・当世 企業の内定者研修
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50202804.html
昨日書いた記事で、「企業は、大学の教育を信用してないんじゃないか?」ということを申し上げたのですが、これに関連して興味深い資料がありましたので、ご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————-
■「『企業の採用と教育に関するアンケート調査(2006年調査)』結果(PDF)」(社団法人 経済同友会)
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2006/pdf/060427b.pdf
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「大学職員.network」にて、他の方に教えていただきました。
業界SNSって素晴らしい。
経済同友会では、1999年から企業経営者が学校現場に出向き、中学生・高校生を対象とした出張授業や、教員・保護者を対象とした研修会の講師を務めるなど、「学校と企業・経営者の交流活動」を行っている。
そうした活動を続けるなかで、企業の採用のあり方や教育に対する企業の考え方等についての学校関係者の関心は高く、企業の実態を定期的に把握し、広く社会に発信していくことが重要であると認識している。
そこで、企業がどのような人材を求め、どのような基準で採用を行っているか、また、企業が学校教育にどのような協力・貢献を行っているか、企業の変化の実態を把握するため、定点観測として、本調査を実施した。
(調査結果より)
と、この資料には書かれています。
「企業がどのような人材を求め、どのような基準で採用を行っているか」
ほほぅ、これはまた、気になりますね。
まず、どんな基準で採用しているのか、見てみましょう。
1.企業の新卒採用:選考方法・基準/求める人材について
●選考方法・基準については、大学卒、大学院卒、短期大学卒、専修・専門学校卒ともに、一番重視するのは、「面接の結果」。その次に「筆記試験の成績」「学校での専攻分野」が上位を占める。「出身校」の重要度は極めて低い。
(以上、冒頭の調査結果より)
おおかたの予想通りのお答え、でしょうかね。
マイスターは昨日の記事で、「今でも企業には、経済学部を出ているからといって、経済に強い学生だとは思っていないようなフシがあります。」と、企業が大学生の専攻分野をあまり考慮していないことを批判しました。しかしこの調査結果をそのまま受け取れば、少なくとも採用の段階では、3番目に考慮されていることになりますね。
ただ、別の質問で、こんなのがあります。
新卒の採用選考の際、ビジネスの基本能力等として、特にどのような能力を重視していますか。あてはまる項目をそれぞれ3つ選んでください。
特に重視している能力:
1.熱意・意欲
2.専門知識・研究内容
3.協調性
4.創造性
5.一般知識・教養
6.表現力・プレゼンテーション能力
7.実務能力
8.課題発見力
9.問題解決力
10.判断力
11.(学業以外の)社会体験
12. コンピュータ活用能力
13. 論理的思考力
14. 行動力・実行力
15. 国際コミュニケーション能力
16. 常に新しい知識・能力を学ぼうとする力
17. その他
(以上、冒頭の調査結果より)
この結果、「学部生の採用時に特に重視している能力」として「専門知識・研究内容」を選んだ方は、たったの7.6%。16個の選択肢のうち、10番目という結果でした。
学校での専攻分野を重視していると言っておきながら、実際には大半の企業は、言うほど学んだ内容を重視してないのですね…。なんだか騙された気分。
(ちなみに「一般知識・教養」は6.3%、「国際コミュニケーション能力」は1.7%で、これまたあまり重視されていない能力のはずなのですが、先述したとおり、企業は採用活動において、筆記試験の成績を2番目の判断材料にしています。)
また、ここも気になります↓
「出身校」の重要度は極めて低い。
こう書かれていますよね(報告書では、わざわざアンダーラインでここだけ強調してあるくらいです)。でもこれ、ちょっと怪しいです。
別の質問では、↓こんな結果が出ているんです。
〔1〕 採用試験では「出身校不問(学校名を聞かずに筆記・面接試験等を行う)」ですか。(回答:241社)
1.全面的に採用している:4.1%( 10社)
2.部分的に採用している:7.5%( 18社)
3.採用していない:64.3%(155社)
4.その他:24.1%( 58社)→「3.「出身校不問」は、採用していない(学校名を聞いている)」とお答えの場合、ご回答ください。〕(回答:145社)
1.今後、「出身校不問」を全面的に導入の予定:6.2%(9社)
2.今後、部分的に導入の予定:2.8%(4社)
3.今後、導入の予定はない:89.0%(129社)
4.その他:2.1%(3社)
(以上、冒頭の調査結果より)
…と、過半数の企業が、「出身校不問」制度は採用していないし、今後も採用する予定はないと回答しているんですよ。つまり、出身校はほとんど参考にしないと言いつつも、今後も出身校を聞き続ける方針に変わりはない、ってことです。
「我々にとって、出身校の重要度は『極めて』低いんです!」
と、下線付きで強調しておきながら、じゃあこんなにも多くの企業が、大学名を問い続けているのは、一体なんのためなのか。
う~む、クサい! オトナのウソのにおいがぷんぷんします!!
っていうか、この調査結果、どこもかしこも怪しいところだらけじゃん!!
出身校を参考にするのなら、堂々と聞けばいいし、「しない!」と言うなら別に聞かなくてもいいですよね。「参考にしないけど、聞く!」って、どういうこっちゃ。どっちにするにしても、はっきりして欲しいものです。
なんだか、言いにくいことを、ごにょごにょごまかしながら言っているような印象。
どうなってんだい、経済同友会。
ところで今さらですが、「出身校不問」って、よく考えてみるとなんだかビミョウじゃないですか?
企業の側は、
「我が社は、高偏差値大学を優遇する旧態依然とした『学歴主義』ではなくて、学生の実力を見て採用します!」
ということをアピールしたいのでしょうが、出身校を考慮しないということはつまり、
「苦労してCOEや現代GP・特色GPなどをはじめ、オリジナリティあふれる教育を展開している大学の出身だったとしても、企業はそういった大学が持つ特色は、ぜんぜん考慮しませんよ」
…ってことでもあるんですよね。
苦労して、やれ認証評価だの、格付けだの、JABEEだのを必死に取得している大学関係者にとっては、
「え? 企業、こういうところ見てくれないの?」
ってな感じじゃありませんか?
「面接では正直ぱっとしなかったけど、あの大学は徹底的に学生を鍛え上げることで知られているからなぁ。技術者としての基礎は身につけているだろう…」といった判断も、期待できません。それはそれでなんだか極端な気もします。
(大学のパンフレットには、大抵、「本学の教育は産業界から高い評価を受けており、○○大学の出身者ということは、就職において学生の皆様の心強い味方になることでしょう」とか書いてあるけれど、経済同友会は、出身校は考慮しないと言ってますよ。パンフレット直さなきゃ)
一口に、「出身校を考慮しない」と言いますが、本当はそのあたり、色々な側面があるはずですよね。
例えば、教育改革が大成功したと評判の大学や、厳しい教育姿勢で知られる大学なら、そういう面でプラス評価が合っても良いんじゃないかと、個人的には思います。
また、優れたプロフェッショナル養成カリキュラムを持つ大学や、JABEEのような業界標準教育プログラムの認定を受けている大学などはむしろ、産業界から相応の評価を受けてしかるべきではないかな、と考えます。
こういったことは、従来の「学歴主義」とはまた違った話であるはず。
その辺の説明が無く、一律に「出身校の重要度は極めて低い」とだけ言われるのも、大学関係者としては、なんだかちょっと寂しいです。
(本当は、こういう面を参考材料にしている企業もあると思うのですが、経済同友会の質問項目だと、その辺の詳細がまったくわからないんですよね。来年からはぜひ、「出身校を参考にすると答えた方にお伺いします。どういう側面を参考にしているのですか?」という質問もお願いします)
でも、最後にこんなこと書くのはなんですけど、マイスターが思うに、やっぱり企業の採用担当者は、学校名を参考にしていると思います。

↑以前、ビジネス本コーナーに並んでいたのをたまたま買って読んでみたのですが、企業の人事部門の内情に関する記述が生々しく、けっこう興味深い内容でした。表向きはどの企業も「学歴不問・人物重視」を標榜しているけれど、実際には違う、ということが述べられているのです。
例えば、人事部の方々は、東大をはじめとする「名門大学」からどのくらい学生を集めたかということで、社内から評価されるという現実があるようです。
東大が1人も採れなかった年は、「何をやっているんだ!」と事業部や役員から言われる。人事だって社内にアピールもしないといけないから、結局、旧帝大、早稲田、慶應、一橋、東工大となる。とにかく一流大学を確保しないと人事部が社内で評価されないというのが現実…(「超・学歴社会」)
うーん、確かに、十分想像できる話です。
この本には資料として、1989年から2004年までの大手企業の「大学別」内定者数一覧表がついているのですが、この表を見る限り、「学歴不問」を掲げる企業が増えた90年代を通じて、いわゆる有名大学からの採用比率は逆に高まっているのです。
「学歴は不問だったけれど、結果的として良い学生がみんな、名門大学の出身者ばかりだった」と言うには、ちょっと不自然な印象があります。
ただ、こうした採用に関する問題は根が深く、とても、1本のブログ記事でサラリと語り尽くせるようなテーマではないのですね。今回も、ちょっと資料を見てみただけで、「?」だらけでした。突っ込んで調べようと思ったら、日本社会のあらゆるタブーと向き合う必要がありそうですから、何年もかかるのではないでしょうか。
こうしたテーマについて、学術的に調査研究されている研究者の方もいらっしゃると思います。マイスターは恥ずかしながらまだ、そのあたりについて詳しくありませんので、何か面白い資料などをご存知の方は、ぜひぜひ、情報いただければと思います!
思えば、企業の採用基準は組織のトップシークレットですから、客観的に分析することが難しいのですよね。企業の自己申告による数字しか、頼れるデータがないのです。
もしかしたら、表向きのタテマエと、裏のホンネは、かなり違っているのかも知れません。
そんな状況下で、大学はあれこれと就職対策をしているわけですが、ただ一つ言えるのは、
「行動力あふれる優秀な学生は、どんな企業も欲しがる」
ってことです。
今日は、あれこれと、一貫性もなく書きましたが、結局のところ、実力が一番大きな要因になるのは疑いのないことです。
就職活動は大変ですが、頼りになるのは自分自身。学生の皆様、頑張ってください。
以上、マイスターでした。
どこの大学をでても同じ扱いと言うのでは学生にとって失望しますね。大学名は評価される基準となるし、人を選ぶ基準でもあります。
外資系企業は超有名大学しか説明会及び採用しないところがあります。欧米社会は日本社会異常に学歴社会で、学歴不問ということはまず考えられません。
外資の人事担当者は新卒者に「ポテンシャル採用だ」と言っておりました。
いわゆるトレーニングすれば見につけてくれるという「学力」で採用するようです。
大学側としても一生懸命工夫して教育を施しても、どこの大学をでても大学名は評価されず、同じとひとくくりにされたのでは腑に落ちませんね。
働くようになってからは大学名では食べていくことは出来ませんが、大学名は入社する際の採用基準のひとつになっているということでしょうね。