昨日、掲載しようと思っていて、載せ忘れた資料があったので、ご紹介します。
これは、Alexaツールバーで調べた、東大阪大学サイト(http://www.higashiosaka.ac.jp/)の、アクセスデータ量推移です。
事件後、このサイトに殺到した人がどれだけいるか、イメージしていただけるのではないでしょうか。おそらく普段の何百倍というアクセスがあったと思います。事件前のアクセス量とは、比較になりません。
東大阪大学の名前を聞いたことがなかったような方々が、あるタイミングから、一斉に検索エンジンやYahoo!NEWSのリンク等を辿って、大学のサイトを訪れたのですね。
そしてこのグラフは同時に、ピークの次の日にはもうガクンとアクセスが落ちているということも、如実に示しています。世の中の人々の行動が、どれだけ瞬発的に行われるか、おわかりいただけるかと思います。
何らかの大きな事件が起こった場合、ニュースを見た人々は、Yahoo!JAPANやGoogleで、個人名や組織名を入力して検索をします。それは、普段の生活でネットを活用している人にとっては、ほとんど反射的な行為と言ってもいいかも知れません。皆様も、テレビのニュースで聞いた企業名や個人名を検索したご経験、あるのではないでしょうか。
今や、「テレビを見ながらインターネットをする」というのは、ごく普通の行動になっています。
■「アンケート!100人に聞きました:第2回 テレビとインターネット」(日本ブランド戦略研究所)
http://japanbrand.jp/cSQ/80082/1.html
上記は、簡易調査ではありますが、そうした実態を調べた結果のひとつです。特に、ニュースを見ていて、気になったことをその場で検索する視聴者が多いことが示されています。
■「瞬!ワード」(NIFTY)
http://www.nifty.com/search/shun/
↑こちらもあわせてご紹介します。この「瞬!ワード」は、NIFTYで今、どのようなワードが多く検索されているかを調べるサービスです。ツールバーにもなっているので、Internet Explorerをお使いの方は、入れておくと面白いです。
世の中で行われている検索行為が、テレビに大きく影響を受けていることがとてもよくわかります。おそらく事件報道時には、「東大阪大学」という名前が上位に表示されていたことでしょう。
テレビでも、ネットでも、大きな事件があったら、まず検索。
で、そのサイトに、関連情報があるかどうかをチェック。
大抵のユーザーは、そうやって一度アクセスしたらそれっきりなのです。
通常、二度目はないものとお考えください。
つまり、理屈で言うと、
「テレビで報道されたときには、既にwebサイトに何らかの情報が掲載されていなければならない」
ということになります。
これは正直言って、ほとんど不可能です。
特に、今回の東大阪大学のように、予期していない事故や事件が起きた場合は、なおさらです。
しかし、厳然たる事実です。データがそれを示しています。
今回は、多くの人が、事件報道を見て東大阪大学のサイトを訪れ、何もリリースが出されていないことを確認し、帰っていったのです。
そうやって去っていったユーザーのうち、数日後に再びサイトを訪れてくれるのは、ごくごくわずか。仮に、またサイトに来てくれる方がいたとしても、
数時間後にもう一回サイトを見に来てくれる方、
一日後にもう一回サイトを見に来てくれる方、
三日後にもう一回サイトを見に来てくれる方、
一週間後にもう一回サイトを見に来てくれる方、
と、時間が経つに連れて、どんどんその人数は減ってくるとお考えください。
(テレビなどで、新たな報道があった場合はまた別です)
インターネットの出現で、社会に対する広報の在り方が全く変わってしまったところは、おそらくこういう部分でしょう。
組織が動けない間に、世の中の皆様の方がどんどんアクセスしてくるのです。待ってはくれません。そういった方々にいかに早く対応するかということは、(限界はありますけれど)組織として取り組むべきテーマの一つではないかと思います。
例えば企業が不祥事や事故を起こした場合は、数時間以内に最初の、プレス向けの公式発表が行われます。そしてその日中には、webサイトになんらかの緊急リリースが掲載されます。(記者会見の用意と同時に、プレスリリース文の準備を進めるのです。企業によっては、会見終了とほぼ同時にリリースをwebサイトにアップします)
このときサイトに掲載される情報は、
「現在、○○の体制で、真相究明のために全力を挙げております」
「お問い合わせ先はこちら(電話番号)」
「詳細は、情報が明らかになり次第、追って本サイトでご報告していきます」
……という程度のものでも十分です。
要は、組織としてどのように対応しているか、ということを示せればいいのです。
さすがに事件報道直後に、すべての情報が公開されていると期待するユーザーは少ないはず。皆さんは、「ちゃんとこの企業は事故に対して対応をしているのか?」ということを確認するためにアクセスして来るのです。
おわかりでしょうか。すべてがわかってから第一報を出す、というのでは、遅すぎるのです。そんなリリースは、ほとんど誰も見に来ないのです。なぜならリリースが出される前、インターネットユーザーの皆様は、既に一度サイトを訪れてしまっているからです。
どうです、やっかいでしょう?
でも、これが現実です。
東大阪大学は、「週明け」というタイミングで最初のリリース(学長の言葉)をアップしました。大学業界の方の中には、もしかするとそれを見て「おう、ちゃんと対応しているなぁ。よくやっているなぁ」と思った方もおられるかもしれません。
でもそれは、間違いです。
大学の常識で言えば、休日を挟んで週明けすぐの対応は、よくやっている方なのかも知れません。しかし実は、そもそも大学の常識の基準が、世の中の動きに対してとても低いのです。基本は、「数時間以内に記者会見」「その日中に第一報をサイトにアップ」です。
大学の組織内部の都合を基準にしていては、いつまで経ってもベストな対応はできないままなのではないかと、マイスターは思います。
「大学のガバナンスではそれは不可能だ」という声もあるでしょう。それに対しては、マイスターは「そうです、広報の感覚で言えば、緊急事態に対応できない大学のガバナンスの方が、どこか欠陥のある仕組みなんです。」とお答えしたいと思います。
ついでにもう一点。
マイスターは先日の記事で、事件後すぐに、大学がメディア関係者向けに「公式な発表」を行うことの重要性を書きました。
なぜだかおわかりですか?
メディア側の事情を考えてみましょう。
報道関係者は、自分達のメディアでニュースを流す関係上、どうしても自前で何らかの情報を集めてくる必要があります。
特にテレビの場合は、「使える画」というものがなければなりません。
テレビ報道は「放映できる、それっぽい映像」がなければ、成立しません。
だから、テレビ局の取材クルーは、なんとしてでも、「映像」を持って帰ろうとします。
そのときもっとも取材しやすく、かつ放映しやすいのは、公式な記者会見の映像です。大学の対応に関する、何よりも正確な情報ですし、映像としてもわかりやすいものになりますからね。大学が公式に会見を行うならば、何をさしおいても、まずはそちらを取材するはずです。
しかし会見がなく、また大学が情報を出す気を一切見せなければ、クルーは必要な秒数の映像を集めるために、次の候補のところに行きます。それが……キャンパスから出てくる学生です。
「そんな人が同じキャンパスにいたなんて……信じられません」といったコメントをする学生の映像が数本あれば、テレビ番組用映像としては成立します。
遅くともその日の夜のニュースには流さないといけないのですから、映像の入手には、なりふり構いません。報道する側の都合を考えれば、当然です。
事実、今回の東大阪大学の事件をめぐる報道には、「在学生の声」がとても多く登場しているとマイスターは感じました。それは、大学が、早期に会見を行わなかった結果だろうと思います。
マイスターは、それは、あまり良いことだとは思いません。
在学生達だって、事件に関して不安や心配を抱いたりしているはずです。そんな学生達に、無遠慮なカメラが向けられるのは、なるべくなら避けたいと思います。
だから、早期に会見を開かなかった東大阪大学は、そこまで考えが及ばなかったのかなぁ、と思ってしまうのです。
日本の大学は、テレビというメディアの扱いに慣れていないのではないかと、マイスターなどは思います。(大学人にとってテレビとは、未だに、「ごくまれに、研究成果を取材しに来る存在」という認識なのではないでしょうか?)
長くなってきたので、ここで終わりにします。
今日、申し上げたかったことは、
○事件や事故に対しては、数時間以内に記者会見をし、その日中にプレスリリースをアップできるようにする
ということを、できれば目標にして欲しいなぁということです。
以上、マイスターでした。