学長ブログ対決!

元プロデューサーで、今は大学職員のマイスターがお届けする極めて真面目な教育ブログ、『俺の職場は大学キャンパス』です。
こんにちは。

毎日コンスタントに数百のアクセスをいただいており、しかもその過半数がac.jpドメインのユーザー様という、世にも珍しいマニアックなブログとしてご好評いただいています。

このブログを毎日読んでいても、執筆者のマイスターがどんなご飯を食べたとか、どんな映画を見たとかいう情報は全く得られませんが、

高等教育を中心に、日本の教育を巡る様々な情報を、多角的な視点で眺めることについては、日本一充実したブログにしたいと思い、毎日更新しています。

…と、あらたまって自己紹介したところで、今日のテーマはこれです!

学長ブログ対決!

社長日記でグルメ自慢をしている某IT企業社長や、発行部数世界一のメールマガジンを出している某国首相の例を挙げるまでもなく、

組織のトップが自分の考えを、自分の言葉で世間に向けて発信するというのは、
最も強力で効果的なPR(Public Relations)の手法です。

これは、企業広報プロデューサーだったマイスターの考えです。

自分の好きな食品を作っているメーカーの社長が、どんな考えでその製品を出しているのか。
自分が感動した本を発行している出版社の編集長が、どんな想いを持って、どんな苦労を経てその本を世に送り出したのか。
自分の働いている組織の経営者が、何を考え、私達にどんなことを期待しながら日々過ごしているのか。

複雑化、巨大化した近代組織では、そうしたトップの言葉や想いを隅々まで届かせるのは至難の業です。
組織内の人間ですら、大半はせいぜい、新入社員の入社の壇上でしゃべっているのを聞くくらいですから、消費者にとってはなおのこと。

社内の関係者でも、社内報や外部メディアのインタビュー記事などに、ちょっとしたコメントが載っているのを読む程度しか機会がない人がほとんどだと思います。
ですが、そうした広報誌の記事は、

「そのトップが普段、どんなことに苦労し、どんなことを気にかけているのか」

を知る手だてにはならないことが多いでしょう。

しかし、本当は皆、トップの考えを聞きたいはずです。
トップの想いを、知りたいはずです。

そんな中、便利なメディアが登場しました。
そう、ご存じ、「ブログ」です。

お金や手間がかからないこと、webで即時に公開できることから、
我々のような一般生活者の間にもすっかり定着したメディア、ブログですが、
こうしたメリットは、大組織のトップにとっても魅力的。

多忙なスケジュールの中、深夜の自宅のデスクで、広報部を通さずに更新できるので、

「自分の考えを、自分の言葉で、多くの人に伝えたい!」

と思っていた組織トップにとっては、便利なツールなのですね。

さて、前置きはここまで。
今回は、マイスターが見つけた、

<大学の学長が書いたブログ>

を、ひとつずつご紹介していきます!

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■大阪経済法科大学 学長ブログ
http://blog.drecom.jp/keiho-president/

まずはこれ。
大阪経済法科大学学長・藤本和貴夫氏が管理しているブログです。

「学長 ブログ」で検索したとき、二番目にヒット数が多かったのが、このブログでした。
更新は月に1~2回ペースで、それほど頻度は高くないのですが、なかなか楽しんで運用しておられるようです。

(「俺の職場は大学キャンパス」からリンクさせていただいている、「ひろの日記帳@International Cafeteria」の記事でも、ご紹介されていました。)

本文中に張られた各種のリンクも適切で、なかなか好感が持てるブログだと思います。

なおこの大阪経済法科大学、広報を担当する入試課スタッフの方もブログをアップしておられるのですが、これがまた、いい内容です。

・大阪経済法科大学広報ブログ
http://blog.drecom.jp/keiho-press/

ビジュアル情報の多さ、更新頻度、内容の多様さなど、すべての面で、入試広報のお手本となるようなブログです。
これなら学内関係者も、受験志望者も、頻繁にチェックしようと思うでしょう。
ブログはやっぱり、こういうちょっとフリーなスタイルにすると、強いですね。

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■中谷巌の痛快日記
http://www.tama.ac.jp/blog/diary/

多摩大学学長、中谷巌氏のブログです。

ビジネス本でもヒットが多く、一般生活者への知名度は高いと思われる中谷氏ですが、ブログもなんだか、社会人を意識したような含蓄ある内容が多いです。

更新は月イチで、ご覧の通り、文章量はあまり多くありません。
また、コメント&トラックバック不可能なのも残念なところ。

ただこの多摩大学、実は学長ブログもあわせて、
公式ブログを4本も運営しています。

・多摩ブログ
http://www.tama.ac.jp/blog/index.html

これら4本をあわせると、更新頻度はなかなかのもの。内容も多彩です。
「デリバティブノート」など、ビジネスマンを惹きつける内容がなかなかにくいですね。

そもそも、大学のwebサイトの、トップメニュー6項目のうち1つが「多摩ブログ」だってあたり、気合いの入れ方が違います。
どこにブログがあるのかわからない大学が多い中、この姿勢はなかなか大胆です。

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■無為自然 blog
http://stuwebmin.stu.ehime-u.ac.jp/blog/

愛媛大学学長、小松正幸氏のブログです。

一瞬、個人ブログかと思うタイトル&トップ画像ですが、内容は、学長としての活動そのもの
普段、学長がどんな業務をこなしているのか、その一端がわかっていいですね。

links欄に、しっかり

 「キャンパスマップ」
 「交通アクセス」
 「お問い合わせ」
 「愛媛大学Home」

が入っているあたりも、大学の公式ブログだと思わせます。

また、更新頻度も極めて高く、ほとんど毎日のように更新されています。
これも、ポイント高いですね。

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■倉光学長のblog
http://www.ashiya-u.ac.jp/topics/gakuchoblog.htm

芦屋大学学長、倉光弘己氏のブログです。

いきなり、「ブログ第6弾です」のフキダシ。
え?もう6回もリニューアルしているの!?と思いきや、そうではなく単に6本目の記事なんだとわかります。

というか、これ、厳密にはブログではないのでは…。

  ・学長が原稿書く
 →・広報部とかが、htmlに起こしてアップする

という伝統的な手法で制作された、「学長メッセージ」のページなんだとわかります。
したがって、コメントもトラックバックも付けられません。

ただ、内容が結構おもしろいのと、
ご意見送付先として学長のメールアドレスがズバリ公開されていることから、
まぁ、広義のブログと言えなくもないかな、という気はします。

※ちなみにこれはまったく余計なお世話なのですが、倉光学長は直接ページ上にメールアドレスを載せておられますので、迷惑メールがさぞ多く寄せられていることと思います。それらを学生からのメッセージと勘違いし、一つ一つにお返事を書かれていないかどうか、心配です。

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■星野英紀のインターネット「しゃべり場」
http://free.jinbunshakai.net/eiki/

大正大学学長、星野英紀氏のブログです。

お気づきかと思いますが、このブログはこれまでのものと違って、大学の公式ブログではありません。
つまり、星野氏が個人で開設した、個人ブログです。
マイスターも、偶然見つける幸運がなければ、気づかずにいたかも知れません。

しかし、内容は学長ブログそのもの。
多忙な日々の業務がよくわかります。

読んでいると、東儀秀樹氏(同大客員教授)とか、吹石一恵さん(同大卒業生)
などのお名前も出てきて、「なるほど、大正大学はこういう大学なのか」と、興味を引かれます。

大学の公式コンテンツにしないのは、何かお考えがあってのことなのでしょう。

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■おかしら日記
http://www.sfc.keio.ac.jp/prospective/hqdiary/

純粋には、学長日記ではないのですが、ユニークなのでご紹介します。
慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)にある3学部+2研究科のトップが、交代で記事を書くというコンテンツです。

毎回、編集部がテーマを決め、各学部長と研究科長が、それに沿った文章を寄稿する、という形です。

みな同じテーマで書かなければいけないものですから、競争意識も働くのか、それぞれよく練り込まれた、おもしろいコラムになっています。
学生さんも受験生も、教職員も、自分たちの組織のトップ達がどんな人間なのか、興味深く読めるんじゃないかと思います。

あと、名前が秀逸です、おかしら日記。

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■高橋進の大学便り
http://blog.study.jp/ygutakahashi/
■続・開学日記 八洲学園大学開学、その後・・・
http://blog.study.jp/wada/

上は、八洲学園大学学長、高橋進氏のブログ。
そして下は、学校法人八洲学園大学理事長、和田公人氏のブログです。

学長もさることながら、
学校法人理事長のブログというのは、たいへん珍しい存在。

見ると、学長ブログは1月で更新がストップされているのに対し、
理事長ブログは毎日(!)更新されています。
おそるべし、和田理事長。

この和田氏、もともとは通信制高校を経営していた経営者。
つまり、学長が学者出身であるのに対し、和田氏は元々こういうのが得意な経営者なのですね。

氏が認可を経て八洲学園大学を開学するまでの過程も、以下に日記で公開されています。
大学人は、必見です。

・理事長 和田公人の開学日記
http://study.jp/univ/yashima/univ/est.html

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■堀義人blog「起業家の風景」
http://blog.globis.co.jp/hori/

株式会社グロービス代表、堀義人氏のブログ。
2006年4月から開校される、「グロービス経営大学院大学」の経営者ということになりますね。

現職の学長とは位置づけが異なりますが、大学のトップになる人ということで、ここでご紹介してみました。

企業家とは言っても、もともとグロービス・グループは人材開発などを手がける企業です。
堀氏のブログを読んでみると、氏のスケジュールは、そんなに他の学長と劇的に違うわけでもないな、と思われるのではないでしょうか。
こうした雰囲気が読みとれるのが、ブログの醍醐味です。

しかし堀氏、やはりMBAを持った若い起業家らしく文章は明瞭で、自分の考えがしっかり表現されていますね。
若い社会人などからは、好感を集めるでしょう。
コメント、トラックバックも多く集めています。

そのあたりは、他の学長と雰囲気が違います。
上記でご紹介した八洲学園大学理事長、和田公人氏に近いかも知れません。

大学が正式に開設されたら、大学経営の様子もブログに書かれることでしょう。
堀氏がどんな考えを持って経営に望むのか、ちょっと楽しみです。

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というわけで、学者出身の学長から、起業家社長まで、様々な学長のブログをご紹介しました。

こうして見ると、某首相の「人生色々、会社も色々」じゃないですが、
大学のトップも色々ですね。

学者らしく、しみじみと学問の奥深さを語るものから、
学長としての多忙なスケジュールを紹介するもの、
大学経営についての熱い想いを語るもの…。

ブログには、トップの人柄や、考え方が出ます。

では最後に、とっておきのブログをご紹介。

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■スギヤマスタイル
http://www.sugiyama-style.tv/

すいません、

昨日に引き続き、

オチに使ってしまいました。

デジハリ学校長、デジタルハリウッド大学学長、
そしてデジタルハリウッド大学大学院学長を務める、
杉山知之氏のブログです。

他の学長とは一線を画したデザイン。
クリエイターを養成する学校だからこその、このノリです。
あらゆる意味で、大学の経営者とは思えません。

このブログ(と、プロフィール欄の写真)を見ると、杉山氏はただのぶっとんだクリエイター?なんて思われるかも知れませんが、実は

 ・大学理工学部の助手
→・MITメディア・ラボ客員研究員
→・国際メディア研究財団・主任研究員
→・大学の講師

など、かなりアカデミックな経歴の持ち主なのですよ。
広報戦略的な意図があって、こうしたブログを運営しているのでしょう。
(本人のキャラクターもあるとは思いますが…)

良くも悪くも、こうしたアカデミックな空気がブログによって消されています。

ビジュアルを必ず入れる、
毎日更新する、
リンクを適切に入れ込む、
さりげなく学校の宣伝をする、

などなど、大学トップのブログとしてかなり充実した作りになっています。
さすが、デジタルのプロを育てようとしているだけのことはありますね。

「学長 ブログ」の検索で、最も多くヒットしたのは、何を隠そうこのブログです。

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ブログのご紹介は以上です。

本ブログの中でも何度か申し上げてきたことですが、
リアル社会での競合組織と、web上での競合組織は違います。

往々にしてトップ企業は、自社よりシェアが低い企業を「目下の存在」だとして甘く見ます。
一方、下の企業はトップを追い上げるために、非常にユニークで斬新なコンテンツをどんどん考案します。

その結果、シェアの低い企業の方が、web上ではアクセスを集めたりするのです。
その状態が長く続けば…
実際の広報やPR効果に影響を与え、ひいてはビジネスでも思わぬ逆転劇が起こるかも知れません。

今回、大学のサイトを調査しましたが、旧帝大クラスの大学や伝統ある有名私立大学には、学長ブログなんてほとんどありませんでした。
それに対し、比較的若い大学のトップが、自らの考えをブログで発信していたように思います。

最初に申し上げたとおり、トップの考えを組織のみなが常に読んでいるというのは、大変大きいことです。
例えば組織が危機に瀕した時、毎日こうしたブログで考えを述べていくのと、学内広報でとってつけたような文書を配るのとでは、構成員達の受け取り方がまったく違うはずです。

学長ブログを、単なるゆとりコンテンツだと思っていると、後々に組織力の差を付けられるかも知れませんよ?

以上、「対決」と銘打ちながら、勝敗を決めてない記事ですみません。
強いて言うなら、「自分の勤務先の大学」と「ブログを公開している大学」のどちらがステークホルダーに対してメッセージを強く伝えているか、ご自身で勝敗を考えてみていただければと思います。
(と、強引に逃げてみる)

自分にも大学公式ブログを書かせてほしいと強く願うマイスターでした。

3 件のコメント

  • 八洲学園の和田です。
    どこからのトラックバックかと思いきや、なかなか有意義なブログで関心しました。学長のブログの更新が止まっている指摘、ごもっともです。更新するように依頼しておきましたが、どうなることやら・・・・
    他大学のブログは見たことがなかったですし、せっかくでしたが、今回も見ませんでした(笑) 当然、ほとんどの大学が持っていると思ったら、以外と少ないんですね。私の中ではブログはもう古いコンテンツで、次に移りたいんですが、毎日続けてると止めるタイミングが難しいですね。

  • マイスターです。
    和田さま、コメントありがとうございます。
    おっしゃるとおり、ブログは止めるのが大変ですね。
    pod-castingで映像を配信できたり、組織内のSNSを構築したりと、新しいメディアは次々に登場しますが、ブログの仕組みはシンプルながら良くできていると思います。
    私のような部外者でも、簡単にお考えを聞くことができますしね。
    でも、和田さんの「次」も楽しみです。