オリンピック村で体験したこと (& 情報求む!)

学生のとき、長野パラリンピックでボランティアをやっていた、マイスターです。

■トリノ選手村を報道陣に公開 宿泊棟は華やかな色
http://www.asahi.com/sports/update/0208/046.html

このニュースを見て、思い出したことがありました。

トリノオリンピックの話題がメディアをにぎわせている今のうちに、ぜひ、ご紹介しておきたいと思います。

というわけで、直接教育とは関係がないのですが、今日はオリンピックに関することを!

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マイスターは長野パラリンピックの終盤に、ボランティアとして長野に行きました。
確か、1週間弱くらい現地にいたと思います。
その間ずっと、オリンピックの選手村に居住していたわけですね。

(※パラリンピック開催中は「パラリンピック選手村」という名前になるのですが、呼び名が変わるだけで内容は同じなので、今回は「選手村」で統一します)

仕事は、競技を終えた選手達が荷物をまとめ、母国に帰っていくためのお手伝い。
…というとかっこいいのですが、つまるところ雑用全般でした。

帰国する選手達って、深夜の2時とか早朝5時とかに出発したりするのですよ。
(混雑を避けるためなのか、母国へ向かう飛行機の都合なのかはわかりません)
そのとき、選手達の荷物を部屋から運び出してトラックに搬入したりする人手が必要ですよね。
それが、マイスター達に与えられた役割でした。
(いやしかし、結構、思いつかない仕事があるもんですよね~。)

各国の選手達が人手を必要とするたびに呼ばれて、働いて、疲れたら選手村の自分の部屋に帰って寝る。
そんな生活を、数日間送りました。
選手達と同じ村で、同じものを食べて過ごしているというだけで、結構うれしかったのを覚えています。

そうして、選手達を見送りながら、「閉村式」に出席し、
誰もいなくなった選手村の後片付けをして、帰ってきました。

オリンピック&パラリンピックは、始まるときはメディアがこぞって報道しますが、「終わるとき」というのは、案外知られていないと思います。
マイスターは、その意味で、けっこう貴重な体験をしたと思います。

その中で、ずっと気になっていることがあるのです。

それは、選手達が帰った後の部屋の片付け作業に関することでした。

ホテルに宿泊されたときをイメージしていただければわかりやすいと思うのですが、ホテルの部屋にはたいてい、

○タオル
○バスタオル
○足ふきマット
○そのほか、シャンプーやリンスなどなど

が備品として用意されていますよね。

選手村でも、そうしたものが用意されていたのです。
何しろ、各国のトップアスリートをお迎えするわけです。ある意味、国賓です。
滞在している間、生活に不便がないよう、こうしたものをセットしておかなければなりません。
これは、納得ですよね。

で、ですね。

選手村のこうした備品は、おそらくほぼすべてが、企業からの寄付なのです。
実際に現地で、企業のロゴがうっすらと入ったタオルなどを見かけました。
どの企業かは覚えていないのですが、もしかすると大会の公式スポンサー企業だったかもしれません。

さて、こうしたタオル類は、大会終了後、どうなるのでしょうか?

誰かご存知の方がいらっしゃれば、教えていただきたいのですが、
マイスターはどうも、全部捨てていたんじゃないかと思うのです。

ホテルなら、クリーニングに出して、また利用しますよね。もったいないですし。
でもパラリンピックが終わってしまったら、少なくとも長野の選手村ではもう利用しないわけです。保管しておく意味、ありません。

でも、当然「しかるべき施設などに寄付する」という選択肢は思い浮かびますよね?

ところが、ですね。
タオルの回収作業をしたマイスターの印象ではなんだか、再利用を前提とした回収方法ではなかったように記憶しているのです。

クリーニングして再利用するなら、普通、タオルはタオルだけで集めますよね。
でも実際には、他のごみといっしょに袋詰めするように指示された記憶があるのですよ。

最終的に、でっかいポリ袋に色々なものを袋詰めして、屋外の集積場に出した記憶があるのです。

一緒にボランティアに行った大学の教員や大学院生達が、「これは全部廃棄される」と口々に話していたのも、覚えているのです。

もちろん、これはマイスターの個人的な記憶ですから、実際にはどうだったのかわかりません。
あの後、どこかで備品ごとに分けられ、クリーニングを経て、どこかに寄付された可能性は否定できません。

でも、8割方「捨てちゃうんだな」と思える回収&廃棄方法でしたから、今でも

「あのときのタオル、どうなったのかな。捨てちゃったのかな」

と、たまに思い出しては気になっているのです。
せっかく企業から無償で寄付されたものを、活かさないで捨てちゃうのかな、もったいないことだよな、と。

というわけで!

どなたか、

この件に関して正確な情報をご存知の方がいらしたら、

ぜひ教えてください、真相を!

でも、仮に捨ててしまったんだとして、そうする理由もいくつか思い浮かびます。

○1:きちんと備品を回収してクリーニングに出し分配する行為のコストがかかり、かえって新品のタオルを一枚買うより高くつく。

○2:全国から希望を募って、公平適切に配布するためのスタッフがいない。
またそのためのノウハウや時間、その間備品を保管しておける倉庫等がない。

○3:オリンピックのマークなどが入った備品を分配する行為が禁じられている。

○4:誰も欲しがる人がいない。

○5:こうした備品を再利用するところまで、誰も思いつかなかった。
あるいは、作業の優先順位が非常に低く設定されており、結果的に誰もやれなかった。

○6:始めから、捨てる前提で、コストの安いものを作っている。
または、捨てる前提で、環境負荷の低いものを作っている。

どれも、今思いついた可能性ですから、本当にこうした理屈が成り立つのかどうかはわかりません。
でも、どれも、ありそうな気がしませんか?
(個人的には「5」にリアリティを感じるのですが、皆さんはいかが思われますでしょうか)

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さて、ここまでが、今回特に書いておきたかったことです。
なかなか、考えさせられる出来事だったと思うのです。

こうしたことを研究テーマにしたら、面白い成果が上がりそうな気もするので、どなたか、ぜひ、お願いします。
(教育とは関係ありませんけど)

しかし、オリンピックというのはかなり特殊なイベントですよね。

大会の盛り上がり部分に関しては熱心にメディアが取り上げますが、それは大会全体からしたら、わずか数分の一に過ぎません。

結果として、

メディアは大会開催前ほど盛り上げて報道し、
開催直後がそのピーク、
しかし数日間で勢いを失いはじめ、
メダルが取れそうな競技が終わると競技中継をあまりしなくなり、
パラリンピックが始まる頃には、もう世間的には「次の話題」を探していて、
選手村が閉まる頃には、完全に「そんなこともあったね」状態、

という、右肩下がりのイベントになっているように思います。
(少なくとも、テレビでオリンピックを楽しんでいる方にとっては、こういう状況推移だと思います)

そしてこのオリンピック、広告効果の高いところでは莫大なお金が動くんです。
皆が注目するところでは企業のお金が惜しげもなくつぎ込まれます。
そして、注目されないところには、お金はかかってないのです。それがたとえ大切なことでも。

「スポーツマンシップを企業も応援」とか、
「世界平和のために」とかいったメッセージが、ばんばん宣伝で使われますよね。
また選手村では、地球環境に優しい実験的取り組みなんてのも報道されます。

でも、PR効果を期待して選手村のタオルを寄付する企業はいても、
タオルの後処理に協力してくれる企業はほとんどいなかったりするわけです。
世界的ビッグビジネスの現実です。

でもしかし、タオルの後処理を請け負う企業があまりからといって、「だから営利組織はダメ」なんてことはもちろん言えないわけで、むしろ、これはある程度、しょうがないことでありましょう。

企業のお金を使えるところでは、最大限うまく利用して、
それができない部分は、非営利事業のモデルで進める。
そんな現在のやり方は、ある意味で、限りなく理想に近いモデルなのかも知れないなと思います。

企業の方も、「企業市民」といった考え方が浸透したりと、少しずつ寄付や支援の仕方が、洗練されてきています。
今後も続くであろう、4年に一回(夏冬合わせると2年に一回か)の壮大な実験を通じて、少しずつ、良いパートナーシップの在り方を考えていけるといいですね。

そんなわけで、トリノオリンピックがこれから始まりますが、
ぜひ、オリンピックに関する報道のされ方や、
「オリンピック後」の取り組みについても、関心を持ってみてください。

きっと、オリンピックを数倍楽しめる!…んじゃないかなぁ~?と思います。

マイスターでした。

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以下、おまけ。

<オリンピックの役立つ豆知識>
オリンピックの「五輪マーク」を始め、オリンピックに関わる表現を広告で使うためには、公式スポンサーにならなければなりません。
莫大なお金を取られますが、多くの企業がスポンサーになりたがります。
おまけにオリンピックのスポンサー契約は、「企業単位」ではなくて、「製品単位」ですから、複数の製品でオリンピックロゴを使いたければ、製品の数だけスポンサー契約を交わさなければなりません。

2004年のアテネオリンピックなんて、開催が8月で、
「大会が始まる前に6月のボーナス商戦」
という、企業にとっては絶好のチャンスでしたから、さぞ、スポンサー権獲得の争いも激しかったことでしょう。
このとき、松下電器がプラズマテレビ「VIERA」と、DVDレコーダー「DIGA」の2製品にスポンサー契約を使い、デジタルテレビトップシェアを盤石にしたのは記憶に新しいところです。

<オリンピックの役立たない豆知識>
選手村を出発し、母国に帰っていくパラリンピック選手達。
なかなか感動的な光景ですが、マイスター達がボランティアとして彼らの部屋からトラックに積み込んでいた荷物の多くが、「秋葉原で買ったテレビや冷蔵庫」であったという…。
俺は選手をサポートするボランティアなのか電器屋のサービスマンなのか、いったいどっちだ?なんてフクザツな気持ちも、ちょっぴり感じたり感じなかったり。

<洗練されてない、企業と非営利事業のパートナーシップの例>
■「美幌町がパチンコ店寄贈の防犯ブザーを児童に配り議論に(北海道)」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20060208wm03.htm

パチンコ店が普段からこんな防犯ブザーを大量に制作しているなんて思えませんから、この寄付のために作ったんではないかと想像します。
企業側の善意はわかるのですが、せっかくなら、もうちょっと配慮すれば良かったのになぁと思います。非常に、もったいない話ですね。

1 個のコメント

  • この記事は読んでました。
    景品として作ったが引き替えていく人が少なかったので
    その処理方法の一つとして、寄付を思いついたのではないでしょうか、
    企業名を隠すために防犯ブザー等の書いたシールを貼っておけば
    問題なかったのではかいかと考えています