群馬大学医学部: 学生受入課広報担当者からの回答

学校に関する問題を追うマイスターです。

このブログにやってくる方の検索ワードで目立つのは、「群馬大学 医学部 不合格」です。
どれだけ、この事件が世間の注目を集めているのかがよくわかります。

【教育関連ニュース】——————————————–

・群馬大学からの回答:7/22以降
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50248531.html
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上記は、かつてマイスターが書いた記事です。

群馬大学医学部の入試において「年齢を理由に」不合格にさせられた、と主張している主婦の方がいる。
この報道に対して、本ブログ「俺の職場は大学キャンパス」だけでなく、
多くの教育関係ブログが、様々な意見を提示しました。

そこで以前マイスターは、群馬大学に公開質問状を出し、群馬大学学務部 学生受入課入試広報係長の方から回答をいただきました。

その内容は、群馬大学からの回答:7/22以降で詳しくご紹介いたしました。

マイスターがそのとき送った質問状は上記のページに掲載いたしましたが、
そのとき群馬大学より送られてきた回答を今一度、以下に、一文字も修正しない状態で再度ご紹介します。

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<2005.7.12>

 2005年7月12付け,g-admission宛にご質問賜りました佐藤 薫氏に係る民事訴訟につきましては,

現在裁判に向けて答弁書を作成中でございます。7月22日,裁判所に提出することとしておりますので,

現在公表できません。悪しからず御了承ください。本学の答弁書の内容等は,法廷の場で明らかにされ

ると思います。

 なお,裁判開始後大学のホームページ等に掲示することとなりますので,そのおりにご参照ください。

(群馬大学学務部学生受入課入試広報係長様よりのメール)
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ここではっきり、「裁判開始後大学のホームページ等に掲示することとなります」と、この入試広報係長様は書かれています。

このメールは群馬大学の事務の代表アドレスなど、群馬大学関係者と思われる複数のアドレスにもCCで送られていますので、係長様が独断で決めた回答などではなく、大学が公式に決めた回答だったのでしょう。

さて。

このメールをいただいたのが7月12日。

裁判所に答弁書を提出するのが7月22日で、裁判が始まったら、大学のwebサイトで情報を公開すると書いてありますが、現時点でサイトには一切、裁判に関する発表がされていません。
いくらなんでも時間がかかり過ぎです。

マイスターはこの間ずっと群馬大学のwebサイトをチェックしてきましたし、本件に関心を寄せておられる他のみなさんも同じでしょう。

「あれ? webサイトで情報が公開されると言っていたのに、おかしいな、遅いな」

と、疑問に思われていることでしょう。

そこで、マイスターは、再度この広報係長様に、質問メールを送りました。
内容は、

○7.12の公式回答で、「裁判開始後、webにて情報を掲示する」とお答えいただいたが、
 その後、群馬大学のwebサイトには、裁判に関する情報は一切掲載されていないままである
○裁判開始後、ということだが、裁判の日程が決まっていれば、教えて欲しい

というものです。

その結果、返ってきた回答は、以下の通りです。
全文、一文字も修正せずに転載します。

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<2005.11.4>

日程につきましては,第1回口頭弁論(2005.7.29)及び第2回口頭弁論(2005.10.28)が済みました。第3回口頭弁論は,2005.12.9の予定です。

プレスリリースにつきましては,現在コメントできる事柄がありません。

なお,地元紙の記事があります。産経新聞,東京新聞,毎日新聞及び朝日新聞でいずれも2005.10.29です。ご参照ください。

(以上、群馬大学学務部学生受入課入試広報係長様からのメール)
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あれ?

この方は、以前確かに、

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現在裁判に向けて答弁書を作成中でございます。
7月22日,裁判所に提出することとしておりますので,現在公表できません。

悪しからず御了承ください。本学の答弁書の内容等は,法廷の場で明らかにされると思います。

なお,裁判開始後大学のホームページ等に掲示することとなりますので,そのおりにご参照ください。
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と、回答をしています。
で、この回答メールを一緒に添付した上で、今回、質問を送ったのです。

「プレスリリースにつきましては,現在コメントできる事柄がありません。」

とありますが、群馬大学は

「裁判開始後」に、「大学のホームページ等に掲示することとなる」

と、公式に回答しているのです。
コメントできる事柄がありません、というのは、言い訳にもなっていません。

こういうとき、体勢を取り繕うためだけに出た「嘘くさい言葉」というのは、すぐにわかります。

「コメントしたくない」
「なるべく世間に波風立てたくない」
「情報を公開せず、静かに忘れられて欲しい」

の間違いでしょう。

言い方は悪いですが、結局、以前のメールは、
その場しのぎの方便に過ぎなかったということでしょうか。

これは、「お役所的」と言われる態度の中でも、最もやってはいけない、

・とりあえず
・とりいそぎ
・とりつくろう

という行動であるように、マイスターには思えます。

結果的に回答がもらえるかどうかはともかくとして、ずいぶん「その場しのぎ」の対応をするんだな、という印象をマイスターは受けました。

国立大学は、独立行政法人になったのではなかったのでしょうか。

独立行政法人になるにあたり、群馬大学が平成15年9月に文科省に提出した、
「中期目標・中期計画の素案」
には、達成すべき中期計画として、以下のような内容が挙げられています。

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2 情報公開等の推進に関する目標を達成するための措置

1) 利用者の立場に立った分かりやすい大学情報を積極的かつ適切に提供するため、新たな広報紙の発刊を検討する。
2) 組織的に情報公開に対する意識の高揚を図るとともに、積極的に情報公開に務める。
3) ホームページ電子ジャーナル等高度情報社会に対応した情報発信・受信システムを総合メディアセンター(仮称)等との連携・支援の下に拡大充実させていく。学内研究紀要等の電子化を推進し、学外からのアクセスを通じて、本学研究情報を公開する。
4) 一般市民、地域社会各層の声を的確に反映させる双方向的システムを開発し、発展させていく。

「群馬大学 中期目標・中期計画の素案」より
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「学生受入課」の、「入試広報」の担当者達がこのありさまですから、残念ながら群馬大学は、情報公開というものをおよそ理解していないのだと思われます。

公費で運営される非営利組織においては、情報は、「できるだけ公開してあげる」のではなく、国民に向かって、「必ず公開せねばならない」性質のものなのです。

広報は、社会に向かって開いた窓です。
その一言一言が、その大学のすべてを代表すると考えてください。
担当部署の意識が低すぎると言わざるを得ません。

残念ながら、群馬大学という組織の姿勢が、偶然あいた窓から見えてしまいました。

さて、
産経新聞、東京新聞、毎日新聞、朝日新聞の2005.10.29の地方版記事に掲載されているからそっちを見ろ
と言われてしまいましたので、マイスターとしては、これらの記事を見ないわけにはいきません。
(しかしこれ、つくづく、自ら情報発信する姿勢ではないですね。お役所が、生活者を呼びつけて指導する姿勢です)

マイスターはあいにく東京暮らしなのでこれらの紙面を手に入れることはできませんが、
大学職員はみな、「大学図書館」という素晴らしいアドバイザーを持っていますよね。
この特権、利用しない手はありません。
さっそく、自分の勤務先のライブラリアンにお願いして、これらの記事の複写取り寄せを手配しました。
来週中には入手できると思いますので、届き次第、ご報告します。

さらに朝日の紙面だけは、オンライン記事検索システム上にて、読むことができました。

閲覧できたのは、2005年10月29日の朝日の朝刊「群馬県央」版の記事です。
わずか251文字の短い情報ですが、書かれていた内容は、要約すると以下の通りでした。

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記事名:「判例を示して群大側が反論 医学部入試訴訟 /群馬県 」

記事の要点:
○入学許可を求めた訴訟の口頭弁論が28日、前橋地裁(東條宏裁判長)であった。
○群馬大学は、大学入試や資格試験の合否判定が「司法審査の対象外」とされた判例を示し、「(裁判所が審査する)法律上の争訟にあたらない」という従来の立場を強調した
○原告の女性が公開を求めている面接の結果や採点基準については、「極めて高度な専門的性質や教育的見地を有する行為」として、開示にはなじまないと主張した
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以上が、朝日の報道の骨子です。

マイスターは法律の知識に乏しいので、詳細はよくわからないのですが、

○大学の入試結果うんぬんは、裁判で争われるべきものじゃない
○どういう理由で不合格にしたか、その基準などはすべて、教育的で専門的なことなので、一切公開できない

と、群馬大学は主張している…のですよね?

法律のシロウトであるマイスターには、結局のところ群馬大学は、

自分達の行動の根拠を、裁判で明らかにするつもりはいっさいない

…と言っているだけのように思えます。

今回、問われているのは、

「筆記試験の合格点は十分であったにもかかわらず、佐藤薫氏を不合格にしたのは、
 いかなる根拠、評価基準によるものか」

を明らかにすることではなかったのでしょうか。

web上の議論を見る限り、多くのブロガーや、それに対してコメントを寄せてくれた大学関係者の方々は、大学に対して、こうした明確な回答を期待していたはずです。

ただなんとなく若くないから、
教育上、面倒くさいから、
実習を手配する大学側にとって不都合だから、

そんな理由で不合格にしたのか?

それとも、
公表されているアドミッションポリシーに従い、
公平で明確な基準に従い、
憲法で保障された権利を犯すことなく、

誰もが納得できる理由で、不合格としたのか?

そこが知りたいのです。

誰がなんといおうと、群馬大学には、説明責任があるとマイスターは考えます。
これは大学という機関が、高度な社会的存在であるために、避けて通ってはいけない試練だと思います。

他の大学の関係者も、刮目して、今後の群馬大学の行動に注目していただきたいと思います。

以上、動きがあり次第お伝えします。
マイスターでした。

8 件のコメント

  • トラックバックありがとうございました。
    ひどいですね。
    最初の回答がまずかったのでしょうけど、
    居直ってしまった感すらありますね。

  • マイスターです。
    コメントありがとうございます。
    ほんとに、どうかと思います。
    もしかすると、学内でもあれこれと意見が紛糾していて、大学としての公式な行動がなかなか起こせない、というのもあるかもしれませんね。

  • 誰を合格者にするかというのは大学の判断です。
    当然にその責を大学は一切担います。
    米国の私立大学などには同窓生子弟入学、寄付金入学という制度もあります。
    以下は私の推論です。
    学生を1人前の医者に育てるには、教育にかかる経費が年1000万円はかかると言われています。その経費を個人が負担する仕組みであれば、入学を希望する者を受け入れる(適正規模の定員は厳守の上ですが。)ことは出来ると考えられます。
    このケースは、学生の教育に多大の税金を使用することになります。
    税金の適正利用を考えると、医師としての在職期間が非常に短いと想定される場合に、より長く社会に貢献できる者を医師として育てたいと考える方が理にかなっていると考えられます。

  • ktさま:
    マイスターです。いつもコメント、ありがとうございます。
    過去の記事で、その辺にも触れたのですが、改めて意見を申し上げますね。
    ktさんがお考えの説は、もっともなのですが、そうした理由で不合格にされることがあるなら、アドミッションポリシーに明記すべきではないでしょうか。
    本来、アドミッションポリシーこそ、ktさんがおっしゃるような、大学としての考えを表現する場所であったはずです。
    言ってみれば、「大学と社会が契約する際の、契約条件」のようなもの。それが軽視されているのは、見過ごせません。
    そもそも、それ以前の問題として、群馬大学医学部は、webサイトにて、
    「年齢で不合格にすることはありません」
    と、事前に発表しているのです。
    http://www.med.gunma-u.ac.jp/buisiness-offices/educational-affairs/admissions/undergraduate/faq.html
    どのように学生を選ぶかは確かに大学の責任ですが、それは、公表している内容を覆していい理由にはなりません。
    また、事前に公表していた選抜方法を無視し、アドミッションポリシーにない指標で学生を選んでいい理由にもなりません。
    これは、群馬大学の教育観の問題ではなく、単に、社会的に契約を守る組織かどうか、という問題だと思います。

  • マイスターさん
    遅ればせながら、トラックバックありがとうございましたm(_ _)m
    私大は早くも入試シーズンに入り、私がアルバイトをしているところにも、不合格者からの不合格理由の問い合わせや、クレームが入ったりしています。
    中には、他大学で不合格が覆った友人もいるんだ、と脅しのような言葉を吐く人もいました。(覆した大学があることの方にびっくりしましたよ!)
    群馬大の件は、話を聞いた当初は、大学関係者として、何やってんだ!と思うことしきりでしたが、この問題は、大学全入時代、生涯学習時代の大学における入試の役割を、改めて考える必要があるんだという警鐘を鳴らしているんだ、という風に感じるようになりました。
    対岸の火事ではないですね。上辺だけの、言葉だけの「アドミッションポリシー」を掲げているところ、まだまだあるんじゃないかと思います。

  • 公平で明確な基準に従い、
    憲法で保障された権利を犯すことなく、
    誰もが納得できる理由で、不合格としたのか?
    と、書いておられますが、憲法上の権利はなんら置かされてナイト思います。
    教育の権利も、平等権もです。
    すべての人権は、内心の自由をのぞいて制限されます。しかもその判断基準は人権の内容性質に応じてきわめて多様。
    今回も、そうです。
    しかもこの主婦、学士編入なんでしょう?
    そういう形式の入試で少数しか合格できないのに、平均点より10点上なんていうのは落とされても少しも不思議ではありません。
    1点の重みがちがうのです。
    しかも、これはいわゆる部分社会の法理があてはまるところ。
    何でもかんでも明らかにすることを法は要求しません。それは人権尊重の基本です。

  • 竹田さん、法律の勉強が足りませんね。
    竹田さんの推測も重大な事実誤認をしています。
    >すべての人権は、内心の自由をのぞいて制限されます。
    公共の福祉が人権制限する時、合理的かつ最低限の場合に限られるのです。
    >しかもその判断基準は人権の内容性質に応じてきわめて多様。
    >今回も、そうです。
    憲法には、教育の機会均等及び職業選択の自由の
    規定があります。この権利を制限する場合も、
    合理的かつ最低限である必要があります。
    その中身を、群馬大学は説明していません。
    >しかもこの主婦、学士編入なんでしょう?
    違います。センター試験も受験した、一般受験です。
    >そういう形式の入試で少数しか合格できないのに、平均点より
    >10点上なんていうのは落とされても少しも不思議ではありません。
    ここで言う平均点とは、合格者の平均点です。
    全受験生の平均点ではありません。
    (つづく)

  • (つづき)
    >1点の重みがちがうのです。
    この主婦より低い点数の受験生が合格しているのです。
    東京新聞のサイトをよく読んでください。
    >しかも、これはいわゆる部分社会の法理があてはまるところ。
    いわゆる、富山大学事件の事でしょうか。
    富山大学事件の場合と比較しても、群馬大学の行為は、
    「部分社会の法理」が採用できないところです。
    なぜなら、群馬大学は、「一般市民法秩序につながる」
    入学認定の段階で、今回の不当な判断を実行しているのです。
    >何でもかんでも明らかにすることを法は要求しません。
    >それは人権尊重の基本です。
    今回の群馬大学の事例は、近代国家の鉄則である、
    教育機会の均等および、職業選択の自由に深くかかわる事です。
    法も、明らかにする事を要求する分野です。