全部無料なので、調子に乗ってあれこれと登録していたら、どこの大学のメルマガをとっているのか、もう自分でもわからなくなりました。
最近はPC版の他に、携帯版を発行している大学も多いです。突然、登録したことを忘れていた大学メールマガジンが携帯に配信されてきて、その都度びっくりしている今日この頃です。
ブログなどが流行している昨今ですが、携帯でも読めるプッシュ型のメディアとして、メールマガジンの存在は今でも重要だと思います。
さて、メールマガジンには、色々とコツがあります。メールマガジンは単純なようでいて、かなり繊細なメディアだとマイスターは考えています。ちょっとでも読者の期待と主旨がズレたり、配信頻度が高過ぎたりすると、購読を打ち切られますからね。
マイスターが思うに、メールマガジンの発行は、マーケティングの訓練になります。
マーケティングの最も基本的な考え方として、「マーケティングの4P」という理論があります。学生時代、授業で教わったという方も多数おられるのではないでしょうか。
Product:製品の内容
Price:製品の価格
Place:製品の流通
Promotion:製品の販売促進
最近では、これにさらにいくつかのPを加える方も多いようですが、基本は上記の4Pです。
マーケティングを行う時のマーケティング・ツールの組み合わせを「マーケティング・ミックス」というのですが、上記の4Pはマーケティング・ミックスの中でも最も有名で、基本的な事例です。この4つの要素が、適切に組み合わされていないと、うまくいかないということなのですね。
例えばフェラーリというProductを売るのであれば、それに合ったPrice、Place、Promotionの在り方があるわけです。トヨタのコンパクトカーと同じような価格ではいけませんし、そこら中の販売店で気軽に売られているようなPlaceの在り方も、フェラーリにはそぐわないかも知れません。テレビでバンバンCMを流すようなPromotionの仕方も、一握りの人しか買えない超高級車であるフェラーリには、あまり意味がありません。
フェラーリにはフェラーリにあった4Pが、
トヨタのコンパクトカーには、コンパクトカーの4Pが、
お菓子にはお菓子の4Pが、
ゲームソフトにはゲームソフトの4Pが、それぞれあるわけです。
大学の入試広報においても当然、このようなマーケティング・ミックスが慎重に設計されるべきです。
で、メールマガジンは、その「実験(練習)」の場として、とてもいいんじゃないかとマイスターは思うわけです。
○コンテンツ構成
○文章のトーンやアスキーアートの有無
○執筆者の構成(広報スタッフ、在学生、教員、卒業生、etc)
○長さ
○配信方法(PCか携帯か)
○ターゲット(受験生、在学生、卒業生、保護者、一般生活者、etc)
○メールマガジン登録方法
○メールマガジン解除方法
…などなど、メールマガジンは多くの要素を抱えており、どれ一つとってもおそろかにできません。
どんな情報を、どのような登録方法で、どういったターゲットに、どのように配信するか。マーケティング・ミックスがめちゃくちゃだと、あまり読んでもらえていなかったり、すぐ購読解除されたりするメールマガジンになります。
紙媒体などに比べたら、制作コストや流通コストはほとんどかかりませんから、広報や入試部門のスタッフ教育として、メールマガジンの設計はなかなか効果的なのではないかと思います。
甘く見てはいけません。一見、簡単そうに見えますが、成功するメールマガジンを作るのはとても難しいのです。
「面白い大学メールマガジンの事例」は今度ぜひご紹介させていただくとして……本日は、メールマガジンについて、ちょっと気になることがあるので、それについて書かせていただきたいと思います。
それは、メールマガジンの「登録方法」について。
その前に、ちょっとだけ別の話を。
* * *
マイスターは、かつて仕事で、様々な企業のwebサイトを分析・評価していました。
各社のサイトを見て、サイトの設計や、各種の手続きの流れなどを詳細にチェックし、適切かどうかを見るのです。
webサイトだけでなく、実際の店頭スタッフとの連携ができているかどうかも見てました。
その中で、明確な「失敗例」と呼べるものもいくつかありました。
代表的な例は、住宅メーカーのサイトにある「カタログ取り寄せ」フォーム。
製品のカタログやパンフレットを取り寄せるための入力フォームなのですが、なにしろ、必須入力情報が多いのです。
住宅メーカーのお問い合わせフォームに入力された情報は、たいていの場合、すべて営業部に送られます。とりあえずカタログを取り寄せようと思って気軽にwebに情報を入れると、すぐさま営業マンから電話がかかってくるという仕組みになっているのですね。「web上での振る舞いはwebだけで完結している」と普段思っている人は、けっこうびっくりするはずです。webでちょっと行動した結果、実際に営業マンがご訪問してくるわけですから。
まぁ、webとリアルビジネスがうまく連動しているということですから、ここまでは別に問題ありません。
問題は、入力情報の多さです。
営業マンが営業ツールとして使うわけですから、ついつい欲が出て、
「家族構成は?」
「年収は?」
「ローンの有無は?」
などを、フォームの必須入力項目にしてしまうのです。
営業さん達の気持ちはわかりますが、これはマイナスです。
想像してみてください。
「ちょっと試しにカタログを取り寄せてみようかな」と思ってフォームを開いたら、年収を入れないと、登録を受け付けてもらえないのですよ。あなたならどう感じますか?
これじゃ、入力を躊躇する人もいますよね。
実際、ある住宅メーカーのアクセスログを分析したところ、「住宅の製品情報をwebで閲覧」→「カタログ取り寄せフォームを開く」までしておきながら、入力を途中でやめて帰ってしまったユーザーが半分以上という結果が出ました。
お金をかけてきれいなサイトを制作しておきながら、自らとんでもない機会損失を作り出していたのです。
こんなことは、ちょっとユーザーの気持ちになってみればすぐにわかりそうなことなのです。でも、「営業に行く上で、年収や家族構成は知っておきたい」という企業側の都合が、ついこうしたところで顔を出してしまうのですね。
webに入れにくい情報は、営業マンが直接訪問して聞けば済む話だったのに、全部をwebで行おうとした結果、「失敗」したという例です。
* * *
さて、大学のメールマガジンに話を戻します。
今や、多くの大学がメールマガジンを発行しています。内容も充実していて、複数ターゲットにそれぞれ違った情報を発信している大学も少なくありません。
そんな中、たまに、上記の住宅メーカーと同じ失敗をしている大学を見かけます。
そう、メールマガジン購読フォームの、入力項目が多すぎるのです。
何スクロール分もある長~い入力フォームページもウンザリしますが、それ以上に問題なのは、必須入力項目の構成です。
ある大学では、
「大学で流行っていることなど、受験生の皆さんがちょっと知りたい情報を、学生レポーターがお届けします」
というふれこみのメールマガジンを発行しているのですが、名前、フリガナ、生年月日、性別、郵便番号、住所、電話番号、学年に加え、なんと高校名までが必須入力項目です。しかも、入力間違えがないようにということか、高校所在地を都道府県から検索して入力する仕様です。
入試部門が発行しているメールマガジンだったら、確かにこうした情報は気になるでしょう。それはとてもよくわかります。でも、大学の雰囲気を伝えるだけのメールマガジンで、これだけ多くの情報を聞かれるのは、いかがなものでしょうか。
願書を取り寄せるのならまだともかく、学生の声を紹介するメールマガジンでこれでは、個人情報保護うんぬんという以前に、そもそも入力する気が起きないのでは。
ここまでひどい例は少ないと思いますが、メールマガジンの登録に際して、根ほり葉ほり聞きまくっている大学は多いです。
マーケティングリサーチのためには、ある程度はやむを得ない部分もありますが、そういう設問はせめて、必須項目から外しましょう。
こうしたwebのフォームを構築・提案してくる業者もいると思います。
中には、カタログやパンフレットを長く任されていて、「大学入試のプロ」を自称している業者もいることでしょう。
しかし残念ながら、webの「本当の」プロである業者は、そんなに多くはありません。
入力項目を多くした方が「大学に有益な情報が集められた」と評価されますから、あまりweb上のユーザー行動に詳しくない業者ほど、大学の入試担当の言うままに、入力項目を多く設定しがちだと思います。
一方、ちゃんとわかっている業者なら「これでは情報は集まりませんよ」と警告をしてくれるはずです。ちゃんと研究をしている業者なら、webだけではなく、別のメディアやイベントの設計も含めた情報収集案を提案してきます。
とにかく、メールマガジンの登録で、失敗している大学をちらほら見かけます。
メールマガジンの内容はとても良くできているのに、登録の部分で油断しているのですね。
マイスターは、そういう事例を見つけるたびに、歯がゆい思いを抱いております。
ぜひ、ユーザーの気持ちになって設計してみてください。
最後にもう一点。
登録だけではなく、「配信先変更」「解除」の部分にも、工夫が必要です。
上述したような高校名まで入力させるメールマガジンで、アドレス変更の方法がない場合は大変です。マイスターはちょっと前にアドレスを変更し、メールマガジンを一度解除し、また登録するという作業をいくつかしたのですが、某大学では出身高校や電話番号、住所までを全部入れ直すハメになりました。
これは、入力者に手間をかけさせるだけでなく、大学が保有している情報において重複を産む原因にもなります。ですからメールマガジン購読のための入力項目が多い場合は、変更手続きも用意しておいた方がいいように思います。
それと、これは基本中の基本ですが、購読解除のためのリンクやフォームは、用意しておきましょう。
たまに、「購読を解除されたい方は、○○までメールください」というパターンを見かけますが、これはやってはいけません。極力、面倒な行為をユーザーに押しつけてはいけません。また、解除の方法を面倒にしておけば、ずっと購読し続けてくれると思っている方もいるかもしれませんが、大きな間違いです。
こういう場合、わざわざ解除のお願いメールなど出さず、迷惑メールフィルタに追加して済ませるという方は結構います。くれぐれもご注意を。
というわけで本日は、メールマガジンの登録と解除に関する注意事項をご紹介しました。
せっかく気合いを入れて制作しているメールマガジン、有効に機能させたいですよね。なるべく多くの読者に読んでもらえるように、登録や解除にも気を配りたいところです。
(なお本文では特に触れませんでしたが、言うまでもなく、個人情報の管理は最重要課題です。管理しきれない場合は、初めから余計な個人情報など集めず、メールアドレスだけにしておくのば無難ですよ。)
以上、マイスターでした。