その会社では、プロデューサーは、営業から市場調査、企画、制作のディレクションなどなど、基本的に何でもやるものでした。必要に応じて、コピーも書きました。
サイトのインフォーメーション・アーキテクチャの設計もやりました。
セミナーの講師もやりました。SEO対策も行いました。
(もっとも、さすがにクライアント企業サイトのデザインを自分でやるほど、無謀ではありませんでした…。デザインは、プロのデザイナー、それも企画の意図にあったトップデザイナーをその都度アサインし、彼らに意図を伝えて作っていました)
なので、「○○担当」というような担当業務は、あんまりありませんでした。
それでも「これに関しては自分がすべてのクライアントの相手をする」という、専門的な業務がありまして、マイスターの場合、それは、
「アクセスログ解析」
に関する業務だったわけです。
今日は、これについて少しだけ。
と、その前に前知識。
SEO対策という言葉は、皆様、ご存じですか?
ネット界ではすっかり市民権を得た言葉なのですが、興味がない方はご存じないかも知れませんので、「超」簡単にご説明しますね。
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【SEO】
=「Search Engine Optimization」の略。
「検索エンジン最適化」などと訳される。
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Yahoo!JAPANやGoogleなどの検索サービスがありますよね。
今や、ネットユーザーというのは、こうした検索サービスで自分の知りたい情報を探すわけです。何しろ、ネットの海は広大です。自力でリンクを辿って調べ物をするなんて、無謀です。
というわけでユーザーはわからないことや知りたいことがあったとき、
検索サイトで適当に入力して見てみるべなーと、まず検索を行うわけです。
(みなさんも多分そうでしょ?)
これを企業の側から見ると、
「自社製品のページが、検索結果として確実にお客様の画面に表示されるような状況を作れば、大変な宣伝効果」
ということになります。
そこで、望みのページを、望みの検索ワードで、少しでも検索結果上位にヒットさせる対策を行うのですね。
これが、「検索エンジン最適化」=SEOです。
以上、超簡単なSEOの説明でした。
詳細はまた別の回に譲るとしましょう。今日の本題はここではありません。
さて、
マイスター、おなじみ進研アド社発行の『Between』で、「募集広報の羅針盤(2)ウェブサイト」と題する記事を読んだのですね。
『Between (2006 No.218 2-3月号ダイジェスト)』(進研アド)
http://www.between.ne.jp/cstmr/btm/index.html
・(記事ダイジェスト)募集広報の羅針盤(2)ウェブサイト
http://www.between.ne.jp/cstmr/btm/200602/rensai/re0602.html#5
この記事で、SEO対策についてちらっと書かれていたのですよ。
概要は、↓こんな感じ。
○大学のwebサイトにおいて、今後はSEO対策が重要となる
○技術的対策が必要となるため、多くの場合はアウトソーシングせざるを得ない
○どのようなキーワードで上位に出したいかは、大学側がはっきり方針を決めなければならない。そのためには、訴えたい時代学の強みについて、学内で共通認識を持つ必要がある
間違ってはいませんが、ちょっと簡潔すぎる印象です。
ただ、この『Between』の記事自体、SEOをメインテーマにしたものではありませんでしたから、このくらいの概要しか触れられなかったのかも知れません。
一方マイスターも、
これでもサイトの分析やらリニューアルやらでご飯をいただいておりましたので、そういう知識は適度に出し惜しみしていきたいと思っております!
(せこっ)
というわけでここでは、
SEOを実施されるつもりの学校関係者様、
または既に実施されている皆様に、一言だけご進言を。
SEOを実施するなら、
アクセス解析にお金と労力を惜しむな!
です。
どういうことか、ご説明します。
* * *
例えばそうですね、MBAを売りにした経営大学院、いわゆるビジネス・スクールを想定してみましょうか。
あなたは、このスクールの広報担当者だとします。
このスクールのカリキュラムから、あなたは「マーケティング」に興味のある社会人に自校の存在を知ってもらおうと考えました。
ところが現在、Yahoo!JAPANとGoogleの「マーケティング」というワードの検索結果で、あなたの学校は50位にも入っていません。
これではマズイと、あなたは考えます。
そこであなたは、SEO業者を呼んで、「マーケティング」というキーワードで検索にヒットするような対策をサイトに施してくれるように依頼します。
そして2ヶ月後…
あなたのスクールは、Yahoo!JAPANで「マーケティング」という検索をしたとき、常に検索結果の第一位として表示されるようになったとしましょう。
業者は、アクセス解析結果にもSEOの効果が現れていますよなどと言って、グラフをあなたに見せます。
「マーケティング」という言葉でスクールのwebサイトを訪れたユーザーは、以前は月に50人もいなかったのに、今では月に800人くらいいる、ということを示すグラフです。すごいや、さすがぷろふぇっしょなるだねパパ。
またこの影響で、スクールのwebサイト全体のアクセス数も大きく向上しました。
以前は月に1,000PVだったのが、今では2,300PVに増加しています。
(※PV:Page View。アクセスの単位)
あなたはすっかり満足。
これで、少しはビジネスマン達の間での知名度も上がるかな…?
* * *
…と、こんな感じでSEOサービスは行われます。
実際には、ちゃんとしたSEOファーム(SEOコンサルティング会社のことをこう言います)なら、もっと綿密に、こちらの様々な要望を聞きながら仕事を行っていきますが、SEOを名乗ったサービスの多くは、だいたいこんなモンです。
実際にこういうサービスを受けた方、いらっしゃるかも知れませんね。
ところでそうした皆さんは、
「そのキーワードで特定ページに来たユーザーが、
その次にどこに向かっているのか?
ってこと、ちゃんと確認されましたか?
マイスターは、日本を代表する大企業のサイトの解析結果を毎日のように見ていました。
ひと月に一千万PVなんていう、ごっつい各業界のトップ企業ばっかりです。
その経験で言いますと、コンテンツの設計次第では、
せっかくSEOで集めたユーザー達も、ほとんどが直帰している可能性があります。
先ほどの例で言えば、
・MBAコース紹介コンテンツのトップページに月間800人のユーザーを呼び寄せたとして、
・そのうち700人くらいがそのまま次のページに行かずに直帰(つまり、検索結果の一覧表示画面に戻る)、
・70人が、なぜか大学院のトップページなど、他の部分にジャンプ、
・最も見て欲しい、次の「入学ご案内」のページには、10人かそこらしか行ってない…
なんて事態、あるんですよ。それも、かなり普通に。
いくらSEOで検索エンジン対策を強化しても、これでは全く意味がありませんよね。
マイスターがアクセス解析を扱っていたときは、検索キーワードでやってきたユーザーさん達の「直帰率」など、様々なデータをいちいち算出していました。
この結果、大企業の良くできたコンテンツでも、「直帰率95%」なんていうキーワードが山ほどあることに気づいたのです。
みなさんも、ご自身の行動を考えてみてください。
マーケティングのデータについて調べたくて、「マーケティング」と検索して、大学院の案内ページが出てきても、困りませんか?
…で、「あ、コレ違う」と判断したら、すぐに戻りませんか?
そういうことを、普段自分達はユーザーとして頻繁にやっているのに、サイトを制作する側になると忘れがちです。
で、SEO業者の言い分をそのまま鵜呑みにして、「アクセスが増えた!」と喜んだりするわけです。
サイトを訪れたユーザーの大半が直帰しているなんてこと、多くの大学の広報部の方は、あまり考えたことがないかも知れません。
どうぞ、お気を付けください。
webサイトは、アクセスログによって、ユーザーの行動のほとんどを分析することができます。
ある意味、広報担当者にとっては夢のようなメディアであるわけです。
でも、本当に効果的にアクセスログを活用するには、かなり詳細に調べないといけません。
お金も手間ヒマもかかります。
フリーの解析ソフトで、自分達の手でやろうなんて考えると、かえって手間がかかり、そのわりに成果も出せない、なんてことになりかねませんので、ご注意下さい。
解析結果を企画に活かして、大学の広報力アップにつなげようと考えたら、さらに大変です。
それでも、webでしか手に入らないユーザーの行動記録が貴重であるのは確か。
ぜひ、うまく活用していただきたいと思います。
以上、マイスターでした。
はじめまして、マイスターさん。
某大学職員でウェブマスターをしているshunsukeと申します。
最近、Blogを始めたこともあって、マイスターさんのBlogを知り、ちょくちょく読ませていただいています。
ほぼ毎日更新される記事量の多さ、その中でのマイスターさんの観察力と洞察力にはいつも感心させられています。
特にWebサイトの運用管理をしている立場上、Webプロデューサーの職歴のあるマイスターさんのこの記事に強い関心を持ち、初めてコメントさせてもらいました。
つねづね、Webプロデューサの方を職員として迎え入れるべきだと上司に訴えている私ですので、マイスターさんの大学がうらやましく思えます。
もっと色々お話をお伺いできたらと思いますので、これからもブログの更新を楽しみにしています。