダッドで14日、内務省特殊部隊の制服を着た武装集団が高等教育省の建物を襲撃し、アジリ高等教育相によると、同省付属研究機関の幹部や研究員ら100-150人が拉致された。

イラクでは、イスラム教シーア派民兵らが民間人を拉致し殺害する事件が多発しているが、一度に100人以上の教育関係者が標的となるのは極めて異例。

アジリ氏は、研究者や教職員が「これ以上殺害されるのを座視できない」として、首都の治安が改善されるまで各大学を閉鎖すると述べた。

AP通信などによると、この研究機関は外国留学を希望する研究者や学生に奨学金を支給する役割を担っていたといい、こうした活動に反発する勢力の犯行の可能性がある。
(「教育関係者ら150人拉致 イラク、大学閉鎖へ」(東京新聞)記事より)

14日にイラクで起きた大規模な襲撃事件。標的にされたのは、なんと同国の「高等教育省」です。付属研究機関の幹部や研究員など100~150人が拉致されました。

拉致された理由については、様々な報道がなされています。

AP通信などによると、この研究機関は外国留学を希望する研究者や学生に奨学金を支給する役割を担っていたといい、こうした活動に反発する勢力の犯行の可能性がある。(東京新聞記事より)

高等教育省を牛耳るスンニ派を標的とした宗派間テロの可能性がある。(読売オンライン記事より)

目撃者によると、被害者の大半はイスラム教スンニ派で、シーア派との抗争が背景にありそうだ。
犯人グループはシーア派が多い内務省特殊部隊の制服を着ていたが、同部隊との関連は不明。(NIKKEI NET記事より)

マリキ首相は同日「民兵同士の対立」が拉致事件の原因と述べ、イスラム教シーア派民兵組織が事件にかかわっているとの見方を示唆した。(東京新聞記事より)

……と、スンニ派とシーア派の対立が原因とする報道が多いようです。今現在の報道を見る限りでは、今回の襲撃の直接的な原因は、どうやら宗派同士の対立だと思われますね。

ただ、

イラクでは教員を含む大学関係者への襲撃が頻発しており、同高等教育相はAP通信に対し「現状を容認できない」と述べ、治安が改善されるまでバグダッドの大学を閉鎖する方針を示唆した。(NIKKEI NET記事より)

……なんて報道もあり、これも個人的にはちょっと気にかかりました。
イラクでは普段から、大学関係者は襲撃事件のターゲットになりやすいのだそうです。

大学関係者がある種のエリート階層(の象徴)だからなのか、
科学者達と襲撃者達の間に、何かイデオロギー的な対立があるのか、
大学関係者に特定宗派が多いなど、何らかの宗教的な背景が隠れているのか、
単に大学のセキュリティが甘く、襲撃しやすい状況にあるからなのか……。

詳しい理由はマイスターにはわかりませんが、とにかくイラクの大学関係者達は、非常に危険な環境下で教育や研究などを行っているのですね。
(当然、学生だって安全とは言えないはずです)

イラクにはイラクの事情があるのでしょうし、そのあたりはマイスターなどにどうこう言えるはずもありません。ただ、この状況がイラクという国にとって非常に大きな損失を生んでいるのは、おそらく確かです。
教育の危機は、国家の危機です。この先イラクの皆様がどういう方向に進んで行くにしても、学び、考えるということがすべての礎になるのですから。
今回襲撃されたのは、未来のイラクだったと言っても、過言ではないでしょう。

さて、襲撃・拉致事件の現在の状況ですが、情報が錯綜しており、どれが事実なのかよくわかりません。
CNNは、一度「イラク集団拉致、被害者の大半は解放」というタイトルの記事を出したのですが、その後、同じ記事を研究施設の集団拉致、大半の解放情報も錯綜 イラク」というタイトルに差し替えたようです。CNNも混乱してます。現場で得られる証言が事実なのかどうか、十分に確認できない状況なのでしょう。
どうやら、一部の人質が解放されたことと、地元警察幹部5人が逮捕されたのは確かなようですが、それ以外の情報は、現時点ではまだ不十分です。
明日以降、より詳細な報道がされるでしょうから、そちらをご覧ください。

なるべく犠牲者が出ないことを祈ります。

以上、マイスターでした。