チャータースクールは、戦う公立学校だ

最近、泊まりがけ研修の前には、
「研修先で食事が出るから、今日はあまり食べなくても大丈夫」
という思考をしていることに気づいたマイスターです。

明日から、またまた研修のため、出張です。今度は、大阪です。
前の職場でプロデューサーとして働いていたときは、取引先が多かったので、大阪にはよく行っていました。久しぶりです。

今度の研修は、若手職員対象のものではありませんので、また違った内容を学べそうです。

さて今日は、「チャータースクール」の仕組みをご紹介したいと思います。

「チャータースクール」という言葉を知っている、聞いたことがあるという方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。

チャータースクールというのは、アメリカの、公立学校の一形態です。
州ごとに定められたチャータースクール法に基づき、特別認可(=チャーター)を受けて開設が認められる学校です。

ただの公立学校ではありません。

「市民や教員が、

自分たちで教育の内容を決めて、

自分たちで設立・運営できる公立学校」

です。

たとえば、アメリカにも、日本の「学習指導要領」のように、

「ここからここまでは、小学校で教えてね。
 ここは、中学校で教えてね」

といった、一応の基準があります。
基準というか、規制ですね。

でも、

こうした規制にとらわれない教育を、我が子に受けさせたい!
こうした規制にとらわれない教育を、行いたい!

そうした要望をもつ保護者や教師だって、いっぱいいるわけです。

しかしそれは、通常の公立学校では認められていません。
どうしても公立学校の教育に満足できない親は、高い学費を出して私立学校に子供を通わせなければならないわけです。
すべての親が、そんな選択をすることは、できませんよね。

チャータースクールとして認可されれば、そうした学校を

なんと保護者や教員自らの手で、

公立学校として設立できるのです!

とても、ぶっ飛んだ制度だと思いませんか?

免除される規制は、教育の内容だけではありません。
学校の運営(誰が、どのように運営するか)に関わる規制も、かなりが免除されます。

教員免許を持っていない人間が校長として働いたり、教育に携わったり、できます。

何人の教員を、いくらで雇用するか、という判断も、自由にすることができます。

子供達をどれだけ受け入れるか、
どの地区から受け入れるか、も、自由です。

はっきりいって、公立学校の枠を超えていますよね。

でも、公立学校なんです。
チャータースクールの運営予算は、受け入れた子供の数に応じて、税金から拠出されるからです。

こんなぶっ飛んだ公教育制度が、どうして認められているのでしょうか?

発祥は、ミネソタ州。
同州の州法により、1991年にはじめてチャータースクールは制度化されました。

州によって内容に多少の違いはありますが、

・有志の教員や保護者等が自らの望む学校を設立・運営することを認め教育の自由度を高めること
・教育内容などにおいて各種の規制を撤廃し、多様な公立教育と学校選択の自由を生徒に与えること
・それにより従来の教育システムでは対応しきれなかった生徒層のニーズに応えること

などが、このチャータースクール法の主旨とされています。

つまり自由競争の考え方を公立教育の現場に持ち込むことで、
多様で優れた学校を生み出し、生徒の選択の幅を確保することが、ねらいなのですね。

アメリカでは多様な民族や、多様な文化的背景を持った人々が、それぞれに集まって暮らしています。
地区によって生活レベルが違ったり、言語が違ったりすることも、珍しいことではありません。

進学率や卒業率が著しく低い地区もありますし、教育に対して独自の要望を持っている地区もあります。

そんな彼らを、すべて同じ教育制度に押し込め、
おなじように教育する。
そこには、無理もあったことでしょう。

そこで、こうした個別のニーズに対応するため、チャータースクール制度が生まれたわけです。

ミネソタのチャータースクールは、特にこうしたマイノリティの人々に対して、確実に成果をあげていきました。

以来90年代を通じてチャータースクール法は全米に広がり、今では30以上の州にチャータースクール法があります。

マイスターがこの制度について研究していた2001年の時点で、全米に、2,371校のチャータースクールがありました。

子供の全体数から言えばまだ数パーセントだったチャータースクールですが、既存の公立学校に刺激を与え、教育全体を活性化する役目を大いに果たしていました。

現在は、もっと増えているかも知れません。

Chester E. Finnという学者は、チャータースクールの定義を以下のように述べています。
————————————————-
•おおよそ誰にでも創設しうる
•ほとんどの州および地方の諸規制の適用を免除され、運営は基本的に自律的である
•家族が選択して、その子供達を通わせる学校である
•そこを選んだ教育者達が教職員となる
•満足な成果を上げられなければ、閉鎖されることに従わねばならない
————————————————-

チャータースクールの最大の特徴は、最後の

「満足な成果を上げられなければ、閉鎖されることに従わねばならない」

というところにあります。

まず最初に

「こういうメンバーが、こういう方法で、こういう教育を行います。
 ○年後には、こうした成果を出して見せます」

と、計画を提出するのです。

それが認められれば、その計画にしたがった教育を公立学校として行えます。
規制を免除されると言いましたが、何でも許されるわけではありません。
最初に計画として提出した通りの教育をしなければなりません。

しかし約束した成果が計画通りにあげられていなければ、その時点で廃校です。

最初に掲げる計画にはこれといって制限がありません。

「○○族の言語と文化を学ばせる」
「進学率を20%向上させる」
「プロジェクト・ラーニングですべての学習を行う」

などなど何でも有りです。
(ただし、公的な税金が投入される関係上、特定の宗教教育をすることは禁じられています)

あくまで、自分達が設定した成果をちゃんとあげられているかどうか、が問われるのですね。

なお公立学校なので、入学試験を行い、学力で子供を選抜することは禁じられています。
入学希望者が多い場合は、抽選になります。
あくまで、偏差値のような学力競争ではなくて、「学校の魅力」による競争なのです。

我が国でも、教育の「アカウンタビリティ(=説明責任)」が叫ばれて久しいですよね。

でも、このチャータースクールほど、アカウンタビリティを追求している制度が果たしてあるでしょうか?

さてこのチャータースクールですが、州によっては、設立許可する学校の数を「無制限」としています。

へたすりゃ、狭い範囲の地域に、いくつも公立学校ができちゃいますよね。

で、チャータースクールに行きたがる子供が増えると、既存の公立学校はどうなるでしょうか?
競争に負けた結果、廃校に追い込まれる可能性だって当然あるわけです。
で、廃校にならないよう、既存の公立学校が、チャータースクールに「衣替え」して再起を図ることだって、あるのです。

まさに、市場主義。アメリカらしいと言えば、アメリカらしいですね。

今日は、ここまでにします。

今後さらにチャータースクールについて、詳しい事例を交えつつ、ご紹介していきたいと思います。

3 件のコメント

  • マイスターさん:
    ご存知かもしれませんが、チャータースクール関連の情報を参考までにお送り致します。
    2004/1/20放送 ガイアの夜明け「世界教育ウォーズ」
    http://bb1.tv-tokyo.co.jp/gaia/preview/bk20040120.php
    KIPPアカデミーの関連記事は以下の通りです:
    Newsweek 2003/5/28 「詰め込み学習」の勝利
    http://www.nwj.ne.jp/members/articles/20030528/ST_edu.html
    本当にやることが大胆ですね。

  • マイスターです。
    これ、わかりやすくていいページですね。
    いい情報を、どうもありがとうございます!
    チャータースクールは、「自由な教育内容」を謳っていると記事では書きましたが、実際には、「試験での学力アップ」を中心に据える学校が多いという話も、耳にしたことがあります。
    元々、経済的に豊かでない地域で開校されることが多いですから、そうしたコンセプトが、一番、保護者に響くのかも知れませんね。
    KIPPアカデミーは、コンセプトのわかりやすさと、実際に挙げている成果を見る限りでは、そうしたチャータースクールの代表と言えるかも知れませんね。
    私も、実は数校、実際のチャータースクールを見せていただいたことがあります。
    その中には、日本の「二宮金次郎」の銅像写真を、学校のパンフレットの表紙にしているところもありました(^^;)。
    (日本から視察に訪れた現役教員のみなさんは、見て苦笑いしていました)