情報化で学生は甘やかされるか

昨日は一日中部屋に引きこもっていたマイスターです。

さて、先週の研修では、8人程度のグループでディスカッションをする場がありました。

マイスターのいたグループで、キーワードの一つになったのが、

「過度な情報化は、学生を甘やかすか?」

というものです。

大学が構築した、学生向けポータルサイトというものがあります。

学生それぞれにIDとパスワードがあり、ログインすると、

  ・自分が履修している授業と、時間割一覧

  ・自分が履修している授業に関する連絡(休講など)

  ・教務課、学生課からのお知らせ

  ・就職課からのお知らせ

  ・図書館で借りている本の情報

  ・その他、呼び出しや連絡全般

が表示されるというものです。

ポイントは、
「学生一人一人に対して、違った情報を出す」
という点ですね。

従来、大学から学生への連絡手段は、「郵送」か、「掲示板」でした。
(カウンターで直接指導するにも、まずはこうした方法で学生を呼び出さなければなりません)

そうして出される情報の多くが、「学生全員向け」でした。

大学の掲示板コーナーを見ればわかります。
学生は、

  自分のとっている授業が休講でないか、
  教室が変更になっていないか、
  興味のあるセミナーはあるか、
  その申込日と申し込み先は、

などと、「自分向けの情報」を探し出す必要がありますよね。

掲示板も、整然と並んでいればいいんですが、たいていは

「期限の過ぎたプリントをはがし、その場所に次のプリントを貼る」

式の更新方法ですから、かなり不親切でわかりにくい状態です。

ですが現状では、掲示してある以上、見逃したらそれは学生のせい、ということになっています。

マイスターは、こうした不親切な状態が、以前から気になっていました。

学生ポータルサイトの仕組みでは、学生それぞれに対応した情報が表示されますので、かなり学生の負担を軽減できていいんじゃないか、と思っていました。

で、ディスカッションの話に戻るのですが、

「過度なサービスは、学生の指導上よくない」

という意見が、結構、ディスカッションでは多く聞かれました。

学生が必要な情報を、こちらで学生のために編集して出してやることは、「甘やかし」ではないか? ということですね。

その意見も、もっともです。

もっともなんですが、だからといって情報化をまったくしないのも、もったいない話ですし、もう少し細かく事態を分析する必要があります。

かつての大学生と比べて、学生が取捨選択しなければならない情報は非常に増えていると思います。

就職先の情報、セミナーの情報、講義の選択肢、図書館で検索すべき情報などは、大学から発信される情報です。
それ以外の組織やメディア、コミュニティから来る情報もありますね。

情報が10倍になったら、情報を探すための手間は1/10にならないといけない。
そうでないと情報の質を考えた上での適切な判断や行動は、とれない。

というのがマイスターの持論です。
その意味で、「古きよき時代」と同じように、紙で貼り出した情報を全部取捨選択させるのは、どうかと思います。

また、学びのスタイルは多様化しているわけです。
一週間に一度しか学校に来ない学生だっていますが、情報が常に一週間前に用意されているとは限らないのです。

履修登録用紙の記入方法が間違っていた学生を呼び出して指導するのは大切だ、という事例もディスカッションで出されました。

が、呼び出して指導するのが、そもそも学生にとっていいことなのかどうか。

webで登録させて、登録時に学生が
「あれ、これ登録できないぞ。あ、そうか、これはこういう理由で登録できないんだ。じゃあ…」
などと、自分で考えるような仕組みにするのも、指導上はいいんじゃないかと思います。

そもそも、履修のミスは、単にこちらの仕組みがわかりにくいだけな気もします。
急な休講、教員の都合による時間割の変更なども、大学の都合です。

こうした情報を、見やすく整理するくらいのことは、やってもいいような気がします。

セミナーや就職先の情報なども、自宅で検索できるようにして、じっくり家で吟味&取捨選択させればいいんじゃないかと思うのです。

それに何より、私達職員は、普段、
「誰がこの情報を必要としているか?」
というのを、あまり考えていない気がします。

配信先を考えなければならなくなると、もう少し、私達のコミュニケーション能力は上がるのではないでしょうか。

以上はマイスターの個人的意見ですが、それぞれの意見がディスカッションでは聞けて、参考になりました。

学生がカウンターに来なくなるのは、学生のコミュニケーション能力を落とすことになって良くない、という意見ももっともです。

(その場合、対人コミュニケーション能力低下が心配されるのは、きっと私達職員の方も同じでしょう)

が、本当にコミュニケーションが必要な学生は多分それでもカウンターに来ます。

それに、それなら、他に職員と学生の接点を設ければいいだけです。

例えば職員が地域行政と連携して、学生と共同でイベントを企画するとか。

普段忙しさにかまけて、やりたくてもできないでいることが、いっぱいありますから。

で。

ちょうど今朝、本日開講予定だった補講が、休講になりました。

普段の授業なら、補講情報を学生に配信する仕組みが使えるのですが、補講の時間割はイレギュラーなので、そのシステムが使えません。

その授業は夜間の開講科目で、その科目しか受けていない学生がたくさんいます。
いちおうweb上に情報を掲載しましたが、何しろ社会人学生の多くは、既に出勤している状態です。
(そのweb上の掲示板も、キャンパスの掲示と比べると、情報が掲示されたりされなかったりしていて信用度が低く、普段から学生がマメにチェックしてくれているとは思えません)

で、この事態を周りの職員に言ったら、「それはしょうがないよ」の一言で片付けられてしまいました。

ですが、この場合はどう考えても学生に非はないわけで、しょうがないの一言で済ましていいのか、とマイスターなどは思うわけです。

仕事を早めに切り上げて授業にやってくる社会人学生のみなさんのことを考えると、柔軟に使える情報配信システムがあればいいな、とか、普段からすべての情報が集中するポータルサイトがあればいいな、とか思うのです。

学生とのコミュニケーション、ITをキッカケに、もう一度ゼロから考えてみるのもいいのではないでしょうか。

5 件のコメント

  • 野球のおかげで全身筋肉痛っす。
    学生が窓口に来るたびに椅子から起立するのが、苦痛でした。(それでもしっかり笑顔を対応しましたよ(^@^))
    マイスターが元プロデューサーということを、ブログを拝見させてもらってから、本格的に知ったので、ホテルの時にもっとお話聞けたらな~といまさら後悔してます。
    今日は今から用事があり、書けないのですが、マイスターの意見を元に、私の講義を聞いての感想なんかを書込したいと思います。
    すいません、ではまた。

  • ペニーさん、こんにちは、
    野球、大変でしたね。
    でも、楽しそうでいいですね。
    こちらこそ、また、お話を伺いたいです。

  • 私も学生に言ってます、「掲示板ちゃんと見なきゃダメだよ」と。
    でも、いつ自分の名前が載るかも分からない掲示板を「定期的にチェックしろ」というのは酷な話なんですよね。
    掲示板というやつは、デカデカと大学の隅にあって存在感ないのに、えらい情報持っていて、学生と職員がもめる一番の原因はこいつじゃないかと思います。
    学生への情報は、Webでの実施・改善が急務であることを、研修やマイスターのコメントを通じて学びました。早くPC技術を勉強しないとなぁ~。
    私が一番Webに賛成する点は、紙の無駄使いを減らせるからです。私は掲示して回収した紙は、メモ用紙に変身させてます。(メモしてゴミ箱に捨てるのも、気がひけます)
    以上が感想です。(拙い文才ですいません。)

  • マイスター>>
    「過度なサービス」という言葉は実際あるのですか?大学の視点ではなく、様々な企業の視点からでも結構です。サービスの改善意識を制限してしまうと、もうそこで終わってしまうのでは…
    ちょっと疑問に思ったので。よろしくお願いいたします。
    それと書込する文字数に限りがるんですね。コンパクトに感想書いていきます。(^.^)

  • こんにちは。
    「過度なサービス」というのは、ディスカッションの場で出た言葉ですね。
    その場では、
    「なんでも学生の代わりにやってあげることで、学生が、自分で主体的に情報を収集しなくなったり、コミュニケーションをとろうとしなくなったりするのはよくない」
    という文脈で、出た言葉だったと思います。
    おっしゃるように、こちらからサービスに制限をかけるという点には、疑問も感じます。
    サービスは、追求され続けなければ、どんどん悪くなるものだと思いますが、その意識が私達サービスの担い手にあるのかないのかが、重要なんだろうな、と思います。
    「サービスの改善意識を制限してしまうと、もうそこで終わってしまう」というのは、ズバリその通りではないでしょうか。
    サービスそれ自体よりも、こうした「姿勢」や「精神」があるかないかが、重要なのかも知れませんね。
    必要に応じて時には指導しなければならない。
    そこも含めて、学生を「大切なお客様」として捉えているかどうか。
    営利企業なら、
     お金を払ってくれる人=お客様
    であり、「お客様は神様」というイメージがしやすいですよね。
    ですが、学校は、お金を払っているのは学生本人でないことがほとんどです。
    また一度選択されたら、他の学校に移ることもまれです。
    普通の企業に比べて、学生はお客様なんだ!とイメージがしにくい環境ではあるでしょう。
    でも、そこを、やっぱりちゃんと意識して、お客様なんだと扱ってあげるような職場の雰囲気、姿勢が大切なのかな、と思います。
    きっと、学生を大切なお客様だと考えていれば、必要な「指導」も、もっと適切に行えるんじゃないかと思うんですよ。
    窓口に来た問題のある人、という認識で学生さんを見ていては、サービスは進歩しない、むしろ後退していってしまうんじゃないかと思います。
    ※コメントの書き込み文字数、制限があってすみません…。
    管理人であるマイスター本人は、直接管理ページから書き込めるんですが、みなさまにはご不便おかけしてます。
    文字数が足りないときは、連続で書き込んでいただいても結構ですよ。(それはそれで書く方は面倒くさいかも…申し訳ありません)