大学の歴史をアピールしよう!(2):歴史コンテンツの制作には、私立大学の方が有利?

大学ウォッチャーのマイスターです。

・大学の歴史をアピールしよう!(1):企業の社史紹介コンテンツから学ぼう
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50171071.html

昨日は、↑このような記事を書きました。

組織の構成員やステークホルダーの間で、同じ目標や価値観を共有することは大切であり、そのために大学の「歴史」を活かしていこう、ということを申し上げました。
またそれにあたっては、webサイトが非常に有効なメディアである、とも述べました。

本日は、具体的な事例を、ちょっと見てみようと思います。

個別の事例をご紹介する前に、いくつか大学のwebサイトを見て感じたことを先に。

【年表と、「建学の精神」だけ、という組み合わせが多い】

マイスター、今回、結構な数の大学webサイトを見ましたが、コンテンツとして用意されている情報として、

<「建学の精神」の簡単な紹介 + 沿革(年表)>

のみ、という組み合わせが非常に多かったです。
もちろん、この2つは大事ですし、最低限公開されていなくてはならない情報だと思います。ただ……

「建学の精神」は、ある種の宣言文。沿革は、年表。

これだけだと、受け継がれてきた大学創設者達の「想い」を、立体的に感じ取るという目的には、ちょっと寂しい気がします。

上記の2点は、どの大学でも持っているコンテンツなのですから、これに、何をプラスしたかということが、勝負なのです。何事も、差別化ですよね。

【歴史コンテンツでは、私立大学が有利】

今回、調べてみてすぐに気づいたことは、「国立大学のwebサイトには、大学の沿革に関する情報は、年表くらいしか載ってない」ということです。
これじゃあ、大学の歴史から、その大学に思いをはせるとか、大学の精神を読み解くなんてことは、無理です。

でも、考えてみれば、当たり前かも知れません。

私立大学の場合は、必ず「創設者」、「学祖」と呼ばれる人々がいます。
特定の個人や組織が、若者の教育のため、国の発展のために大学を設立したわけですから、そこには大きな志や想いが、わりとわかりやすい形で存在しています。

慶應の福沢諭吉、早稲田の大隈重信、同志社の新島襄、東京女子大の新渡戸稲造などなど、著名な学祖も多いです。
こうした大学創設者達の想いや言葉は、現在まで各大学のアイデンティティの一つとして伝えられています。ここで言うまでもなく、大学の歴史を語る場合、もっとも重要なキーとなる存在は創設者ですよね。

ところが、国立大学の場合、創設者は国家です。
大学が作られた理由って、大体は

「富国強兵のため」
「国家のために必要な人材(官僚、医師、教員、エンジニアetc.)を育成するため」
「地域の発展のため」

…などです。
これらはもちろん非常に大切な目的だったわけですが、素直に大学の創設経緯はと聞かれたら、「国が決めたから」の一行で終わってしまいます。

私立大学が、個人の想いに端を発して創設され、廃校の危機にさらされたりしながら存続してきたのに比べると、いまひとつ、システマチックというか、盛り上がりに欠けるのです。

もちろん、国立大学でも、アピールの仕方はあるのかも知れません。
でもマイスターが見た限りでは、国立大学の歴史コンテンツは総じて面白くないです。

(受験生や一般生活者からしたら、例えば「クラーク博士は結局、何をした人なの?」とか、すごく気になるところだと思うのですが、北海道大学のサイトにはクラーク博士の名前はまったく出てきません。あるのかも知れないけれど、見つけられません)

というわけで、今回ご紹介する例は、全部、私立大学になってしまいました。

さっそく、以下にいくつかの例を。

■「早稲田の歩み」(早稲田大学)
http://www.waseda.jp/jp/episode/index.html
■「創設者 大隈重信」(早稲田大学)
http://www.waseda.jp/jp/okuma/index.html

■「2008年に創立150年を迎える慶應義塾」(慶應義塾大学)
http://www.keio.ac.jp/keio_sogo_master/prologue_1.html
■「時代の先導者福澤諭吉」(慶應義塾大学)
http://www.keio.ac.jp/keio_sogo_master/prologue.html

というわけで、こんなときでも、つい並べて書いてしまう早稲田、慶應の両校です。
日本を代表する私立大学であるだけに、創設者の知名度も、歴史の長さも申し分ないですよね。著名な卒業生も多いですし、今日まで、学内では様々なエピソードも生まれてきたと思います。

そのあたりをうまく伝えられているのは、早稲田大学でしょう。
学祖・大隈重信を紹介するコンテンツは、高校生でもすっと読める長さのコラムが中心。内容も、読みやすく、うまくまとめられていると思います。
校旗や校歌、角帽などに関するエピソードもあり、これらは早稲田の在学生にとっても興味深いと思います。
在学生の愛校心を高める上でも、効果的なのではないでしょうか。

■「歴史」(同志社大学)
http://www.doshisha.ac.jp/information/history/rekishi.php
■「同志社アーカイブス」
http://joseph.doshisha.ac.jp/ihinko/index.html

新島襄が創設した、同志社大学です。
やはり、学祖の動きが中心です。
「同志社アーカイブス」では、新島襄ショートストーリーなど、彼の生涯を丁寧に見ていくことができます。

■「上智の精神」(上智大学)
http://www.sophia.ac.jp/J/first.nsf/Content/spirit

カトリック系大学、上智大学のコンテンツです。
自らを「SOPHIA UNIVERSITY」と表記するなど、アイデンティティにはなかなか強いこだわりを持つ上智大学ですが、webサイトの情報も充実していました。

■「明治大学の歴史」(明治大学)
http://www.meiji.ac.jp/koho/information/history/index.html
■「明治大学を創った人々」(明治大学)

明治大学のwebサイトです。
上記のページの他「スポット明治」のメニューでは、紫紺のスクールカラーの由来などが紹介されています。

■「沿革」(日本体育大学)
http://www.nittai.ac.jp/history.html

そんなに情報が充実しているわけではなかったのですが、誰もが知っている独特の大学である割に、あまり設立の経緯は知られてないんじゃないかな、と思いましたので、ご紹介を。

■「大学の歩み:國學院大學の沿革」(國學院大學)
http://www.kokugakuin.ac.jp/about/enkaku.php

皇典講究所が前身という、これまた独自の系譜を持つ、國學院大學です。
公的な性格の強い機関から、私立大学に生まれ変わる例はいくつかあると思いますが、そうした経緯をちゃんと伝えておくのは、大事ですよね。
ほうほう、と読めます。

…と、ちょっと短めなのですが、今日はここまでにしておきます。
せっかくですので、上記でご紹介した各大学の歴史を、ぜひこの機会に読んでみてください。

明日も、面白い事例があったらご紹介したいと思います

ところで、国立大学では歴史コンテンツが作りにくいと申し上げましたが、でも、やりようはあると思います。
何らかの必然性があって、その大学が計画されたわけですから、

「大学が設立されるに至った時代背景をものすごく丁寧に紹介する」
「その時代にあって、大学がどのように貢献したかを解説する」
「地域史の中に大学を位置づけて紹介する」
「どんな卒業生が活躍したかを紹介する」

といった方法はとれそうです。
うまくつくれば、有名私立大学にも負けない、非常に面白いコンテンツになると思います。

それに創設時はどうあれ、開学してからは、数え切れないくらい多くの人々の想いを受けて、今日まで大学が存続しているわけです。
そうした人々の声をずらーっと集めるだけでも、他にない大学紹介コンテンツが作れそうな気がします。

国立大学関係者の皆様、いかがでしょうか。

以上、マイスターでした。