毎日、webで新聞社のサイトを巡回しているので新聞を定期購読する必要をあんまり感じていないんです。
それに、マイスターは、毎日特定の新聞をじっくり読むより、同じ時間をかけていくつものメディアの情報を比較する方が性に合っているようですし。
っていうか、部屋がすんごく狭いので、新聞をためておけません(これが本音)。
おまけに掃除も下手なので、一週間もためこんだら、文字通り部屋が「ウサギ小屋」になってしまいそう…。
ところで、新聞を定期購読せずにネットでニュースを読むという人は、同世代を中心に結構多いんじゃないかな…と思っています。
それでもやはり、後ろめたさ、ちょっと感じますよね。
新聞を購読しているのは、いわば「まっとうな社会人」の証。
新聞をとってないなんてカミングアウトしようものなら、
「えっ!?」
と、周りから引かれかねません。
まして、勉強熱心でインテリな学校関係者の中では、新聞の権威は絶対!
(…という気が。マイスターの勝手な印象かも知れませんが…)
そんな風に思ってこそこそ過ごしていたら、こんな資料に目がとまりました。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「2005年 国民生活時間調査 報告書」(NHK放送文化研究所)
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/life/life_20060210.pdf
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「テレビとマスメディア」
「レジャーと交際」
「労働と学業」
「睡眠と食事」
「家にいる時間、いない時間」
「必需行動・拘束行動・自由行動」
などなど、ライフスタイルに関する興味深い調査です。
この結果を、各種メディアは主に
「男性の家事時間が増えた」
「睡眠時間の減少に歯止めがかかった」
「テレビを見ない若者が増えた」
という部分にフォーカスして取り上げていました。
■「男性の家事時間が増加 NHK放文研の調査」(共同通信 gooニュース掲載)
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20060220/20060220a4650.html
■「国民生活時間調査 テレビ/見ない20代男性、2割超す」(産経新聞 gooニュース掲載)
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/shakai/20060221/m20060221002.html
ほうほう、と思ってこうした紹介記事を読んでいたのですが、実際の報告書を読んでみて驚きました。
それは、「テレビとマスメディア」の章の、「新聞」の項です。
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■ 2000年と比べると、国民全体では、平日と日曜で行為者率が減少した。男女年層別にみると、平日では、男女10代、女70歳以上を除くすべての層で減少した。この結果、男女とも40代以下で行為者率50%を割った(1995年では20代以下、2000年では30代以下で、それぞれ50%を割っていた)。すでに若・中年層で始まっていた行為者率の低下が、今回は60代にまで及んでいる。
職業別にみても、特に自営業者や勤め人、主婦で、平日の行為者率の減少が大きい。
■ また、土曜・日曜の行為者率をみると、男女とも20~40代、職業別にみると勤め人の行為者率の低下が大きく、社会の中核層で新聞ばなれが進行している。
以上、『2005年 国民生活時間調査 報告書』(NHK放送文化研究所)より
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テレビどころじゃなく、大変なことになっています。
いや、前々から、新聞を読む人が減っているという調査結果は目にしていたのですが、今回は、「行為時間」まで明確にされた上で減少が示されていますので、リアルです。
この調査結果、ネットの視聴率調査企業である「ネットレイティングス」の代表、萩原雅之氏が、グラフにしてくれていました。
非常に興味深いグラフですので、ぜひご覧ください。
■「NHK『国民生活時間調査』による新聞の1日の行為者率変化(1995年、2000年、2005年、平日・男女年齢別)」(萩原雅之氏作成)
http://www.mars.dti.ne.jp/~hagi/ref/20060228_newspaper.htm
いかがでしょうか。
「社会の中核」とも言える30代、40代男性の新聞離れが、明らかです。
萩原氏は、ご自身が主催するメーリングリスト「surveyML」で、この件について以下のように述べられています。
-新聞社は認めたくないと思いますが、やはりこの10年「ネットで読めるから紙は不要」という人が増えたのは間違いありません。
この結果が事実に近いとすれば、新聞広告のリーチや接触量も10年前に比べて著しく減っているわけで、読売1000万、朝日 800万といった「発行部数」が維持されていても、媒体指標としての有効性に疑問が出てきます。
逆に言えば、これだけの変化があるのに新聞発行部数の数字が減らないのは奇妙としかいいようがありません。広告主のためにも、いわゆる「押し紙」の実態など、新聞業界全体の課題として情報公開すべきと思います。-(「[surveyml:9879] 新聞のリーチ低下<NHK国民生活時間調査」より)
…と、熱く語られています。
で、マイスターもこれを読んで、ネット業界人だったころの血が騒いだのですが、それは、とりあえずここでは置いておきましょう。長くなりそうですし。
で。
ようやく話は、学校のことになるのです。
マイスター、前々から、大学広報関係者の、新聞に対する信頼感について、すっごく不思議に思っていたんです。
新聞の下段を使った、入試広告ってありますよね。
各大学が同じサイズのスペースを使って、
学部学科の構成とか、入試日の日付とかを一斉に掲載する、アレです。
かつてはあの広告も、大学の入試日を比較したり、学部学科を比較したりと、ご家庭で便利に使われていたのでしょう。
しかし現在、この広告が、どういう価値を持っているのでしょうか?
10年前の、何分の一くらいの価値があるのでしょうかね?
もちろん、まったく無意味とは言いません。
自らアクセスしないと見られないwebサイトと違って、
新聞を購読してさえいれば、一方的に配信される広告、
そして(廃れてきたとはいえ)他のメディアに比べて大きな発行部数。
新聞広告にも、うまい使い道はあるはずです。
でも、かつてと同じように、
<大学名と、受験日、学部学科を、お茶の間に告知するメディア>
として新聞を位置づけている大学があるとしたら、広報戦略としては、ちょっとお粗末であるように思います。
webがなかった頃と比べれば、あの種の広告の媒体価値は、10分の1くらいではないでしょうか。
でも相変わらず、エラい人を中心に大学関係者というのは新聞に全幅の信頼を置いているようで、新聞への広告出稿はあまり減っている感じがしません。
新聞のスペースを活用するなら、他のメディアと組み合わせた企画にするとか、何かしらの工夫をすればいいのに、ほとんどはあんまり工夫も見られない昔ながらのスタイルだし…。
もし、かつてと同程度の広告費を払っているのだとしたら、今すぐに値切るか、新聞への出稿を考え直した方がいいと思います。
みんな騙されているのでは、と、マイスターなんかは疑心暗鬼になっちゃいます。
ただ、それでもこれまで、新聞への出稿に一定の価値を認められたのは、
「親世代に、大学の伝統や信頼感をアピールできる」
という点でした。
新聞に出稿することで、「社会的な認知を得ている組織」という演出はできます。
そしてこれまでは、高校生は新聞なんてほとんど読まないにしても、その親の世代の多くが新聞を熱心に読んでいる、という前提がありました。
だからこそ、大学をはじめ、学校法人は広告の出稿先として新聞を好んだのだと思います。
ところが最近、今回の「国民生活時間調査 報告書」のような調査結果が、その前提を突き崩してしまっているのです。
もはや、保護者も、新聞をあんまり読んでいないのです。
読んでいたとしても、平均接触時間は40代男性で14分、女性で16分です。
この状況では、あのどこがどこだかわからない、ズラッと似たような学校名が並んだベタな広告に期待をする方に無理があります。
限られた情報量、限られた接触時間の中で、自分達の学校に興味を持ってもらえる可能性は、かつてと比べて非常に低くなっていると言えましょう。
あなたの大学は、それでも、かつてと同じコストをかけて、新聞に出稿しますか?
という、そんなお話でした。
長くなってきたので、この辺にしておきますが、「2005年 国民生活時間調査 報告書」は、なかなか面白いです。
学校関係者は、「学業」「通勤・通学」の項などには、目を通されても良いのでは、と思います。
以上、マイスターでした。
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(おまけ)
大手の新聞各紙とも、今回の「国民生活時間調査報告書」で、新聞が読まれなくなっていることに関して、ほとんど報道していませんでした。
新聞は社会の木鐸だなんていいますが、やっぱり、自分に都合の悪い事実は、なかったことにするのですね…。
それどころか、読売などは、
「『男も家事』50、60代で急増中…NHK放送研調査(読売新聞)」
という記事を公開した同じ日に、
「新聞の特殊指定「存続」84%望む…読売世論調査(読売新聞)」
という記事を、狙ったかのように出してます。
なんというか…わかりやすいです。
このブログ記事を書いている時点で、涼気時とも既にネットでは閲覧不可能になっていたのですが、その内容は、以下にまとめられています。
■「読売・朝日が特殊指定死守を叫べど、読者も広告も新聞離れ(上)」(マスコミ不信日記)
http://blog.livedoor.jp/saihan/archives/50415852.html
うーん…。
やっぱり、特定のメディアばっかり信頼していると危険みたいです。
マイスターは、今後も複数のメディアを比較する路線で行こうかな。
※「押し紙」についてご存じない方は、以下をご覧ください。
■「新聞販売店」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%BC%E3%81%97%E7%B4%99
はじめまして。ご紹介とトラックバックありがとうございました。
萩原雅之氏の指摘も重要ですね。
広告主にしてみれば、「押し紙」の分は人の目に触れない無駄な公告料金を支払っているわけですし。