先日アップした
・自宅が学長室…日本発の完全通信制大学院計画、ポシャる
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50104758.html
に関わる情報をいくつか見つけましたので、お知らせしておきますね。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「自宅が学長室のネット大学院不可 文科省の大学設置審」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200511280238.html
■「映像プロデューサー、教員育成…27大学・大学院が来春開校」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20051129ur01.htm
■「大学設置審議会:旭インターネット大学院大学は不可に」(毎日新聞 MSNニュース掲載)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20051129k0000m040075000c.html
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旭インターネット大学院大学が認可されなかった理由を集めてみると、こんな感じです。
「適格な教員数が不足しているほか、個人宅を利用した学長室や会議室では大学運営に支障が出ると判断された。」(Asahi.com)
「『旭』は、ネット上だけで授業を行う初の大学院開校を目指したが、教員数の不足に加え、理事長の自宅2階を校舎にあてる構想も『大学の管理運営上の需要に十分に対応できない』と判断された。」(読売)
「『教員組織や学生に対する支援体制が不足し、安定的な教育を提供できない』との理由で認可されなかった。
(略)
『校舎の自己所有』の規制を緩和する長野市の『インターネットアカデミック特区』を活用し、大学設置基準で必要とされる学長室は理事長宅2階にするなどしたが、対面指導の必要性などを指摘された。」(毎日)
やっぱり、学長室はマイナスだったようです…。
しかしそれだけではなく、
○教員組織や学生に対する支援体制が不足し、安定的な教育を提供できない
○対面指導の必要性などを指摘された
という要因もあったようです。
何がどのくらい足りていないのかは、これらの報道からはわかりません。
当事者である旭インターネット大学院大学の公式webサイトは、不認可報道と同時に、関連のコンテンツをすべてweb上から削除してしまったようなので、今となっては内容の検証もできません。
毎日新聞の記事は、「インターネットによる完全通信制大学院」というコンセプトそのものが否定されてしまった、と匂わせていますが、そのへん、誰もはっきりした情報を出してくれていないのが、残念です。
例えば、旭インターネット大学院大学の関係者のみなさんが、
「私達は、こういう教育を提案したが、文科省に否定されてしまった!
しかし、私達は自信を持っている!
世間のみなさんに、このカリキュラムを問うてみたい! 見てくれい!」
なんて感じで構想を公開してくれたりすると、他の大学関係者や、志ある起業家などの刺激になっていいんですが、ダメかなぁ…。
マイスターも、どんな設立計画を出してダメと言われたのか、気になります。あー、計画書を見てみたいよぅ。
マイスター、個人的には、ネットで授業を行う高等教育機関は支持したいんです!
貧困にあえぐ発展途上国の若者が、
自分の故郷で働きながら夜に地域のメディアセンターに通って
オンラインで日本の大学・大学院の単位を少しずつ取り、
7~8年くらいかけて学位を取る、
…なんて社会が来たら素晴らしいと思うからです。
でも現在ではまだ、それは不可能です。
今は、スクーリングでの筆記試験や、集中講義などを織り交ぜて、なんとか通信教育をしている段階です。
まだ、時間や場所にとらわれない教育というのは、本当の意味では私達の社会では実現不可能なんだと思います。
インフラだけでなく、教える内容や、教育の提供方法など、すべてにおいて、「完全通信制」が超えられていない壁があるように感じます。
そもそも、私達一般生活者も、今はまだそうした「学び」スタイルに対応できないでしょう。
つまるところ、今はまだまだ、完全通信教育は、絵に描いた餅のレベルなんだと思います。
でも、社会は変化していきますから、いつかそうした教育(そのころには「教育」ではなく「学習」と言う言葉が主流になっているかも知れませんが)が実現される日は、間違いなく来ると思います。
旭インターネット大学院大学は、しかし、残念ながらそうした最初の一歩にはなりませんでした。
「完全ネットの教育が早すぎた」というだけではなくて、
会議室が自宅だったり、
ちゃんとした経営組織でなかったり、
教員が不足してたり、
「安定的な教育ができるのか不安」って言われちゃったりするのは、
やっぱりそこかしこに、詰めの甘い部分があったんだろうと思います。
しかしながら、こうした取り組みを積み重ねることで、
大学業界も、文科省も、
それを見ている一般生活者達も、
少しずつではありますが、変わっていくと思います。
どんな方向にどのくらいのスピードで変わっていくかはわかりませんが、見守っていきましょう。
なお、旭インターネット大学院大学と同時に「不認可」が報じられたWAOについても、色々と報道がされています。
「教育研究活動に専念できる教員がほとんどいない」(Asahi.com)
教員予定者が別に仕事を抱えて多忙であるとして、「教育研究の安定的な実施は困難」とされた(読売)
など、こちらも深刻です。
さらに、毎日新聞社が発行している「毎日教育メール」の11月28日号(※この号を持って12月28日号をもって休刊になってしまいます…)には、以下のような報道がありました。
(「大学10校など開設を答申 大学設置審議会」より)
-大学院大学で不可となったのは、WAO、旭インターネットの2大学院大。WAOは、教員予定者17人中16人の報酬が月額10万円未満と低いことなどから、教育研究に専念できないと判断された。他にも取り下げや保留が相次ぎ、永田会長は「総じて準備不足」としたほか、今年度開設された信州大法科大学院など一部で申請に虚偽内容があったことを受け、同省に再発防止策を求めた。-(以上、「毎日教育メール」より。強調部分はマイスターによる)
具体的な報酬額から、どうも教員のほとんどが「本業に結構忙しいパートタイマー」、だったということがわかりました。
厳しめの言い方だと、非常勤教員を専任と偽って申請するのに近い内容だったのかもしれません。
WAOが目指していたのは、アニメーション分野の人材を育成する大学院。
現場のプロを多く教育現場に入れるのは、とてもいいと思うのですが、教育に時間を割けない人がほぼ全員というのはやはり問題に思われます。
しかしこの産業分野も、大学院レベルの高度な教育を受けた、世界で活躍できる人材が求められているのは間違いありませんから、WAOにはまた、計画を練り直して再チャレンジしてほしいです。
あと、上記の毎日教育メールの記事には、以下のような続きがあります。
また、問題の背景として「大学間競争の激化に伴い、学生確保を急ぐあまり、準備が拙速」と異例の苦言を呈した。同省は、2007年度開設に向けた申請での適用を目指し、虚偽判明の場合、一定期間認可しないなど手続きの見直しを検討している。-(以上、「毎日教育メール」より)
無謀で気まぐれなチャレンジャー達の相手をするのに疲れたのか、文科省がちょっとお怒りです。
内容によっては出入り禁止になるリスクもありそうですから、チャレンジングな構想を持ち込みたい人はその分、計画の詳細をスキなく固めていってくださいね。
マイスターも、陰ながら応援します。
以上、マイスターでした。
マイスターさん
コメント有難う御座います。
『参画』はプロジェクト(完全ネット制の高等教育=というよりは学習のコーチングですが、完全な出口主義の実現)へのご参加を意味するものであはりません。マイスターさんが可能な それへ向けてのご支援とお考えください。
今回の事の顛末は、 許認可行政と閉塞した大学改革 といったものの 縮図のようなもので、 色々な問題がありますが、 どのようなことをお知りになりたいのですか?
私が同僚の苦戦を脇で見ていて知り得た、また お話できる 範囲で説明します。
しろだぬき様:
マイスターです。
コメントありがとうございます!
こうしたメッセージをいただけると、ブログをやっていた意義を感じます。
お返事は、しろだぬきさんのサイトに記入させていただきました。
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