他大学への編入を積極的に支援する大学

マイスターです。

今日も、昨日に続き、「Enrollment Management のススメ」に関連するニュースをご紹介いたします。

【教育関連ニュース】—————————————–

「大学情報 No.0014 (2001.2.5)」(大学問題研究会)
http://www.pwpa-j.net/5mailmaga/3back_number/014.html
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(6)新潟産業大が他大学への編入支援
新潟産業大学(内田安三学長)は、2001年度からの入学者を対象に、他大学への編入を支援する体制を整えることを決めた。3年次から他大学への編入を希望する学生に編入試験のための補習授業などを行う。また、他大学へ編入した学生が地元での就職を希望する場合、求人情報なども提供するという。編入支援体制を整えることで、地元の学生を確保したい考え。

◆関連ホームページ◆
☆新潟産業大学 http://www.nsu.ac.jp/

(以上、上記リンクより)

というわけで、「他大学への編入」を積極的に支援する大学です。

日付をご覧になっていただくとわかるとおり、上記はずいぶん古い情報ですが、↓新潟産業大学のwebサイトに、それらしい記述がありましたので、現在もこの方針は変わっていないのだと思います。

【開かれた大学】

これまで日本では、大学に入学すると所属する学部が用意した授業を4年間受けて卒業するのが一般的でした。しかし、学問は本来個々の大学を超えた普遍性をもつものです。入学した大学と卒業する大学が異なっていても何ら問題はありません。本学ではそうした観点から、学部間での単位認定や他大学との単位互換はもちろんのこと、学内における転部、他大学への編入や他大学からの編入に対しても積極的な姿勢をとっています。とくに、他大学への編入を希望する学生諸君のためには的確な情報提供や特別な指導をするなど、希望実現のために強力にバックアップします。開かれた大学こそが本学のあり方なのです。
(「資格取得支援と開かれた大学」(新潟産業大学)より)

「他大学に流出するのをサポートする」というのは、一見、エンロールメント・マネジメントの逆を行っているように思えますが、別にこれが、よくない施策というわけではありません。

むしろ、学生さんの悩みや希望を総合的にサポートするために大学が力を尽くしているのですから、学生さんにとってはすばらしいことです。
また、こういったサポート体制を持っていることを、受験生の増加に結びつけようとしているわけですから、大学にとってもプラスになる一面を持っています。

「コロンブスの卵」みたいな発想ですが、これもまた、エンロールメント・マネジメントとしての活動の一つであると言えるのではないでしょうか。

この話を聞いたとき、マイスターは、デパートのお客様対応の話を思い出しました。

デパートの総合受付窓口で、ある品物を探しているんですがと問い合わせたとき、それが「そのデパートにはないけれど、近くの他のデパートにはおいてある品物」だったとします。さて、受付嬢はどう対応するかご存じですか?

今ではたいていのデパートが、「近くの他のデパートで買える旨をご案内する」のだそうです。

自分の競合店に利する情報を提供しているわけですから、一見すると、こうした受付対応は、自分たちの首を絞めているように思います。でもそうではなく、これは、お客様の悩みを解決するために、自分たちができるもっとも有効な行為を行っているというだけの話なのですね。

対応されたお客様の方にも、そういった考え方は伝わるはずです。「なんて親切な対応をする店だ。この店は、あくまでもお客のために行動しているんだなぁ」と思っていただければ、このデパートの印象はよくなります。次回以降、また来店してくれる可能性は高まるというわけです。

新潟産業大学の対応も、これと同じことではないでしょうか。

かつて大学は、「一生に一度しか関わらない機関」でした。したがって、退学する学生をぞんざいに扱ったり、他大学の学生を「潜在的なお客様」として見ておらず大切に扱ってなかったりというのも、珍しくありませんでした。
それに、一度入った学生が、他大学に流出するということも、ほとんどなかったわけです。

しかし今後は、社会人になっても大学のサービスを利用する機会が、増えていくと思われます。一生に何度も「大学を選ぶ」という行為を行うわけですよね。
(マイスターみたいに、いろんな大学のサービスを体験したことがある人間というのも、珍しくなくなってくるでしょう)
そのとき、学生のために真摯に対応してくれた大学にまた行こう、と考えるのは当然ですよね。

編入学をサポートして、その結果、他の大学に行ってしまったとしても、その学生と大学との間の関係が切れたわけではないのです。むしろ「大学の対応の良さを知っている潜在顧客」という、大切なステークホルダーになるわけです。

在学中にとどまらず、その学生を生涯を通じて支援するというのは、エンロールメント・マネジメントの考え方。一見遠回りに見えますが、実は大学経営の上で、とても戦略的な行為なんですよね。

刹那的な損得にとらわれず、

「学生を一生涯にわたってサポートする」
「あくまでも、学生さんの視点に立って、悩みを解決することに努める」
「大学を去ってもステークホルダーである」

という方針で考えれば、このように、様々な形のサービスが生まれてきます。
エンロールメント・マネジメントとは、おそらく、こういった発想に基づく行為なんじゃないかなと、マイスターは思います。

というわけで今日は、日本ではまだまだちょっと珍しいサービスの例をご紹介しました。皆さんの大学でこれが実現できそうかどうか、ちょっと想像してみてください。色々な問題が見えてきて、何が学生のためのサービスを阻害しているのか、少しずつわかってくるかもしれませんよ。

以上、今日も短めマイスターでした。

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ところで、「キャリアセンター」という名称の組織を持っている大学は、少なくありませんよね。学生の進路を総合的にサポートするという目的で「就職課」を改組したというパターンが多いです。でも、そんな大学の多くが、「就職課」とほとんど変わらないサービスしか提供できていないように思います。

学生さんが抱える「進路の悩み」というのは、とても多様です。
就職先をどこにするか、という話の前に、

「就職しようか、進学しようか迷っている」
「進学した場合と、就職した場合とでは、自分のキャリアにどういった違いが出てくるのか知りたい」
「一度休学し、海外青年協力隊で働きたいが、これは自分のキャリアをどう変えるか」
「留学しようかと考えている」
「専門分野を変えて進学したい」
「NPOの活動に参画したい」

……などなど、100人いれば100通りの悩みや希望があるはずです。
でも、キャリアセンターと名乗る部署は、今でも実質的に「就職斡旋課」としての仕事しかできておらず、こういう悩みに対応できてなかったりしませんか?

「他大学に編入したい」という悩みも、その一つだと思います。
他大学に行きたい、という相談を持ってくる学生に対して、これまで多くの大学では、成績証明書を発行するくらいのサービスしかできていませんでした。
新潟産業大学は、そういった現状についても、一石を投じたのだと言えるのではないでしょうか。

1 個のコメント

  • 新潟産業大学はいい大学ですね☆
    ある京都の女子大に知人が在学しているのですが、先に退学してからでないと編入試験は受験してはいけないと言われたそうです。
    その大学は自らは編入生を受け入れている訳ですから、明らかに自己矛盾です。
    大学側にとっては生徒減少は死活問題なのかもしれませんが、もう少し学生の立場にたってもらいたいですね。退学するしないに関わらずかなり印象が悪いです。結果的には新潟産業大学の方針の方がプラスに働くような気がします。