マイスターです。
最近、いろいろな方のブログや、SNS内の会話などで、盛り上がっているトピックがあります。
それは以前本ブログでも取り上げた、↓この話題です。
・「茶髪・ピアス」を禁止する大学
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50249537.html
先日、秋田県秋田市にある「秋田経済法科大学」が、学生の茶髪とピアスを禁止す方針を打ち出したのです。いくつかのメディアが報道していたので、皆様もご存じかと思います。
報道があった後、同大学のwebサイトには、↓こんなリリースが掲載されました。
読売新聞やヤフーのニュース欄に掲載されました「茶髪・ピアスやめたら1万円」の記事について補足いたします。
今回の規則の基になっているのは「高等教育を通じて健全にして善良な社会人を育成する」という本学設置の趣旨であり、学則にも制定されている事項です。
これをより徹底して実現するため、教育指導室を設置。在学中に社会人としてのマナーやモラルを身に付けさせ、社会人として通用する学生に教育しようという目標を掲げました。そしてより具体的な検討を重ねて、この度の「学生の頭髪及び装身具に関する要綱」の制定となりました。頭髪に関しては「清潔を旨とし、周囲に不快感を与える特異な髪形や染色及び脱色等は禁止」
装身具については「華美を避け、かつ品位を保つことを旨とし、ピアスは禁止」
と規定しておりますが、それでは「どれぐらいの染色だと不快感を与えるのか」「どれぐらいだと華美なのか」「女性の耳ピアスもだめか」等の基準につきましては「別定め」としており、今後それらの細則を早急に検討していくところです。褒章制度につきましても「1万円が妥当なのか」「現金・図書券なのか」また、「茶髪ピアスの子が得をするようでおかしい」という声もあり、これもさらに検討が必要です。
さらに、本学では同時に「受講マナーの向上」や「あいさつの励行」、「分煙」についても指導を強化していきます。まじめに授業を受けている学生やタバコを吸わない学生が迷惑を被るようなことがあってはならないという考えです。
これらの制度は、本学に課せられた使命であります、企業人・公務員など善良な社会人の育成を達成すべく行う教育の一環でありますので、ご理解いただき、ご協力の程、お願いいたします。
(「茶髪・ピアス報道について」(秋田経済法科大学)より)
これについてマイスターは以前のブログで、「支持する人々がいる以上、こういう方針を打ち出すことで、そういった層から受験生を集めるための戦略を大学がたてるのも無理はないし、外部の人間が、それを否定することはできない。けれど、個人的には、このような方針は支持できない……という考えを書きました。
「大学は、多様な人々が存在する場所」という前提の逆を行っていることや、主観的な要素が多過ぎることなどが、支持できない理由です。
ただ、もちろんこれはあくまでもマイスターの個人的な考えです。こういった教育を評価する受験生や企業だってあるでしょう。最終的には大学が決めることです。
で、上記の方針について、様々なところで様々な方が(主に批判的な)意見を述べているのを見かけていたのですが、最近ちょっと話題になっているのは、施策の内容ではなく、この大学の広報姿勢に関することなんです。
よほど反響が大きかったのでしょう、先日、大学が新たに↓こんなリリースを出したのです。
このたび、本学で新たに導入いたしました「学生の頭髪及び装身具に関する要綱」につきまして、各方面から多くの反響を頂いております。この件につきまして寄せられました様々なご意見・ご関心に対し感謝申し上げますと共に、改めましてその趣旨についてお伝えしたいと存じます。
本学は建学以来50有余年、「真理・調和・実学」を重んじて多くの有為な人材を社会に送り出して参りました。実学を重視し、優れた職業人、社会人を育成する姿勢は脈々と受け継がれてきております。
大学は本来、自由にものを考え自由に意見を述べ合い、各人が自らの責任のもとに自主的に行動することを保障されている空間であります。そのような中にあって、学生の頭髪及び装身具について基準を設け、強い指導を行うことについて様々な意見があることは承知しております。
しかしながら近年、学生の意識と社会的常識との段差が目立ってきていることも事実であります。社会人として一般的なマナーやモラルを在学中に教育することは、いわば大学の使命のひとつとなっております。
高校から大学へ、大学から社会へ、学生の成長を連続したキャリア形成のプロセスとして受け止め、その実りある教育のひとつの手段として、私共は今回の選択をいたしました。対象となる学生は決して多くはありませんが、さまざまな社会的ルールやマナーの指導と併せて、今回の決定に関しても学生と十分に話し合い、納得のいくように指導していきたいと考えております。
一部マスコミで「報奨金の支給」が報じられておりますが、そのような決定はなされておらず、実施するものではありません。かかる報道が誇張され、拡大されて伝えられていることは甚だ遺憾とするところであり、本来の意図するところが歪められて伝わることを深く憂慮いたしております。
以上述べて参りました趣旨を十分お汲み取り頂き、今後とも本学へのご協力、ご指導・ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
(「学生の頭髪及び装身具に関して」(秋田経済法科大学)より)
さて、ネット上で、つっこみを受けているのは、以下の二点です。
【1:「報奨金」への批判について】
上記のように、新しいリリースで秋田経済法科大学は、
一部マスコミで「報奨金の支給」が報じられておりますが、そのような決定はなされておらず、実施するものではありません。かかる報道が誇張され、拡大されて伝えられていることは甚だ遺憾とするところであり、本来の意図するところが歪められて伝わることを深く憂慮いたしております。
……と発表しています。
でも、以前のリリースを見てみると、自ら公式webサイトで、
褒章制度につきましても「1万円が妥当なのか」「現金・図書券なのか」また、「茶髪ピアスの子が得をするようでおかしい」という声もあり、これもさらに検討が必要です。
……って、はっきり書いているんですよね。
これを見る限り、どうやら少なくとも大学がこういう報奨金制度を検討していたのも、それを世間に周知させようとしていたのも、事実なんです。「1万円」という具体的な金額案まで示していますよね。
にもかかわらず、各方面から批判が寄せられたとたん、いきなりすべてをマスコミのせいにしているのは、なんだかおかしくないか?
……と、多くの人が感じているようなのです。
ちなみに、メディアの報道も、
学生の茶髪やピアスを禁止する規則を設けた秋田市の学校法人「秋田経済法科大」(小泉健理事長)が、指導に応じた場合の褒賞金(1万円)の実施を見送ることを決めた。
法人によると、同大と、系列の秋田栄養短大で、茶髪、ピアスの禁止を明記した「学生の頭髪・装身具に関する要綱」が校内に張り出された9月末以降、褒賞金について「髪を染めている学生に恩恵があって、まじめな学生にないのはおかしい」「金で学生を釣るのか」などの批判的な意見が殺到。
図書カードに替える案も検討したが、「人間教育の一環と位置付けた禁止措置の趣旨が曲解されるのは本意ではない」と褒賞金の実施を断念した。 (「まじめな学生には恩恵なし?茶髪・ピアス褒賞見送り」(読売オンライン)記事より)
……と、あくまでも「一度は校内に張り出したが、批判が殺到したから引っ込めた」という書き方なんです。
この通り、大学の主張がどうにもちぐはぐです。なんだかこの大学の広報姿勢はおかしいぞ?、と一般の皆様に感じさせてしまいますよね。
(もしかすると大学は、「まだ決定事項ではなかったのに、メディアが書き立てたせいで、あらぬ批判を受けた」と主張しているのかも知れませんが、そうだとしたらおそらくそれは、プレスに対応した学内の方が、メディアに対する接し方をよくご存じなかったのだと思います。いずれにしても広報体制に問題有りです)
これが、ひとつめのつっこみポイントです。
【2:「秋田栄養短期大学」のサイトについて】
上でご紹介した2つめのリリースは、実は秋田経済法科大学だけでなく、系列校である「秋田栄養短期大学」のwebサイトにも、掲載されています。
だから多くの方は、「秋田栄養短期大学」でもこの服装規定が適用されるととらえているようです。
それに、考えてみれば
これらの制度は、本学に課せられた使命であります、企業人・公務員など善良な社会人の育成を達成すべく行う教育の一環でありますので、ご理解いただき、ご協力の程、お願いいたします。
……とまで言っていた学園が、4年制大学だけにこの制度を適用し、短大では茶髪を認めるということも、常識的には考えにくいですよね。
(様々な方のブログを拝見するに、どうやら秋田放送で、短大も対象である旨が報道されたようです)
ところが……
■秋田栄養短期大学
http://www.akita-eiyo.ac.jp/
(←キャプチャ画像は、2006.10.19のものです。クリックで拡大します)
あれ……?
なんとも、みなさま美しい御髪で……っていうか、これはマイスターの目の錯覚なのかもしれませんが、
トップページの学生さん、全員茶髪なのでは。
しかもおひとりは、かなり明るめの茶色です。
ニュース&トピックス欄の、「学生の頭髪及び装身具に関して」という文字が下の方に見えているだけに、これって、なんだかとっても不思議な事態。
この状況についてネット上では「学園的に、これはOKなの?」というつっこみが出ています。
これが、ふたつめのつっこみポイントです。
主なつっこみは以上です。
上記の2点は、確かにマイスターも、とーっても気になります。
察するに、「茶髪・ピアス禁止」云々は、秋田経済法科大学の学内でもまだ、確固たる方針として認知されていないんじゃないのかな、と思います。
だって、「善良な社会人の育成を達成すべく行う教育の一環」として茶髪を禁止するとまで言っている大学が、トップページのメインビジュアルに、茶髪の学生さんの写真を掲載しているんですよ。茶髪の学生は善良な社会人ではないと考えていたはずなのに、この広報方針。申し訳ないのですが、いったい何がしたいのか、わかりませんよね。明らかに不適切です。
ここまでの矛盾となると、うっかりミスとか差し替え作業が遅れているとかいったレベルの間違いとは考えにくいのです。
おそらく、「学園として、従来から茶髪に関する確固たる理念を持っていたわけではないし、今もはっきりした方針は持ってない」というのが実態に近いんじゃないのかなぁと、マイスターなどは思うわけです。
いずれにしてもこの事態、どうにかした方がよろしいかと思われます。
本当に「茶髪は学生として好ましくない」と考えているのであれば、webサイトやパンフレットなど、あらゆる広報媒体を、黒髪の学生だけで構成すべきですからね。
もっとも、そんなキャンパスイメージを見て、むしろ異様な光景だと感じる方も多いと思うのですけれど……。
今、「男子学生が全員坊主頭、女子学生が全員おかっぱ」の中学校を見たら、多くの人は何か変だなと感じると思います。現在における「黒髪100%のキャンパス」も同様に、どこか不自然さを感じさせる風景なのではないかなぁと、マイスターは思います。
この大学のwebサイトや来年度以降のパンフレットが、本当に黒髪の学生の写真だけで制作されるのかどうかが、個人的には気になります。
誰かに何かを伝えるためには、まず伝える内容をちゃんと持っていなければなりません。また、伝える内容があるのなら、それを誤解なく伝えなければなりません。
今回ご紹介した事例は、そんなことの大切さを考えるのにいいケースだと思います。
以上、マイスターでした。