「『反日』の国からの留学生達」(SFC CLIP)

毎日飲んでばかりの生活になったマイスターです。
そろそろ夏休みも終わりですね。

ちょっと興味深い記事を見かけたので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「『反日』の国からの留学生達」(SFC CLIP)
http://clip.sfc.keio.ac.jp/article.jsp?id=news05080501
—————————————————————

AO入試のことを調べているとき、偶然見つけた記事です。

「SFC CLIP」は、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの学生が中心になって編集・発行しているメディアです。
ブログ形式で発信されているのが、大学のプロジェクトらしく、ユニークですね。

学生を対象としたキャンパス内のニュースを主に扱っているようですが、学外の人間が読んでいてもなかなか興味深いです。

で。

実はマイスターも前々から、中国からの留学生の方に、こうした質問をしてみたかったのです。
それも、できれば、政治学や国際関係学を学んでいる学生さん。

実際に、どういう教育を受けてきたか、当事者の方から聞いてみたかったのです。
こうした学問を学んでいる方からなら、

「あの教育にどういう意図があったか?」

という自己分析が聞けるかな、と思っていたので。

で、記事で興味深かったのは、以下のような記述。

-教科書を見れば分かるとおり、黒い文字ばかりで、写真はあまりありません。僕が指摘したいのは、教育以外、例えば反日のドラマとかが数知れずあるということです。

 中国で実際に歴史を勉強するのは、小学校5年生以上からになっていると思います。ところが5年生以下の子供達も「日本が悪いな」と思っていて、それはドラマなどから来ています。ドラマの中で、日本軍が生々しく首を切る、などいくらでもあります。-(上記記事より)

-アニメやドラマなどが沢山あります。実際、おじいちゃん、おばあちゃん、読み書きが出来ない子供でも、テレビや劇などわかりやすい映像を見て、昔の侵略行為というもののイメージが作り上げられます。

 私が通っていた小学校は、学校全体で年に2回映画館に行きました。そこで抗日戦争の映画を見るわけです。-(上記記事より)

うーむ、なんとなく想像はしていたが、
やはり教科書はこうしたイメージ構築メディアの一部でしかなかったか。

 「教科書で学ぶ」

 「テレビドラマや映画で見る」

 「博物館などで確認する」

 「周囲の大人達から話を聞く」

というスクラムが、がっちり組まれてますね。

ここまでやれば、どんな価値観も、無批判に刷り込まれると思います。

日本では、

「戦争は人が死ぬから、絶対にやってはならない」

という価値観に対して、上記のスクラムが働いていますよね。
価値観の内容の是非については、ここでは触れません。
でも間違いなく、こうした「メディアのスクラム」は存在すると思います。

アメリカなら、

「国のために働くことは尊い」

でしょうか。
アメリカ社会では、映画でも教科書でも博物館でも、基本的にこの価値観が一貫して働いているように思います。
これも、「メディアのスクラム」だと思います。

有名な話ですが、日本に原爆を落とした爆撃機「エノラ・ゲイ」は、アメリカの博物館では、

「戦争を早期に終結させ、結果的に平和に貢献した立役者」

として、まるで英雄のように紹介されています。
死者の数や、被害の大きさについては、ノータッチです。
あくまでスクラムから離れない範囲の中で、ストーリーが構成されているわけです。

かつて、ナチスが政権を握っていた頃のドイツでは、
非常に遠回しな表現で、ユダヤ人の富裕ぶりを批判するようなメルヘンアニメ映画などが作られていました。
(直接的な表現でない分、かえって中国の抗日映画より巧みです)

なんのことはない。
「メディアのスクラム」は、国家につきものなんですね。

で、

中国ではきっとそのスクラムが、「抗日」という価値観の流通に使われているのでしょうね。

冒頭の記事では、地方の中国人などが持っている、日本に対する二面的な見方についても、触れられています。

憎むべき対象としての日本と、
経済的、文化的な豊かさの象徴としての日本。

こうした相反する見られ方があるというのも、おそらく、本当でしょう。

中国の国家メディアは、そのうちの前者について少なからず関与しているのだと思います。

これで、経済的な優位性が日本から完全に失われたとき、
いったい両国の関係は、どうなってしまうのでしょう?

「日本の若者に対して、中国の正しさをアピールする」

ようなメディア戦略を、中国がそのうち実行し始めるんじゃないかと、マイスターは勝手に予想しています。
国益とはそういうもので、
国家がメディアを使うというのは、つまりはそういうことだからです。

教科書から博物館、すべての電波メディアまでを一党が掌握している国なら、そんなことは簡単に実行できるんじゃないでしょうか。

批判するにしても、参考にするにしても、
メディアと組織ガバナンスの関係について考えるとき、
中国ほどのいい教材は、他にありません。

今日も、最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

・扶桑社、中国、韓国の歴史教科書
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/27966079.html

・教科書は、国家を統制する究極のメディアだ (国定教科書はキケン!)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/28062700.html