東大が戦略コンサル導入 その真意は?

大学院1年生の終わり、就職活動をスタートさせたときに、コンサルティング業界に興味があったマイスターです。

大学院で取り組んでいた研究を、非営利組織向けのコンサルティングにつなげられないものかと考えたのです。
当時はコンサルティング会社(コンサルティング・ファームといいます)のことがよくわかっておらず、とりあえず「○○総研」と名のつくところを片っ端から受けました。

実際には、「○○総研=コンサルティング」というわけではありません。
しかも、「大和総研」なんて、実は金融系のことばっかりなので、マイスターには居場所がありません。知らずに説明会に行ったら、そのまま連続して筆記試験を受ける羽目になり、パズルのような数理問題を解かされ、よくわからないままに撃沈したのが、今となっては懐かしいです。はい。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「学校向けコンサルティングについて考えてみます 東大がコンサル導入」(AllAbout)
http://allabout.co.jp/career/consultingfirm/closeup/CU20050331A/index.htm
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けっこう前に見つけた記事なのですが、興味深い内容でしたので、ここでご紹介しておきたいと思います。

「マッキンゼー&カンパニー」は、世界最大級の戦略系コンサルティング・ファームです。

コンサルティング企業にも「総合系(会計系)」、「IT系・ベンダー系」、「人事など、分野ごとの特化系」「リサーチ主体系」など色々あるのですが、
マッキンゼーは本来、

「トップマネジメントレベルの問題解決」

を主体とする、戦略コンサルティングの会社なのです。
高度な論理構築力を武器にした少数精鋭のコンサルタントが、事業の統廃合といった、組織全体にわたるコンサルティングを行うという事業スタイルです。

マッキンゼーやボストン・コンサルティンググループといった世界的な戦略コンサルティングファームの権威は絶大です。
こうした企業には、MBAを持ち経験も豊富な、世界レベルの優秀なコンサルタントが在籍しています。

その分、彼らに問題解決をお願いすると、きわめて高額な料金がかかります。多分。いや、絶対。

さて、そんなマッキンゼーが、東京大学の事務効率化を受注したとのこと。
それだけでも、国立大学の独立法人化を象徴するような出来事です。
コンサルタントを入れるなんて、国立大学も、企業並みになったんだなぁ…と。

と、ここでふと考える。

-国立大学が独立法人化したのをきっかけにして、お役所的な考えからぬけだしたいとのこと。事務の重複や稟議の簡略化、組織の統廃合などで、事務量を3割削減するとのことです。
表に出ているのは事務の話だけですが、戦略構築が得意なマッキンゼーに依頼していることから、大学全体の改革の話も裏でうごいているのかもしれません(これは勝手な想像ですが・・・)-
(以上、AllAbout記事より)

AllAboutのガイドの方は、上のように書いています。
確かに、マッキンゼーのようなお金のかかるコンサルティング・ファームに、事務の効率化だけを依頼するというのは、費用対効果として疑問が残ります

世界のトップ企業達を相手に大規模なコンサルティングを行い、巨額の対価を稼いでいるマッキンゼーとしても、事務の効率化の相談に乗るだけというのは、商売としてあまりメリットがないはずです。

そう考えると、

「頼んでいるのは、事務の効率化だけじゃないんじゃない?」

という推論も、あながち不自然ではないと思われるのです。

他にも、コンサル業界ブログで、↓のような記事を見かけました。

・「東大、マッキンゼーの指導で大学事務作業を3割削減」(consultantnavi.com)
http://www.consultantnavi.com/archives/17685917.html

やはり、マッキンゼーに事務の効率化を依頼するということを訝しく思っておられるようですね。
この記事で書かれているように、絶対に、事務の効率化には情報システムが絡むわけですから、「事務の効率化」というなら、情報ソリューション事業を持っている企業に依頼するのが、本来、一番無駄がないはずです。

例えば、

 プライスウォーターハウス・クーパーズを買収したIBMとか、
 情報処理サービス最大手のNTTデータとか、
 ITソリューションに力を入れている野村総研とか、
 ハードまでどどーんと入れるなら富士通とか…。

でも、そうではなくて、わざわざ高価で、ITソリューション事業部を持たないマッキンゼーを入れるのは何故か?

他の戦略立案も受注しているのか?
それとも、何か受注するほどのメリットが他にあるのか?

で、調べてみると、ほかならぬマッキンゼーの日本webサイトで、この東大プロジェクトのことが紹介されているではありませんか。

・「非営利分野におけるプロジェクト」(McKinsey&Company)
http://www.mckinsey.co.jp/services/probono.html

-2004年、全国の国立大学は、法人化という大きな転換期を迎えました。法人化後の大学は、国民から委ねられた貴重な資源によるあらゆる活動内容を、厳しい社会の評価にさらされることになります。大学の教育・研究活動をサポートする事務部門についても、業務内容・プロセスが本来の目的に十分適合しているかを検証し、業務の大幅な効率化を図る必要性が高まっていました。

東京大学は、日本を代表する教育機関として、大学改革のモデルたるべく、事務部門の総合的な業務見直しに着手するところにありました。マッキンゼーは、大学事務組織が抱える本質的な課題とその解の方向性について、総長・理事の方々と議論を重ね、業務効率化・組織活性化に向けた一大改革をサポートすることとなりました。

(略)

プロジェクトは、約30人の東大教職員の方々と、マッキンゼーのコンサルタントとによる共同チームが中心となって進められました。

(略)

このプロジェクトを通じて、東京大学では、事務業務の効率化、活性化に向けた体制が整いました。また、ここで得た成果をもとに、業務改善を継続的に全学展開するため、現在も総長のリーダーシップのもと、教職員の方々が改革に取り組んでいます。-(以上、McKinsey&Company webサイトより)

上記を読んだ限りでの推測なんですが、

○マッキンゼーのコンサルタントと東大の教職員が、共同で問題の分析と改善案策定にあたった。

  ↓

○このプロジェクト終了時点で、今後教職員が事務業務の効率化や活性化に向けて継続的に取り組める「体制」が整った。

というところがこのプロジェクトの肝なんじゃないでしょうか。

つまりどちらかというと、マッキンゼーに問題を解決してもらうというより、

「自分達で問題を解決できる組織にするため、組織改革のために、
 外部の声を一種の『外圧』として利用する」

というのが、このプロジェクトの本当の目的だったんじゃないかなぁ?
とマイスターは感じるのです。

日本の企業がコンサルタントを入れる最大の理由は、おそらく、

「君達の気持ちもわかるけれども、
 大金をかけて入れたソトのコンサルタントがこう言っているんだから、
 ちょっとやってみようや」

と社内を説得するためなんじゃないかと、マイスターは以前から思っていました。

社内の人間が具申しても通らないことでも、
同じことを「外の意見」として聞くと、たちまち採用される。
みなさんにも、そんな経験、ありませんか?

マイスターは企画提案を仕事としていたから、依頼を受ける方としても実感があります。
「外の意見」を求めるために、企業の広報部が自分達に仕事を依頼することが、なんと多かったことか。

自分達で上司に提案しても聞き届けられないのに、どこの馬の骨かわからないマイスターのような外部の人間が提案すると奇抜なアイディアも採用される、なんて企業さんは結構あったのです。
(全部、純日本産の企業です。外資系はこんな無駄なことにお金を使いません)

「君の気持ちわかるよ、俺達も気は乗らないけどさ、でもお金をかけちゃったし、しょうがないよね」
という対面作りのため、社内の人間関係を崩さないため
に、大金をかけるのですね。

こうして書いてみるとつくづく日本人って不思議ですが、同じ日本人として、なんとなく想像できる光景ではあります。

マイスターの勝手なイメージですが、東大の場合、きっと日本で一番、がんこで昔かたぎな教員がいると思います。

「事務処理の効率化」なんてプロジェクトに関心を示さない、
大学のガバナンス改革なんて反対だ、

そんな空気も、学内にはあるのではないかと思います。
いきなり全学あげて改革を進めようとしても、そうした教員達が、協力的になってくれるとは考えにくいですよね。
まして事務員が主導権を握るような事務処理改革なんて、面白くないと思うでしょう。

そこで東大は、「世界的な権威」であるマッキンゼーに大金を払い、
「外部の意見」として、改革の最初の一歩を実行しようとしたんじゃないのかな、

というのが、マイスターの予想です。
マッキンゼーは、高価な起爆剤というわけです。

仮に、今回、対価に見合う業務改善ができなかったとしても、
結果的に「改革の雰囲気」「改革の体制」がちょっとでも学内に生まれれば、
東大としては第一の目的は達成だったんじゃないでしょうか。

一方マッキンゼーにとっても、今回、東大のトップ人や教職員達と共同でプロジェクトを進めたことで、コネクションが生まれたと思います。
大学という旧い組織のガバナンスもよくわかり、貴重なノウハウが得られたことと思います。

何よりこの独立法人化のタイミングで「東大」の業務改革を請け負ったという事実が、
今後、他の国立大学に対して、最強の営業ツールになると思います。

コンサルタントにとって一番重要なのは、己のブランドを確立することですから、その意味で「最初にトップ企業を抑える」というのは、効果絶大ですよね。

それに、旧い大学組織ほどこうした実績をありがたがって重視するということも、マッキンゼーは計算に入れているのでしょう。
さすが、世界トップクラスの戦略集団なだけはあります。

なんてことを、これらの記事から考えました。

「ぜんぜん、大学改革が進まないよ!」とお嘆きの関係者の皆さん、ためしに、
コンサルタントを学内向けの飛び道具として使ってみるのはいかがですか?

あまり大規模な依頼をすると、場合によっては数千万から億単位の金額を取られたりしますが、権威に弱い学者を納得させるのであれば、超一流のブランドコンサルタントを入れることをオススメします。

それなら面倒な教員を2、3人クビにして、自力で改革した方がいいという大学もあると思いますので、その辺はお好みで。

以上、マイスターでした。

5 件のコメント

  • >社内を説得するため
    はじめまして、ブログランキングから飛んできました。
    私はただの一学生にすぎませんが、マイスターさんの仰ることは
    正解でほぼ間違いないように思います。
    億単位のお金を注ぎ込んででもコンサルに頼む利点は、根本的なアドバイスはもちろんのこと、社内での対立を一つの方向にもっていく為にあるととあると企業幹部に聞いたことがあります。世界中に拠点をおき、膨大な情報を手にプレゼンをする外資系コンサルの手にかかるとどんな理論をもってでも太刀打ちができないのだそうな。広告費にでも費やせばいいのにと思っていましたが、意味があるからこそ存在しているんでしょうね。

  • ところで、11月1日の記事をみてまったりとした雰囲気に癒されました(笑)。そういえば、東大は教育学部に大学職員養成(?)のための新しい学科を設置しましたね。ちょっと興味があります。
    長々とすみません。また遊びにきます(^^)。

  • なるほど、コンサルと大学の関係がよくわかりました。なんかちょっと前に流行った格付け会社と大学の関係に似てますね。あれも学内改革が本丸で、そのために格付けを利用したという大学があったようです。
    ところで、いつか機会があれば大学会計制度についても取り上げてください。あの摩訶不思議なシステムは、大学の実態を隠蔽するための陰謀としか私には思えません。

  • マサコさま、マイスターです。
    コメントありがとうございます!
    社内の意見を統一するというのは、大変な労力がかかるものなのですね。
    一般に、ITベンチャー企業などは創業者がメッセージを常に発信しているからか、社内のビジョンが明確であるように思います。
    巨大な企業体や、歴史のある業種などでは、意見集約のためにコンサルタントが活躍する場面があるのでしょうね。
    11月1日の記事、お褒めいただいて恐縮です。
    1年の節目ということで、気分で書いたらああなりました。
    大学経営に関する大学院の話題も、今後、増えていくと思います。
    ぜひまた遊びに来てください。

  • カラさん、こんにちは。
    いつもコメント、ありがとうございます。
    大学会計制度は、私も勉強せねばと思っているシステムのひとつです。
    一応、社会人として企業の財務諸表に関する基礎知識は持っていたつもりですが、大学の会計は実に摩訶不思議で、まだほとんど理解できていません。
    今度、大学の財務に関する勉強会に参加するので、その後に何かご紹介できればと思います。
    ご指摘のように、問題点もたくさん隠れていると思います。