アメリカの教育NPOは、スゴイ

「ほぼ日刊イトイ新聞」のメルマガで、

「ドイツでは、昼間から学食でビールを飲むのは当たり前の光景です。
 水より安いです」

なんて投書が掲載されていて、衝撃を受けたマイスターです。
なんってこった…。
そういえば旅行で行ったスペインでは、マクドナルドのセットメニューの飲み物で、「ビール」が普通に選択肢に入ってました。追加料金は不要でした。
ビールって、世界ではそういう扱いなのかなぁ?

以前の記事で、東大に、米国教育NPOについての話を聞きにいったことを書きました。

その主催者である中原淳氏のブログに、当日のことが書かれていたので、ご紹介します。

■「Learning cafe@Todai」(nakahara-lab.net-blog)
http://www.nakahara-lab.net/mt/archives/2005/08/learning_cafeto_1.html

・当日、配布されたレジュメ(PDF、英語)
http://www.nakahara-lab.net/learning_cafe_bar/20050803yvetta.pdf

当日プレゼンテーションをされたのは、イベッタ=タン氏でした。
米国最大の教育NPOのひとつであるEducation Development Center(EDC)で働いておられます。

EDCは、もともとハーバード大学およびマサチューセッツ工科大学の教員達が立ち上げたNPOだとのこと。

平たく言えば、

大学と連携し、

「教育の質の向上」についての大学の研究成果を、

実際の「Practice」として提供するNPOです。

単なる「取り組んでみました」というのではなく、

ちゃんとした研究の裏付けがあり、

また、取り組みで得られた内容を研究にフィードバックするような体制がある、

そんな活動をされています。

EDCの取り組みの詳細については、冒頭、中原氏のブログに書かれていますので、そちらをご参照ください。

中学や高校の教師の教育レベルを上げるために、

自学自習で、教員が自ら研鑽に励むようにする、

「教員を育てる教員」を育成する、

などなど、様々な角度から、多くのプロジェクトを運営しているとのこと。

研究は大学に任せて、このNPOは「Practice」を専門に担っているわけです。

ですから、

「実際の成果はあまりなかったけど、まぁ、研究のデータが得られるからいいか」

なんて甘えはありません。

逆に、

「一生懸命やっているのだから、効率とか、学術的な裏付けなんて二の次だ!」

といった、悪い意味での現場主義にも、陥りにくいのではないかと思います。(日本のNPOで働いている方は、悲しいかな、こうした現場主義にとらわれてしまっている方が少なくないように思います)

分業、コラボレーションのいいところですね。

EDCのプログラムを終了することによって、教員の給与が上がるような仕組みも構築されているようです。

インセンティブですね。
これがなくては、なかなか、実効性のあるプロジェクトとして育ちません。

ちょっと話はそれますが、以前、

・教員養成大学院卒業者は、優遇すべきだ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/26103105.html

…という記事で、日本の「教職大学院」について取り上げました。
教員のレベル向上のために新設される教員養成のための専門職大学院ですね。

中央教育審議会(文科相の諮問機関)は、同大学院修了者について給与や採用面で優遇するとしています。

ところが規制改革会議から、

「教職大学院を卒業したからといって、給与や採用面で差を付けるのはいかがなものか」

というクレームが付きました。
教員になるのに、新たな参入障壁になる、というのが理由だそうです。

ブログの記事でも書きましたが、こんなんじゃ、大学院進学者は増えません。
コストと時間を払って、専門性の高い教育を受ける人に対しては、相応のインセンティブが与えられて当然だとマイスターは思います。

アメリカでは、NPOが、大学と共同でそういった仕組みを作り上げているのに、国をあげての改革で、そんなことを言っていてどうしますか。

教職大学院で高度な専門性が身に付くのなら、なるべく多くの方が大学院を目指すように制度設計したらいいじゃないかと思います。
そのために一番効果的なのは、給与に差を付けることです。

日本では、

「お金のために働いたり、学んだりするのはいけない」

という社会的な観念が、まだまだ幅をきかせているのかもしれません。
(ライブドア社の堀江社長も、そういうバッシングを受けましたし…)

でも、お金のインセンティブがないことで、
せっかくの大学院も、実効性を持たないものになってしまうのではないか、
と、マイスターは心配です。

話をEDCに戻します。

で。

このEDCの規模がすごい。

全世界に850名のスタッフ、

300以上のプロジェクト、

年間の売り上げ104億円。

本気で、教育を変えようという、事業です。
それも、米国内だけにとどまらず、世界が活動範囲です。

日本のNPOのイメージを超えていますね。

「NPOにはPh.Dを取得寸前の学生、あるいは、取得者がゴロゴロとしています。そこは、教育の専門家集団なのです。」

と、中原氏のブログにあります。

確かに、専門家集団でなければできない事業ですね。

日本のNPOの多くは、有給スタッフをまったく持っていないか、一人だけです。
(たいていその一人は、「事務局長」として雑務をふくめたあらゆる作業をさせられる立場になっています)

博士号を持った専門家が集まって働く場所では、まだありません。

そうしたら、日本でもそんな活動ができるかな、と考えるマイスターです。

2 件のコメント

  • マイスターさん、いつも面白く拝見しています。
    教職大学院に関するご意見には同感です!
    大学院に学ぶ時間的・金銭的コストに見合うインセンティブがなければ、誰も進学しないですよね。
    個人的には、参入障壁とはまさに現在の教員免許システムではないでしょうか?社会人が教員免許を取るのは非常に時間がかかります。教えるのが上手でも、教員免許を取るのは容易ではありませんしね。
    日本は今後ますます世界との競争にさらされることになります。競争原理に難色を示し、悪平等を維持しようとするのは、教員が競争社会に生きていないのからかもしれないですね。

  • こんにちは、マイスターです。
    お返事が遅れまして、失礼しました。
    お金と時間をかけ、教職大学院で学ばれた方には、
    やはりその熱意と向上心にみあうものを得てほしいですよね。
    「こどものために働いているのは同じなんだから、給与に差をつけるなんておかしい!」
    というご意見もあるでしょうが、それでは、率先して学ぶ方が出ませんよね…。
    bananafish1970さんのおっしゃる通り、「悪平等」が幅を利かせているように私も思います。
    話は変わりますが、大学職員を養成する大学院も出てきています。
    こちらも、進学させる職員が増えるよう、応援したいのですが、
    「卒業したからって仕事内容や報酬はこれまでと変わらない」
    なんて扱いを職場で受けていないか、心配です。
    かのMBAですら、日本の企業は活用しきれていない様子ですし。
    「学位」=「能力の担保」という見方が、長らく、日本社会から失われているのかもしれませんね。