<食育を考える(2)> 食育基本法ってどんな法律?

食育の話を書こうとしているのに、インスタントラーメンを夕食にしてしまったマイスターです。ごめんなさい。
滅多にないことなんですが、と、言い訳を書いておきます。

(前回の記事)
<食育を考える(1)> 給食指導の功罪
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50112688.html

今日のマイスターのような、栄養的にも、生活習慣的にも、文化的にもどうかと思う食事をする国民が増え、これはいかんということで作られたのが、

「食育基本法」

です。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「『食育』とは」(財団法人 食生活情報サービスセンター)
http://www.e-shokuiku.com/outline/1_1.html

■「食育基本法」(財団法人 食生活情報サービスセンター)
http://www.e-shokuiku.com/kihonhou/index.html
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-「食育とは、国民一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図れるよう、自らの食について考える習慣や食に関する様々な知識と食を選択する判断力を楽しく身に付けるための学習等の取組みを指します。」-

とのこと。
栄養面、健康面に関する正しい知識はもちろんですが、

「食文化」

という言葉が入っているのが特徴的ですね。

食育基本法の前文にも、以下のように謳われています。

-「社会経済情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で、人々は、毎日の「食」の大切さを忘れがちである。国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。

こうした「食」をめぐる環境の変化の中で、国民の「食」に関する考え方を育て、健全な食生活を実現することが求められるとともに、都市と農山漁村の共生・対流を進め、「食」に関する消費者と生産者との信頼関係を構築して、地域社会の活性化、豊かな食文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率の向上に寄与することが期待されている。 」-

・栄養の偏り
・不規則な食事
・肥満や生活習慣病の増加
・過度の痩身志向

と、問題が具体的です。
一人暮らし男のマイスター、耳が痛いです。
なお4つ目は、法律ではあまり見かけないような内容ですが、これも確かに、食事について正しい理解をを欠いた結果ではありそうです。
これらは、栄養、健康という視点から、食育が今必要とされる理由です。

・「食」の安全上の問題
・「食」の海外への依存の問題

というのもあげられています。
これらは、食糧政策という観点から見た時の、問題ですね。
食の安全については、幸か不幸か、具体的な事故や不祥事がしょっちゅう起きていますので、イメージするのは容易です(う~ん…)。

国内のメーカー企業が問題の原因であるケースと、外国の農業政策などが原因になるケースとがありそうです。
前者の例は雪印(マイスターは未だにメグミルクをなんとなく避けてます)、
後者の代表例はBSEや、ポストハーベスト問題などでしょうか。

「食」の海外への依存、つまり食糧自給率のことを考えるときには、経済の話や外交の話、産地の環境政策の話なども自然と入ってきそうです。

…と、上記のようなことは、いずれも、従来から義務教育の中で教わってきたはずですね。考えてみれば。

栄養のことや自給率のことを知識として学校で教わっても、実際の食習慣が変わるかというと、あまり変わらない。それが、一番の問題であったわけです。

実は、食育基本法の画期的なところは、「学校だけにとどまらない」ということなのです。
「食育」という言葉から、文部科学省が管轄する、文教政策の一つとイメージされるかも知れませんが、そうではありません。

■「世代超え国民運動に 議員立法で今期成立を目指す」(教育家庭新聞)
http://www.kknews.co.jp/kenko/syokuiku/050521_2a.html

↑上記の記事は、法案が成立する前、5月頃のものです。

-「文科省はしつけ・教育の面から、農水省は生産者や安全面、厚労省は病気・健康の面からと、今までは各省庁ごと個別に取り組まれていた。しかし『国民の健康を第一に考えた議員立法で国民運動にしよう』と昨年1月、参議院先議として超党派で提出しようとしたのが最初だった。」-(上記の記事より)

とあります。
そう、食育基本法とは、
縦割りの省庁に、「食」というキーワードで横串を刺し通すような法律なのです。

実際に食育基本法の条文を見てみると、確かに

「子どもの食育における保護者、教育関係者等の役割」
「学校、保育所等における食育の推進」
「伝統的な食文化、環境と調和した生産等への配意及び農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献」
「食品の安全性の確保等における食育の役割」
「教育関係者等及び農林漁業者等の責務」
「国の責務」
「地方公共団体の責務」
「国民の責務」
「食品関連事業者等の責務」
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などなど、あらゆる省庁の担当分野にまたがっているのがわかります。
食育は、学校の中だけで行われる教育ではないということです。

確かに、食育には終わりがありません。
子供のうちだけ学ぶのではなく、成人には成人のための食育、高齢者には高齢者のための食育があるわけです。

食育の目的も、

健康の維持による医療費抑制、
子供と、農業従事者や高齢者とを交流させること、
日本古来の食品を見直し、里山を守ること、
食糧自給率を向上させること、

など、様々な側面があるわけです。
別々に考えていたこれらを、一つの大きな政策として有機的に展開していくということですね。

国を挙げて、「食を学ばないとダメだ!」という体制を作ったわけです。
こんな運動って、なかなかありません。

また食育基本法の前文は、

-「豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある」-

ということにも触れています。
『美味しんぼ』のセリフに出てきそうなフレーズですが、こうした食の文化的な側面にも焦点をあてていくという理念が、またいいですね。

久々に、「これはいい法律ができたな」という印象を受けました。

さて、じゃあこの「食育」の中心となって活躍していくのはどんな人たちか?
具体的に、どんなことが行われていくのか?
ということを、次回はご紹介したいと思います。

以上、食べるの大好き、マイスターでした。

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<関連記事>
・<食育を考える(1)> 給食指導の功罪
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50112688.html

・<食育を考える(3)> 食育の現場で活躍するスペシャリスト達
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50114402.html

2 件のコメント

  • 食育かぁ~~。。
    けっこう私も職業的に興味ありますね。
    最近、映画で
    「スーパーサイズミイ」って映画やって
    これと似たような話でてきましたよねぇ。。。。
    法律でもっとこまかく良い食が評価されるような
    仕込みができればと思いますね・・・
    やっぱり人は便利で早くて安いにいっちゃいますからね。。。

  • スーパーサイズミー、観たんですかー!
    私も、ずっと前から興味はあるのですが、観られないままでいます…。
    あの映画が公開されてから、マクドナルドのセットメニューで、ポテトの代わりにサラダが選べるようになったりしたと思うのですが、やっぱり関係あるのかな?
    ここしばらく、ファーストフードも、健康を意識してますよ、というイメージをメニューなどで出してきてますよね。
    個人的にはありがたいです。