前の会社で、企画を企業に持ち込むとき、前もってその相手先企業の「競合」の様子を必ず調査していたのですね。
しかし、マイスターが勤めていた企画会社には、毎週、あらゆる業種の企業から話が持ち込まれていましたから、よくわからない業界とか、あるわけです。
クルマとか清涼飲料とか家電とかなら、生活の中でもなんとなく勢力図をイメージできるのですが、中には「なんだそりゃ!?」みたいな業界も。
そこでまず、最新の「業界地図」を見て、その企業にはどんな競合がいるのか、各社の事業にどんな差があるのか、といった予備知識をざっと入れるわけです。
アタマの中にこうしたマップが入ると、その他の情報もイメージしやすくなるというわけです。
売上高をもとに業種ごとの勢力図を表示しているのがほとんどですが、
「店舗数(小売業など)」
「総資産額(金融業界など)」
「販売台数(メーカーなど)」
のような数字も、勢力マップの中に書き込まれています。
そんなわけで、見やすくレイアウトされているし、大切な数字は大体入っているしで、何かと便利なのですよ、業界地図。
で、業界の動向を調査してクライアントとのミーティングに臨むわけですね。
「シェアや売り上げで自社より上の企業」がどんな広報をやっているのか、みなさん、とても気にされます。
さすが、ビジネスマン。
その反面、みなさん、自社より「格下」の企業の動向には、目もくれません。
ちょっとゆがんだ自意識(笑)の結果なのでしょうか。
実際には、シェアの低い新興勢力の企業の方がむしろ画期的な広報や宣伝をしていたりするのですが、
「ウチはそんな程度の低いことをわざわざ真似する必要はない」
「あそこは…ねぇ(冷笑) まぁ、ウチはあそこまで追い詰められてないから」
みたいなことをおっしゃる。
業界トップ企業が何かやると、たいしたことない取り組みでも「さすが○○さん」といって一斉に真似するのに、不思議です。
ビジネスマンの習性なのでしょうか。
ともあれ、そんなときに便利な業界地図。
マイスターは、ふと目に留まると、買います。
(おかげで、家に何冊もあります…。)
普段、マメに経済ニュースをチェックしていなくても、こうした業界地図をちょくちょくおさえておくと、結構、色々な業界の動向を認識できるので、今でも重宝しています。
以上、長い前フリ。
今回、そんなマイスターの業界地図人生(?)に、激震がっ!
その原因は、これ↓。
図解革命!業界地図最新ダイジェスト (2006年版)なんとこの本、
「大学業界」
という項目があるのですよ!
マイスターの記憶によると、この出版社の業界地図、確か前回までの版まではこんな項目はなかったはず。
マイスターは今回、公文やZ会といった教育関連業の動向を見ようと思って買ったのですが、まさかダイレクトに自分の属する業界が分析されているとは…。
いや、前々から、「大学の業界勢力図も、こんな感じでまとめてくれればいいのに」と強く希望していたのは事実ですが、ほんとにやられるとは思っていませんでした。
うれしい驚きでした。
さっそく、見てみますと…。
他の業界では、売り上げや店舗数でトップを決めるという方式が取られています。
大学の場合もこれに倣い、帰属収入額と学生数で業界トップを決めています。
これはいい…。
これまで、あまりお目にかからなかった指標です。
大学は、営利企業とはもちろん目的も性格も全然違うわけですが、
このように、他業種と財政規模での比較をしてみるという視点も、
時には有意義かと思います。
その結果、
「3大メガ大学」
なる言葉が登場しています!
こういうフレーズ、流行っているのでしょうかね。
ここで「3大メガ大学」として挙げられているのは…、
○業界1位:日本大学
○業界2位:東海大学
○業界3位:早稲田大学
です。
帰属収入合計では早稲田大学より、近畿大学、慶應義塾大学の方が額が大きいのですが、学生数で上回る早大が、3位にランクされています。
(学生生徒等納付金の額で見ると、上記ランクの順番どおり)
医療収入や資産運用収入などを含め、
帰属収入の合計が1,862億円にも達する、日本大学。
学生数は10万人を超え、2位東海大学の5万6143人を大きく引き離しています。
ちなみに、公開されている日本大学の財務情報を見る限り、この「業界地図」の数字は、各種の付属校(幼稚園から中・高校、短大、専修学校)の収入も含んだものであるようです。
つまり大学のランクというより、「大学を含んだ学園のランク」ということでしょうか。
しかし、直接、営利企業と比較することはもちろんできませんが、
この財政規模からしても、日大が大組織であることは疑いがありません。
(参考までに、あの「Yahoo!」が日本で上げている売り上げが、1,177億円です)
日大以下、上位に挙げられている数校はいずれも、
すさまじい規模の教育事業を展開している大組織だと言えるでしょう。
ちなみに、教育サービス最大手の公文(日本公文教育研究会)が、
国内18,000教室で、売上高653億円。
これは学生数で日本5位の、立命館大学の帰属収入合計とほぼ同じ規模です。
細かい点は、実際に本を買って読んでみてください。
他の業種、業界とも比較ができますので、買って損はないと思います。
また、この業界地図では、大学の「業界規模」を算出しています。
「編集推定」ということですが、その額、
5兆円。
我々が提供している高等教育サービスは、5兆円の産業規模を持っているのですね。
コンテンツ産業や娯楽産業などのいわゆる「高付加価値型産業」の部類としては、まぁまぁの規模だと思います。
(参考:ゲーム業界は3兆円、新聞業界は2.3兆円、広告・PR業界は、5.8兆円)
何百万円もの学費を、何十万もの家庭からいただいている産業ですから、決して小さくはないと思っていましたが、うむ、5兆円ですか。
(そうなると、日大、東海大、早大を合計しても業界の1割も占めていないことになる訳で、そう言う意味では、「3大メガ大学」というほどの表現はあたらないかも知れませんね)
いかがでしたでしょうか?
誤解を招かないよう、なんども繰り返りますが、
大学は基本的には非営利の団体であって、利益の追求ではなく、高い価値の教育を安定的に供給することが使命です。
ですから、営利企業とまったく同じモノサシで存在意義をはかることはできません。
しかし、たまには今回ご紹介したような数字を見てみるのも、面白いとは思いませんか?
大学職員は、よく一般企業のことを「民間は…」と表現して、
まるで自分たちとは別の世界のように語りますが、
大学だって、巨大な産業規模を持ち、日本経済に貢献しているのですよ。
こうした産業規模という視点で自分の所属する業界を見てみることは、大学教職員にとってはあまりないことだと思います。
でも、こんな形で日本の経済全体を想像し、
その中で自分たちが普段行っている事業の大きさを想像し、
自分たちの仕事をちょっと違った目でも評価してあげられるようになって、
それで毎日の通勤電車の中で、これまでよりちょっとだけ胸を張っていられるようになったら、悪くないと思いませんか?
個人的には、
日本と世界を支える「人づくり」をしながら、
OB、OGというファンを確実に残し、
その上、経済にもしっかり貢献しているなんて、
すばらしい産業じゃないか!
と思っているマイスターでした。