「学校での活動体験」自体は、現代の若者達にとってとても大切だと思います。免許のための実習とは切り離された形で、学生が小中学校に足を運ぶような仕組みは必要だと思います。
子供達の校外学習にアシスタントとして参加するとか、運動会のサポートスタッフとして働くとか、学級日誌を作るとか、現場にとっても助けになるような形で派遣できるようなシステムができるといいですよね。
先日6月18日のニュースクリップで、上記のようなことを書かせて頂きました。
そうしたところ、ブログを読んでくださった方から、「ちょうどこのような活動を行っている大学がある」という情報をいただきました!
(メール、ありがとうございます!)
日本の教育界の皆様にとっても、ご関心を持っていただける事例だと思いましたので、今日の記事でご紹介させていただきたいと思います。
【教育関連ニュース】—————————————-
■「東北大学 学校ボランティア」(東北大学教育学部・水原研究室)
http://www.sed.tohoku.ac.jp/volunteer/
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私たち「東北大学・学校ボランティア」は、大学生によって地域の教育活動がより豊かになるとともに、そこでの活動を通して彼らが社会の中の一員として成長していくことを目指して創設された、東北大学教育学研究科公設のボランティア組織です。平成15年度に仙台市・宮城県の教育委員会と正式な提携を結びました。これまでの主な活動は、小学校から高校において学習の補助や野外活動の付き添い、地域の団体が主催する諸活動の付き添い等です。今後は、総合的な学習の時間等の学校の授業のお手伝いもしていきたいと考えています。
(「活動案内」のページより)
というわけで、東北大学教育学部の研究室が立ち上げた、学校ボランティアの仕組みです。
簡単に言えば、
学校でボランティアをしたい学生と、
ボランティアを募集している学校のニーズとを結びつける、
マッチングの仕組み
…となりますでしょうか。
サイトを見ていただくと、左メニューに
ボランティア依頼 (12件)new!!
の文字が見えます(2006.6.20現在)。
どうやら、わりと高い頻度で、学校から依頼が寄せられているみたいです。学校から信頼されているのですね。
では、学生の登録状況はどうでしょうか?
■「活動案内」(東北大学・学校ボランティア)
http://www.sed.tohoku.ac.jp/volunteer/intro.htm
↑こちらをご覧ください。「現在登録してくれている学生は、全学部から130名ほど」だとのこと。学生からの認知度も、なかなかのようです。
ただマイスターは、この130人という数もさることながら、登録学生の学部構成の方に特に感動しました。
【登録学生の構成 】
教育学部 60 人
文学部 7 人
法学部 8 人
工学部 12 人
理学部 10 人
経済学部 2 人
農学部 1 人
歯学部 1 人
医学部 1 人
大学院 24 人
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合計 126人
(2006年4月現在)(「活動案内」より)
教育学部が多いのはもちろんですが、ご覧ください。
理学部、工学部のほか、なんと医学部、歯学部などにも登録者がいるのです。
マイスターは、「教員にならない学生こそ、大学生のうちに学校でのサポート活動を体験しておくべきなんじゃないだろうか」と考えていたのですが、まさにそのイメージ通り! 大学院生も登録してますね。
これ、重要なことだと思います。
ところで、「学校への学生派遣」といったような仕組みを考えるとき、往々にして大学関係者がやってしまいがちなのは、参加できる学生を限定することではないでしょうか。
大学院生限定、教育学部生限定、教職志望者限定。
このように、参加する学生を制限した方が、仕組みを運営する方は楽です。
また「将来、教育に関わる学生だから」という大義名分が成り立ちますから、学生を派遣することを学内外に説明するのも、比較的カンタンです。
でも、学校でボランティアをしてみたいと思っている学生って、何も教員志望者だけじゃないはずなんですよね。
本当は、工学部を出てエンジニアになる学生や、法学部&法科大学院を出て弁護士になる学生、医師を目指す学生の中にも、学校で子供達のサポートをしたいと思っている人達がいるはずです。
というよりも、そういう学生だからこそ、若いうちに子供達の相手をしたり、地域の学校の業務サポートをしたりという経験が、後に活かされてくるのではないでしょうか。
ですが大抵の大学は、「とりあえず教員志望者だけを対象にしておきましょう」という言葉で、楽な方に逃げてしまうのではないかと思います。
また「学生が途中で事故にあったらどうするんだ」とか、「学校に派遣した学生が、何か問題を起こしたらどうするんだ」とかいった反対意見も、すぐに出てくると思います。大学の教学を決定するガバナンスは、責任者不在の合議制で成り立っていますから、反対する理由は、いくらでも出せてしまうのですよね。
結果、学生にとって一番良い方法ではなく、大学として一番面倒くさくない方法が採られてしまうというわけです。
しかし今回ご紹介している東北大の学校ボランティアは、全学生を対象にしているのです。教育学部のいち研究室が主催しているのですから、本当は、「教育学部以外の学生の面倒まで見てられません!」とかカンタンに言ってしまえる立場であるはずなのに、です。
詳細は存じ上げませんが、おそらく、プロジェクトの実現までには、並々ならぬ苦労があったと推察します。でもこうやって全学生を対象に、派遣事業を実現させているのですね。
このことだけでもマイスターは、プロジェクトを運営している皆様に対して、心から感服するのであります。
また、ボランティアを派遣するまでの仕組みも、良くできています。
平成15年度に仙台市・宮城県の教育委員会と正式な提携を結んだとのことでして、小中学校からの依頼は、まず教育委員会が受け付ける形になっています。
↓詳細は、こちらをご覧ください。
■「学校関係者の方へ(小学校・中学校)」(東北大学・学校ボランティア)
http://www.sed.tohoku.ac.jp/volunteer/school.htm
上記のページを見ていただくとわかるのですが、常設の事務局が大学側に設けられています。
こういった活動は、途切れなく続けられることが大事。そのためには、事務局として誰かが業務を担わないといけないのですよね。書いてみるとなんだか当たり前のようですが、これはとても大切なことだと思います。世の中の大学が思いつく社会貢献プロジェクトには、この「継続性」を軽視しているものも少なくないように思います。
また、この学校ボランティアの仕組みの一部を担っている以上、仙台市教育委員会にも当然、各校からの要望を受け付けるスタッフがいるわけですよね。これも、大切なポイントです。外部の機関が、常に人員を割いて協力してくれているからこそ、行政や地域を巻き込んだ、これだけの仕組みがうまく機能するわけです。
制度がまわりはじめるまではきっと大変だったと思いますが、結果的に今は、学生・大学・小学校・教育委員会のすべてにとってメリットがある、いいサイクルができているようです。
大学だけの取り組みや、行政だけの取り組みでは、継続的な成果を上げることはできないとマイスターは思います。
近隣にいる人達すべてを巻き込んでいくくらいの覚悟がないと、本当にイノベーティブな仕組みなんて生み出せないのですよね、たぶん。
日本の大学は今後、「地域貢献」という面でも、社会に対して成果を示していくようになるでしょう。
そのとき、同じ「地域貢献」でも、外部との連携に関する組織の考え方によって、
相変わらず、教員が公開講座で自分の専門分野について語るだけにとどまるのか、
それともこの東北大の取り組みのように、その地域の社会インフラとして積極的に役割を担っていくのか、
その違いが出てくるのではないでしょうか。
そんなことを、この学校ボランティアの事例から、考えた次第です。
このように、様々な点で興味深い事例です。東北大の「学校ボランティア」。
仕組みだけを見れば、全国の多くの大学でも実現可能なシステムに思えます。
もちろん実際には、そう簡単に作れるわけはないのですが、それでも、「自分達もやってみようか」と検討してみることは、できます。別に、東北大とまったく同じ仕組みにする必要もありませんしね。
学生を地域の学校に派遣するこの試み。
あなたの大学でも、いかがでしょうか? 教育の上でも、地域貢献の上でも、オススメです。
日本の学校教員は多忙ですから、きっとあなたの地元にも、学生さんのサポートを必要としている学校があるはずで、「誰かに必要とされている」という経験は、確実に参加した学生さんを成長させてくれることと思うのです。
以上、マイスターでした。
はじめまして。進学塾の講師をしています。こちらのブログは非常に興味深いものですね。また拝見させていただきたいと思います。
なお私は現在「受験勉強相談室」http://www.purple.dti.ne.jp/jukensoudan/という中学受験・高校受験・大学受験の効果的な受験勉強法や有益な受験情報をまとめたサイトを運営しています。今までの受験指導経験をもとに、どうすれば第一志望校合格という夢が叶えられるかを書きました。学校の成績を確実に上げる方法やお奨めの参考書・問題集の紹介もあります。また9月以降、無料のインターネット授業も運営していこうと考えています。もしよろしければ、ぜひお立ち寄り下さい。お待ちしております。
はじめまして。今回マイスターさんが紹介してくださった「東北大学学校ボランティア」の事務局をしている、めぇです。マイスターさんにこの活動を紹介してくださった方の後輩です。
私たちの活動を紹介して頂けて、本当にうれしいです。現在はさらに依頼が増えて、16件になりました。昨年度利用してくださった先生方が継続して利用してくださるのと、市教委の先生が働きかけてくださっているおかげです。
これからも頑張っていきますので、またHPに遊びにきてください。