修士(政策・メディア)の学位を持っているマイスターです。
大学院時代は、アメリカの「チャータースクール」制度に関わる研究を行っていました。
簡単に言えば、市民や有志教員が公立学校を自ら設立・運営できるという仕組みです。
こんなテーマを研究する関係上どうしても必要になるということで、大学院時代は地方行政のガバナンスや経済政策、都市政策などの授業もいくつか履修していました。
理工学部出身のマイスターにとって、特に自治体のガバナンスに関する知識はどれも新鮮で、面白かったです。
都市計画の基本は建築学科でも学べますが、地方自治体の組織内の各部門がどのように動いているか、中央政府との関係はどうか、地方議員の位置づけに関する課題は何か、といったテーマは、政策系の研究科だからこそ学べたのではないかと思います。
市役所や県庁などで働いている行政関係者や、現役議員の方々なら、こうした学びの場をさらに活用できるだろうなと、当時、授業を受けながら考えておりました。
というわけで今日は、↓こんな報道をご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「現職議員、大学院で学ぶ 政策立案の力つけたい」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0902/TKY200609020284.html?ref=rss
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「昨年の総選挙での自民党の勝利は、テレビ報道によって演出された」
20代の学生の中で、東京都中野区議の佐藤浩子さん(54)が研究成果を発表した。向かいの席では、埼玉県戸田市議の斎藤直子さん(45)が、真剣な表情でメモを取っていた。
2人が学ぶのは、東京・池袋の立教大大学院21世紀社会デザイン研究科。無所属で現在4期目の佐藤さんは、障害者など福祉施策の充実を訴えてきた。「要望したり人数の力で政策を実現させたりするのでなく、きちんと政策を提案する必要を感じた」と、大学院での勉強を志した。
斎藤さんは今年4月に入学。無所属で現在2期目。フリーのリポーターから転身し連続でトップ当選したとき、「こんなに支持されているのに、何も実績がない」と不安にかられた。ホームページで偶然に同研究科を見つけて受験した。
ほかの主な大学院だけ見ても、明治大大学院ガバナンス研究科で15人、同志社大大学院総合政策科学研究科で4人、大阪市立大大学院創造都市研究科で2人の現職地方議員が学ぶ。
公共政策や社会デザインなどをテーマとする大学院が最近次々と生まれた。少子化で社会人学生の獲得をめざす大学側も、通常2年の修士課程を1年に短縮し、夜間や週末に授業をするなどの取り組みを始めたことも追い風になっている。
(略)
早稲田大大学院公共経営研究科では、「非常に著名」(同大広報課)な女性国会議員と、4人の地方議員が学ぶ。その一人、昨年7月に初当選した山口拓都議(34)=民主党=は、少子化問題などを勉強する。「今の行政を『変えたい』という考えは同じでも、議員、公務員、会社員と立場によって様々な意見が出る。『視野が広がるぞ』と、同僚議員も何人か誘っているんですよ」
(上記記事より)
現職の議員達が、政策系の大学院で学んでいる様子を報じた記事です。
記事にもあるように、数年前から都市部の大学では、行政や地方政治に関わっている方々をターゲットにした政策系大学院が次々と新設されています。実は恥ずかしながらマイスターは、こんなに多くの議員達が、実際に大学院で学んでいるとはこれまで思っておりませんでした。
各研究科とも数人ずつではありますが、世の中の議員の数を考えれば、これは頑張っている方ではないでしょうか。
特に明治大大学院ガバナンス研究科は、現役の地方議員が15人も通われているとのこと。プロフェッショナル・スクールとして、「政治の現場」の皆様に活用されているのですね。
「社会起業家―「よい社会」をつくる人たち」の筆者である町田洋次氏は、ご自身のブログで以下のように書かれています。
私もこうした議員に何人も会ったことがあります。会う前は、公費をもらってるんだから、学ぶ時間があるなら働けと批判的にみてましたが、会ってみると印象は変り、若手の市民派の議員で、やる気があり、脳が活発な人で、こうした人が増えれば地方政治が変ることを直感しました。社会起業家精神のある地方政治家です。
(「市議会議員大学院生」(町田洋次の社会起業家・エッセンス)より)
確かに、選挙で選ばれ、公費をもらっていながら「学生」とは何事か、という批判はあると思います。
ただマイスターも、現役議員が大学院で学ぶことには基本的に賛成です。
○現在起きているトピックを知り、実践につなげることができる
○地方政治の現場で起きている動きを教室に持ち込んで、学生全員で共有できる
○現役議員同士の情報交換の場となる。大学院での交流を通じて、地域をまたいだ、意欲ある議員同士のネットワークを作り出せる
…などなど、ちょっと考えただけでも、「現役議員」として大学院で学ぶメリットは思い浮かびます。
政策系の大学院は、基礎的な分析力、情報収集力、思考力といった力に加えて、現実に起きている問題を解決するための問題解決力、提案力といったものを鍛える場でもあるんじゃないかと、マイスターは思っています。
その意味では、現在起きているタイムリーな政策課題を大学院で学び、それを議員活動にそのまま生かせるというのは、議員にとっても市民にとっても良い点が多いのではないでしょうか。
地方政治に関わる方は、地元の会合などに顔を出すのも、とても大切です。
そして、このように政策に関する知識を磨くのも、また同様に大切なんだと思います。
在学期間が1年のところもあるようですから、議員の任期中に一度くらい通うのも、悪くないのではないでしょうか。
「地元」で行う演説とはまた違って、学びの場であれば、多様な立場の方々に自分の考えや悩み、抱えている問題などを率直に語り、それに対するフィードバックをもらう、なんてこともできそうですし。
現在、自民党総裁選や、民主党代表選などを控え、様々な政策構想がメディアを通じて飛び交い始めてます。
特に今回は、教育政策が一つの大きな争点になりそうな雰囲気ですよね。安倍氏の「国立大学9月入学案」など、高等教育に関する話題も。
こういったそれぞれの案について、「大学院生議員」の皆様はどのようにお考えなのか、ぜひご意見を伺ってみたいところです。
「教育」はいま、国家の最重要課題といってもいいと思います。そしてまた、中央政府、地方自治体、学校現場、家庭、そして市民ひとりひとりに至るまで、無関係な人間がいないテーマでもあります。
この課題を乗り越えるには、政治家から行政、学者、学生、市民まで、すべての人々が手を組んで考える必要があるわけです。
まさに今、政策系大学院の授業で取り上げるにふさわしいテーマではないでしょうか。
というわけでぜひ、教育のあり方や、教育改革の実現方法についても大学院で学んで、それを生かしてください > 議員の皆様
以上、今日はちょっと短め、マイスターでした。