土曜日は出先で地震にあったマイスターです。
みなさんは大丈夫でしたか?
今日はワード解説をお届けします。
今日のワードは、「エラスムス計画」です。
[エラスムス計画]
エラスムス計画(The European Community Action Scheme for the Mobility of University Students : ERASMUS)は、各種の人材養成計画、科学・技術分野におけるEC(現在はEU)加盟国間の人物交流協力計画の一つであり、大学間交流協定等による共同教育プログラム(ICPs:Inter-University Co-operation Programmes)を積み重ねることによって、「ヨーロッパ大学間ネットワーク」(European University Network)を構築し、EU加盟国間の学生流動を高めようする計画である。
エラスムス計画の提案は、1985年12月、当時のEC委員会より閣僚理事会に提出された計画書に始まり、約1年半に及ぶ閣僚理事会での協議を経て、1987年6月15日正式決定され、パイロット・プログラムが開始された。1995年以降は教育分野のより広いプログラムであるソクラテス計画の一部に位置付けられている。
以上、文部科学省「中央教育審議会大学分科会留学生部会
留学生交流関係施策の現状等について(資料編)H14.2」より抜粋http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/007/030101/2-7.htm
■EU公式サイト「ERASMUS」
http://europa.eu.int/comm/education/programmes/socrates/erasmus/erasmus_en.html
文科省の定義はややわかりにくいですね。
エラスムス計画とは、EUが欧州全体で進めている、高等教育での大規模な人材交流プロジェクトです。
以下の4つの事業で構成されています。
<学生流動化事業(Student Mobility Program)>
<教官流動化事業(Faculty Mobility Program)>
<共同カリキュラム開発(Joint Curriculum Development)>
<集中講座(Intensive Program)>
中心となっているのは、学生の流動化事業です。
事業の概要は、以下の通りです。
・ヨーロッパ内の大学・高等教育機関に在学する学生が、
・国境を越えて3~12ヶ月、他のヨーロッパ国に移動し、
・そこで学修の一部を行うことを財政的、学術的、行政的側面で支援する事業
→単位は欧州単位互換制度(ECTS)に基づいて、
1年間の学修を最高60単位に換算し在籍大学の単位へ読み替える
→在学中の大学・学部と留学先の大学・学部による協定が前提
学生は奨学金を受け取ることができますし、
また、留学先の大学には学費を払う必要がありません。
留学先で取得した単位は、自分が所属する大学の単位として認められます。
学生にとってはメリットの多い制度だと言えますね。
現在、エラスムス計画のターゲットとなっているのは、欧州連合の25の加盟国、欧州経済地域(アイスランド、リヒテンシュタインおよびノルウェー)の3か国、3つの候補国(ブルガリア、ルーマニアおよびトルコ)です。
これら31か国の2199の高等教育機関がERASMUSに参加しており、
全体での2004年度の予算は、1億8750万ユーロに上りました。
当初は3,000人程度の学生しか利用者がいませんでしたが、現在は「ソクラテス計画」という大きなプロジェクトに組み入れられ、累計120万人の学生が外国で学んでいます。
利用者は年々増加しており、欧州連合のプロジェクトの中でも特に大きな成功例のひとつと見られています。
予算も、利用者の拡大に伴い、増加し続けています。
エラスムス計画の目標は、EU公式webサイトには、
“producing high quality human resources”
(クオリティの高い人的資源の創出)
“disseminating scientific discovery and advanced knowledge through teaching”
(教育を通じた、科学的発見および高度な知識の流布)
“adapting to the constantly emerging needs for new competences and qualifications,”
(新しい能力や資格に対するニーズへの、継続的な適合)
“educating future generations of citizens in a European context”
(将来のヨーロッパ市民の教育)
の4点だと書かれています。
個人的には、4番目がメインかな、という気がします。
共通の知的土壌を持ち、他国で活動する能力を備えたEU市民を育成することは、ゆくゆくは
・EU市場の拡大、生産力および需要の増加
・EUの政治的協力・統合の促進
につながると考えられるからです。
このようなビジョンがあるからこそ、巨額の予算を投じても、進める意義があるのでしょう。
このエラスムス計画の成功を元に、欧州では様々な教育交流プログラムが組まれています。
■「欧州委員会 による主な教育・文化プログラム」(文部科学省:2000年時のデータ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/001/011002/001/sankou.htm
■「ソクラテス計画の概要(英語)」(EU:最新のデータ)
http://europa.eu.int/comm/education/programmes/programmes_en.html
「Erasmus Mundus」という、EU圏外からヨーロッパに留学する学生、教員を対象にしたプログラムも始まりました。こちらのプログラムは、一般的な受付と、「アジア枠」の受付の2通りで学生を集めています。
一般枠は455人で、ブラジル(35)、ロシア(31)、ウクライナ(23)、アメリカ(20)、中国(18)、メキシコ(18)およびナイジェリア(18)など、84の国々からの学生です。
アジア枠の下で選ばれた353人の学生は、主としてインド(133)、中国(67)、パキスタン(31)、タイ(28)およびマレーシア(23)の出身です。
エラスムス計画については、言語の違いによる学生流動の不均衡(英仏語圏優位) や、
拡大し続ける予算の不足など、課題も多く残されています。
それでも、教育を通じたEUの戦略的な人材交流計画は、
深く静かに成果をあげつつある、のではないでしょうか。
今日のワードは、エラスムス計画(Erasmus)でした。