「中大と日芸が合同授業をきっかけに発明」

「コラボレーション」がコンセプトの大学院に通っていたマイスターです。

○専門が異なる大学院生達が混在する大学院。
○学生の過半数が、外部の大学からの進学者。
○学生は特定の研究室に所属するのではなく、自分の研究テーマに合わせて、自分が希望する複数の教員から指導を受けるシステム。
○学生達は広いオープンフロアに自分のデスクを設置し、他のプロジェクトを進める学生達とも日常的に交流できる。

などなど、コラボレーションを促進させるための様々な工夫がなされていた…のですが、

こんな仕組みがあってもなお、実際にコラボレーションでプロジェクトを進める機会というのは、なかなかないものでした。

「普段から近くで活動していれば、自然に異業種コラボレーションが始まる」

というのは間違いです。
実際には、プロジェクトをうまく誘導する「コーディネイター」のような人間がいなければ、多様なメンバーのコラボレーションというのはそうそう実現しませんね。

しかし、違うジャンルを専門とする学生同士でコラボレーションを経験してもらうというのは、大変重要なことです。
そもそも、社会人として働きはじめれば、(程度の大小はあるにしても)仕事のほとんどは異業種コラボレーションであると言えますもんね。

きっと「コラボレーション」というのは、これからの大学教育の重要な教育手法の一つになってくるのでしょう。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「中大と日芸が合同授業をきっかけに発明(東京)」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20060214wm03.htm

・「平成17年度 パテントコンテストの選考結果について」(社団法人発明協会)
http://www.jiii.or.jp/topics/patecon/patecon_kekka.htm
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中央大法学部知的財産法務ゼミの学生と、日大芸術学部デザイン学科の学生達がコラボレーションを通じて学ぶ、非常に興味深い取り組みです。

-年2回の合同授業で焦点を当てるのは、企業とデザイナー間の共同開発契約。中大側を企業、日芸側をデザイナーに見立てて、「共同商品開発」のプロセスを踏んでいくことを通じ、法律家とデザイナーの相互理解を育み、双方にとって有益な契約関係を見いだすのが目的だ。

 具体的には、まず中大の学生がグループごとに企画書を提出。日芸の学生たちが持ち帰り、デザインや仕様を具現化した上で、およそ2か月後に提案説明する。この時、中大側は“返礼”も兼ねて、商品開発と知的財産保護の関係についてグループ発表を行い、契約時に損をしないためにデザイナーが留意すべき法的権利についてレクチャーする。 –(以上、上記記事より)

などと、まさに異業種コラボレーション。

それも、お互いがその道の「プロ」になったときを想定した、極めて実践性の高いプロジェクトです。

すばらしい取り組みですね。

中大側の教員は弁理士の方。
日芸側の教員は、実際にデザインマネジメントの実務経験が豊富な方。

教員達もおそらく、それぞれ「コラボレーション」というスタイルに慣れている方々だったのかな、なんて想像します。

このお二人が、それぞれの授業指導者としてコーディネートをうまくおこなったからこそ成立したプロジェクトでしょう。

ところで、このようなプロジェクトは、他の大学でも積極的に真似して欲しいと思うのですね。

考えてみたら、総合大学なんて、同じキャンパスの中に法学部と芸術学部が合ったりします。
商学部のようにビジネスに直結する学部も同様です。
またキャンパスは違うにしても、理工系や医師薬系、スポーツ学系などなど、多くの学部を抱える大きな大学というのは全国にいくつもあるわけです。

でも、今回のような試み、ほとんど聞きません。

なんで、今回の記事のような、他学部間のコラボレーション教育をあんまりやらないのでしょうか?

マイスター、前々から「総合大学」の在り方に疑問を感じていました。
総合大学は、パンフレットなどに、
「自分の専門とは異なる分野の授業を受けられるので、様々な刺激がある」
みたいなことを大抵書いています。

確かに、他学部の授業を履修することはできるのですが、あくまで

「他学部だけど聴講してもいいよ」

という姿勢。
ヨソの学部にごやっかいになる、みたいな雰囲気です。
また、総合教育科目や教職科目を合同で履修している、ということはありますが、それで何か、専門を超えることによる教育効果がばりばり発揮されるのかどうか、個人的には疑わしいところがあります。

「色んな学部の学生が履修しているから、自然と違った意見が出る」というのは、間違いではないのでしょうが、冒頭でご紹介したマイスターの大学院時代の状況と同じで、いまひとつ決め手に欠けるような気がします。

「○○学部と○○学部の学生を選んで、異業種コラボレーションをさせてみよう」
みたいに、意図的に教育効果まで考えて設計された授業って、あんまりないんじゃないでしょうか。

「様々な専門分野の学部が揃っていることによる効果」というのは、果たして本当に発揮されているのでしょうか。

正課の授業として、意図的に別の学部生同士を集めてガチンコ勝負をさせるとか、プロジェクトをコラボレーションで進めさせるとかいった取り組みを、あまり聞かないので、キャッチフレーズとしては怪しいものだなと思っています。

(サークルなど普段の学生生活において、他学部の学生と友人になれることは、ものすごく大きなメリットだと思いますが、
正課の授業で、「専門の違い」を真っ正面から取り上げる試みがないようなのです)

こうした取り組みが行われない背景には、学部ごとに孤立したガバナンスだとか、教員の所属の問題だとか、様々な理由があると思います。

でも、そのほとんどは大学の内部事情に起因するものであって、その気になれば、こうしたコラボレーションはもっとできるんじゃないでしょうか。

マイスターとしては、こういった取り組みを積極的に展開しようとすれば、やはり「コーディネイター」として機能する人材の存在が不可欠だと思います。

現実的には今のところ、それは授業を担当する教員自身が担うことになるでしょう。

でも、教員の方にいつもそうしたノウハウがあるとは限りません。
また、他学部(または、大学外部)の、「違う専門」の教員の情報を持っている方も、そう多くはないでしょう。

そこで、修士、博士レベルの職員でそうしたコーディネイトのスペシャリストになれる方がもしいたら、なおいいのになぁ、と考えるのです。

教員から、授業内容に関する質問や相談を受けられる人材は、今の大学職員の中にはそんなにいないでしょう。(いるところにはいますが)
そういう相談を受け付ける組織体制もないでしょうし、また何より、教員の皆様は、職員にそうした相談をしようと考えないのではないでしょうか。

でも、そうしたスペシャリストがいた方が絶対にいい! と考えることは、今回ご紹介した記事の事例も含めてよくあるわけです。
いずれは、こうしたスタッフを必要とする大学が増えてくるのかなと思います。

以上、マイスターでした。