・高校訪問は、相手の問題を解決するために行う取り組みだ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50228031.html
↑昨日、高校訪問のやり方について、個人的な意見を書かせていただきました。
ところで高校訪問に関連して、忘れないうちにもう一点、マイスターが体験したことを書いておこうと思います。
マイスターも、この夏はいくつかの高校をまわりました。
その中に、
「正直言って、これまではあまり大学進学者が多くなかった高校」
がありました。
高校の公式webサイトには、四年制大学への進学実績が誇らしげにばーんと掲載されています。国公立など、世間的に名の通った大学に進学した卒業生もいます。けど、全体の人数からしたら、実は専門学校に行ったり、就職したりする生徒の方が若干多い、という高校です(webサイトだけを見ているとわからないのですが)。
ここ数年、少しずつ、四年制大学への進学実績が伸びてきているようでした。
女子生徒の方が若干多めで、いわゆる「文系」の生徒が大半という学校です。
さて、マイスターが勤める大学には、これまでその高校から入学した学生は一人もいませんでした。
しかし、こちらの大学が持っている学部学科の中には、その高校の卒業生も関心を持ちそうな領域のものが、いくつかありました。ただし、一見「理系」と思われそうな学部学科名だったので、その高校の生徒や教員には関心を持たれていない、というか気付かれていない可能性が高かったのです。
(実際には、そこまでの数学力がなくても進学でき、「文系」コースで勉強してきた生徒さんも興味を持って学べるようなカリキュラムなのです)
これまで進学しなかった生徒が、大学に行くようになりはじめている高校。
進路指導をされる教員の皆様も、指導の仕方などで、わからないところなどがあるかもしれません。
ちゃんと進路指導担当の先生にご説明申し上げれば、何かのお役に立てるのかも、とマイスターは考えました。マイスターなりの、「営業魂」ですね。
そこで、その高校のカリキュラム(もちろん進学実績も)をチェックし、その高校で学んだことが大学でどう活かせるか、競合となっている進路(主に専門学校)との違いはどういったところか、入学後に学業で行き詰まらないための様々なサポート策など、様々なネタを仕込んで訪問に出かけたわけです。
実は、その高校は、マイスターが初めて訪問した高校だったのですが・・・
結論から言うと、何もできずに帰って参りました。
進路指導担当の教員からまず出たのは、
「おたくからは指定校推薦の枠をもらっていない。まずは、この枠をくれないと話にならない」
という言葉でした。
次に、
「AOなら、ウチの生徒も行けるかもしれない。AOはやってるの?
それがないと、大学の説明を聞いてもしょうがないから」
と言われました。
(実際にはもうちょっと違った言葉だったかもしれませんが、意味としてはこういうことでした)
その高校は、マイスターの大学には進学者がまだ一人もいません。ですから、指定校推薦枠はありませんでした。
またAO入試はあるにはあるのですが、まだ一部の学科でしか実施しておらず、しかも「学力調査」ということで筆記試験も課すというものでした。
これを説明した時点で、あちらの関心はゼロになりました。誰が見ても、一目瞭然でした。
そんなわけで、気合いを入れて準備して行ったにもかかわらず、マイスターの高校訪問デビューは、きわめて厳しい結果に終わったのです。
想定外の結果に、マイスターは、色々と考えてしまいました。
まず一点目。
この進路指導担当の方がおっしゃっていたのはつまり、「指定校推薦枠、またはAO入試の枠が用意されていない大学には、はなっから行く気がない」ということでした。
進路指導の担当者が、「ウチの生徒達には正規の受験は難しいから、一般試験の案内をされても困る。指定校を持ってきたら検討します。」と、真顔でおっしゃるわけです。「一般試験で進学させる気はさらさらない」という意味でした。
(信じられないかもしれませんが、本当にそういう口振りだったのです。マイスターはびっくりしました)
でも、その高校のwebサイトに掲載されている「進学実績」には、マイスターの大学よりもずっと入学偏差値の高い大学の名前が、たくさん掲載されているわけです。
ですから、ちゃんと勉強すれば、決して入れないレベルではないのです。
マイスターは、「この先生は、生徒に勉強させるつもりはないのかな?」という疑問を覚えてしまったわけです。
二点目。
指定校推薦枠に関連しても、驚きました。
こちらが、「指定校推薦枠というのは、御校から進学された生徒さんが学業ですばらしい成果を上げたことに対してご用意させていただくものですから、今はまだありません。でも、御校の生徒さんなら、入ったらいい成績を出されると思いますから、ゆくゆくは・・・」といったことをご説明しても、
「いや、一人も進学していない大学でも、最近では指定校推薦をくれてますよ」
という言葉が返ってくるだけでした。「おたくの大学にやる気がないだけだろう」とでも言いたげな感じだったのです。
「いったい、そんな指定校の出し方をしているのはどこの大学だぁ!?」という疑問と、「高校の教員が、こんな進路指導の仕方をしていていいんだろうか?」という疑問を、マイスターは同時に覚えました。
そして三点目。
この進路指導後担当者からは、
「せめてAOなら受かるかも知れないから、まずはAOの枠を用意してよ。そうでないと、説明を聞いてもしょうがないから」
なんてお言葉も、頂戴いたしました。
じゃあAO入試を要求する以上、こちらの大学の教育内容についてその先生はよくご存じなのかなというと、そうでもないんです。はっきり言って、全くご存じなかったのです。
ここで、マイスターはまた、疑問を覚えてしまいました。
本来なら「大学の学びのスタイルにあった学生を選抜する」というのが、AO入試の趣旨です。
「あなたの大学はこういう教育をやっているようだが、うちの高校には、そういうのに関心を持っている生徒がいる。だから、AO入試でマッチングさせたい」
というのが、AO入試のコンセプトです。だから、意欲を持った生徒が応募してくるわけです。でも、この進路指導担当者は、その順序を逆にしてしまっていたのです。
残念ながらAO入試を、「数学や理科を勉強しないでも入れる、対策が要らない簡単な入試」という認識でお考えだったのです。
マイスターは、本来AO入試は、すばらしい利点をいくつも持っていると思います。
これまでのような筆記試験一発の選抜方法ではなく、お互いをよく知り合った上で契約を結ぶというマッチングの仕組みだと思っています。
それだけに、まさか高校の進路指導教員までがそんな認識でおられるのか、という事が、ショックだったのです。
もちろん、少なからぬ大学で、AO入試が単なる「青田買い」の仕組みになってきてしまっているということは、以前から聞いておりました。でも、実際に高校をまわって、進路指導担当者からそういう言葉を聞いたときは、おどろきました……。
ただ、大学側も、これまで高校教員には、「入試システムの説明」ばかりをしてきて、肝心の教育内容については深く知ってもらおうとしておりませんでした。そうしたツケがまわってきているのかな、という気もします。
マイスターはその後も、いくつかの高校をまわりました。
下調べを行い、話を聞く事に専念し、先方のニーズを満たすような提案を返す事に努めました。結果、最初の高校のような目にあうことはありませんでした。
終わってから思えば、最初の高校のあの教員の方が、たまたまああいう方針の方だったのかな?という気もします。ただいずれにしても、大学と高校とでコミュニケーションがうまくとれ、入試システムの説明だけしているような関係だと、お互いにとっていい結果にならないということは確かだろうと思います。
マイスターが、「高校訪問を、大学側からの一方的な説明で終わらせてはいけない」と考える背景には、以上のような個人的体験もあるのですね。大学関係者は、営業マンとして相手のニーズを満たせるような対応をすべきだと考える理由です。
ただ、最後に一言つけくわえれば、高校の側も、大学の事をよく知ってほしいなと思います。
入試が複雑化し、色々と高校の教員の皆様を混乱をさせてしまっているかと思いますが、それについては「より理想的なマッチングの仕組み」を目指して試行錯誤を行っているところだということで、何とぞおつきあいいただければと思います。
また、何より、入試だけでなく教育の内容についても関心を持っていただきたいというのが、大学関係者の願いです。
例えばAO入試はただの「入りやすい面接試験」ではありません。こちらに関心を寄せていただいている方と、コミュニケーションをさせていただくための仕掛けの一つです。そういった点を、少なくとも進路指導のご担当者には、分かっていただきたいと思います。
以上のようなことを、高校訪問を通じて考えた、マイスターでした。
いつも刺激的な内容で楽しく拝見さえていただいております。
『進路指導の担当者が、「ウチの生徒達には正規の受験は難しいから、一般試験の案内をされても困る。指定校を持ってきたら検討します。」と、真顔でおっしゃるわけです。「一般試験で進学させる気はさらさらない」という意味でした。』
とおっしゃることすごくよくわかります。
私の学校は、冬までに指定校推薦で生徒の半分が決まります。信じられないことですが…。
そして、大学進学実績がすばらしいと銘打っています。
生徒も初めから受験で勝負をしないで、どこでもいいから指定校推薦で行くという雰囲気ですらあります。
数を稼げばいいという進路指導が現実に行われております。
教育の内容とマッチングねぇ・・・。
受験生側の多くは、
義務教育の延長線上と言う意識で
やっている。
で、さらに言えば、勧める側も自分の息子が
東大文Ⅰや理Ⅲに受かっていればそっち行かせ
たい人が大半でしょう。
仮に↑が全く違っていたとしても
私には大きな疑問が残る。
教育の内容云々で勝負なら大学資格として
勝負する必要は無いですよね。
予備校で良いんじゃないでしょうか?
大学側はお上からのハクが欲しい、で補助金
その他の優遇が欲しい、大学卒と言う
肩書きを売りに出きる。となると受験生も
その環境を前提にして動かざるを得ない。
大学じゃなくなっても履歴に付かなくても
内容が素晴らしい、誰もが来たがる学びたがる
ところなら、大学だってお上に認めて
もらわなくいいじゃない?「予備校でも構わないですよ」と心底思っているかどうか。
基本はそこだと思いますよ。それが無いから
正直に「うちは教育やって優秀な学生育ててます」と真正面から企業に言えないんじゃない
でしょうかね。
要はマイスターさんが批判なさる超学歴社会と何かに乗っかるという意味では
ウリふたつ、根は同じな気がしますね。
結果、稼げば良いという一部の高校の
進路指導が行われている訳だと私には
見えました。