沖縄科学技術大学院大学とは?

正月に、沖縄に行くマイスターです。
旅行好きなのですが、今まで沖縄は行ったことがなかったので、楽しみです。

沖縄という場所は、歴史的な経緯や、政治的経済的に置かれている状況など、やはり日本の中でも特殊であるとマイスターは思っています。

例えば、本州の諸都市と比べたとき
「悲観するほど違わないけど、楽観するほど同じではない」
というのが、マイスターが沖縄に対して抱いている印象です。

一応、いくつか沖縄に関する本や言説を読みましたが、実際に行ったことがないので、沖縄について偉そうに語ることはできません。
ですので、今回ようやく、沖縄を知る最初の一歩を踏み出せるのかなと思います。
そういった意味でも、楽しみです。

さて、沖縄には、「琉球大学」をはじめいくつかの大学があります。

・琉球大学の沿革
http://www.u-ryukyu.ac.jp/general/outline/history.html#01

この大学の沿革からして、既に他の大学と異なる事情や背景を感じます。
設立者はGHQですし、設立当初から「英語学部」があるあたりも、考えさせられるものがあります。
沿革年表にさらっと書かれた
「琉球大学に関する基本法(琉球列島米国政布令第30号)」
なんて記述も、重いです。

そもそもGHQがこの大学を「沖縄大学」ではなく「琉球大学」とわざわざ名付けたことも不思議です。何かしらの政治的な思惑があったのではないかと思われますが、真偽のほどはマイスターにはわかりません。
(現在ある「沖縄大学」は、琉球大学設立後にできた別の私立大学です)

また最近では、米軍のヘリが、沖縄国際大学のキャンパス内に墜落したことが記憶に新しいです。

・「米軍ヘリ墜落事件に関する情報」(沖縄国際大学)
http://www.okiu.ac.jp/urgent.html

犠牲者が出なかったことは不幸中の幸いですが、7日間にわたって米軍が沖縄国際大学のキャンパスを占拠するという、異常な事態が生まれました。
事故当時、日本の警察が事故の検分を行えないなど、様々な実態が報道されました。

沖縄でしか起こることのない事件であると言えます。
こうした報道を通じて、私達は、(それまで余り考えたことがなかった)沖縄のある一面を見たと思います。

ところで2001年頃、新たにこの沖縄に、政府が新たな大学を設立するという構想を発表したのを、みなさんはご存じですか?

ただの国立大学ではありません。
首相の肝いりで準備が進められている、「世界レベルの研究を行う大学院大学」です。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「沖縄科学技術大学院大学」
http://www.irp.oist.jp/ja/institute.html

■「沖縄科学技術大学院大学概要(PDF)」
http://www.pref.okinawa.jp/kagaku/hpJ.pdf
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現在は、「沖縄科学技術大学院大学」という名称で呼ばれています。

2002年3月に成立した「沖縄振興特別措置法」の、

-第八十五条 国及び地方公共団体は、沖縄における科学技術の振興を図るため、沖縄における研究開発の推進及びその成果の普及等必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、沖縄において、国際的に卓越した教育研究を行う大学院を置く大学その他の教育研究機関の整備、充実等必要な措置を講ずることにより、国際的視点に立った科学技術の水準の向上に努めるものとする。-

という規定による大学です。

上記の「沖縄科学技術大学院大学概要」から、この大学院大学の特徴を抜き出してみます。

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■1:大学院大学の目的
○沖縄に、自然科学系の世界最高の研究・教育水準を有し、国際的で柔軟性を持った大学院大学を設置することにより、

 ・ 世界の科学技術の発展に寄与する
 ・ 沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展させ、
  その経済的自立を図る

等を目的としている。

■2:基本コンセプト
○主な特徴
 ・ 世界最高水準(Best in the world)
 ・ 国際性(International)
 ・ 柔軟性(Flexible)
 ・ 世界的連携(Global networking)
 ・ 産学連携(Collaboration with industry)

○教育・研究分野
生命システムを中心的な課題とし、生物学、物理学、化学、コンピューティング、ナノテクノロジーなどを融合した領域とする。

■3:特別なしくみ
○新しい大学法人形態
 ・ 日本政府が大学院大学を財政的に支援する。
 ・ 国設民営型の運営を目指す。

○国際的運営
 ・ 講義・会議等は英語で行われる。
 ・ 学長は外国から迎え、教授陣および学生は半数以上を諸外国から受け入れる。

■4:国際的連携と産学連携
○海外の一流の大学、研究機関やアジア・太平洋地域の大学、研究機関との連携関係を構築する。
○ 内外の企業との魅力的な産学連携の仕組みを構築する。
○大学院大学の周辺に国内外の研究所や、ベンチャー企業を誘致することで、知的・産業クラスターを形成する。

■5:魅力的な環境整備
○広く快適な住宅や寮の提供
○教授や職員の子弟のための教育環境整備
○学生への十分な奨学金や財政援助制度

(以上、「沖縄科学技術大学院大学概要」より)
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このように、ハッキリ「自然科学系で、研究中心」を謳った大学院大学です。

既に学長として、ノーベル医学生理学賞受賞者である、米ソーク研究所教授のシドニー・ブレナー博士が内定しています。

■「沖縄科学技術大学院大学学長内定者と会談」(首相官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2004/07/13okinawa.html

この「沖縄科学技術大学院大学」、

講義は英語で行う、
教授や学生の半数以上を外国から迎え入れる、

など、国立大学としては画期的な提案がされています。

いや、正確に言うと、「国立大学」ではありません。
独立行政法人なのですが、「日本政府が大学院大学を財政的に支援する」「国設民営型の運営を目指す」とあります。
これまでにない、新しい大学法人形態とあります。

この大学院大学設立の準備を進める組織として、「独立行政法人 沖縄科学技術研究基盤整備機構」が設立され、現在既に活動を始めています。

■「独立行政法人 沖縄科学技術研究基盤整備機構」
http://www.oist.jp/j/index.html

この組織のドメイン「oist.jp」は、設立される沖縄科学技術大学院大学の英語名称である

“The Okinawa Institute of Science and Technology (OIST)”

を意識したものでしょうね。

さて、日本の大学の国際競争力の低さが叫ばれる中、この「沖縄科学技術大学院大学」の構想はなかなか魅力的です。
国が本腰を入れて、最初からこうした「国際志向」の大学を設立したことはありませんでした。
今回のこの構想、徹底すれば、学術研究で存在感を発揮する世界レベルの大学に育つかも知れません。

アジア地域のコアとなるには、沖縄という立地が確かにメリットになる気もします。

ただし、他の点でもこの計画はあまりに特殊すぎて、心配な部分がないわけではありません。

まず、計画のそもそもの発端が、「沖縄振興」であるということです。
そして、他の大学とは一線を画した「特別立法」で規定される組織だということ。

他の高等教育政策とは切り離されたところで、
単なる「地域振興」の域を出ない組織がまた一つできただけ、なんてことにならなければいいなと思います。

また、学生や教職員のための住宅設備なども整備するとあります。
アメリカの大学のようで、素晴らしいと思うのですが、
そうなると、こうした設備が活かされるくらい、本気で海外から研究者や学生を集めてもらわないと困りますよね。
作ってはみたが、利用者ガラガラでした、というのはいけません。

それと、画期的な研究大学を作るのですから、学校の運営部分に関しても、これまでの日本の大学の常識を覆す、アメリカに近い方式を取り入れた方が良いと思います。

教員の半分以上は、海外から呼ぶのですよね。
日本の一般的な大学のように、ちょっとした決めごとまでなんでもかんでも教員の労務にしていると、教員達は研究の時間が十分にとれません。
それでは優秀な人材が集まらないでしょう。

ぜひ、研究をサポートする職員組織の方も、「世界標準」にしてください。
そうしたところについて、従来の日本の大学職員と同じ業務体制を安易にただ入れていると、世界トップの研究大学はやはりできないでしょう。

さて、最後に、この大学院大学自体の開学時期について。

2005年の9月に、まず、研究所が開設されています。
この研究所に所属する主任研究者が50 人に達した時点を目途に、大学の設置申請を行った上で、沖縄科学技術大学院大学は開学される。
…という予定でした。
だいたい、2007年度には開学か、と見られていました。

が、ちょうど本日、こんな報道が。

■「沖縄予算は4%削減 『冷遇』に地元反発も」(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20051221&j=0023&k=200512212386

今回、財務相が出した予算原案で、沖縄関連予算が削減されることになったのです。

その結果、「開学時期も当初予定していた07年から大幅に先送りされることになった」とのこと。
教職員人件費国庫負担額の問題などばかり気にして今したが、こんなところにも教育の大きな動きがあったのですね。

そんなわけで、いったい開学がいつになるのかは不明です。

色々と問題もあるのでしょうが、
でも、個人的には、どんな大学になるのかやっぱり期待するところの方が大きいです。

開学したら、ぜひ、一度見学に行ってみたいですね。

というわけで、今日は、沖縄科学技術大学院大学のことをご紹介しました。

マイスターでした。