大学図鑑!

いわゆる大学ランキング本は、日本でも数多く出版されていますが、正直、あまりどれも差がない気がします。

研究費の取得状況、大学図書館の充実度、論文発表数…
どれも、非常に重要な指標なのですが、例えば大学受験を控える高校生にとっては、いまひとつ実感がわかない項目であるように思います。

「研究をしたい!」

と思って大学に入る学生もいますが、圧倒的多数は、

「好きなことを勉強して、色々な経験をして、一生の思い出に残る楽しいキャンパスライフを送りたい!」

とか、

「一生つきあえる、信頼できる友人を得たい!」
「その後の一生を決めるような、刺激的なことをしでかしたい!」
「進路(就職or進学)を決めるための考え方と、実力を身に付けたい!」

とかが大学に入る動機だったり、大学に期待するところだったりするのではないでしょうか。

そういう意味で、市販されている大学ランキング本のほとんどは、ズレています。

そんな中で、異色といえる大学紹介本が、これ。


大学図鑑!2006

私がまだ大学生だった1999年頃に発行され、以来、毎年レポート対象となる大学を増やしながら順調に売り上げを伸ばしているようです。

この『大学図鑑!』の特徴はズバリ、「ミもフタもないこと」ではないでしょうか。

名前の知られた全国の国公私立大学について、校風、キャンパスの様子、学部の様子、学生の雰囲気、就職状況などを紹介しています。
執筆者が現場に行き、在学生やOBに直接インタビューした内容をもとにレポートが書かれているのですが、一切、「タテマエ」がありません。ホンネのみです。

例として、それぞれのレポートの見出しについている、大学紹介文章を引用してみます。

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成城大学 「脳天気チャラチャラ系の総本山に君臨する大学」

武蔵大学 「小さくまとまった村社会での実直な生活」

専修大学 「人生をはい上がる闘志に燃える限りなく就職予備校っぽい大学」

玉川大学 「従順な子羊たちが整列する『キレイでさわやか』な大学」

東海大学 「過保護なくらいのキャンパス・ライフを送れる大学」

東京電機大学 「アキバ系の工学部を中心とする中堅な感じの理系大学」

京都大学 「聖域で培養される偉大なる変人たち」

名古屋大学 「地元の名声に支えられた心地よい揺りカゴ」

(以上、『大学図鑑!2006』より引用) – – – – – – – – – – – – – – –

ね、そのままでしょう?

もちろん、ちょっと誇張気味?と思える記述もありますが、在学されている方、その大学をよくご存知の方にとっては、「確かにそういう大学かも…」と思える部分もあるのではないでしょうか。

もちろん、大学の詳細についても、学生のホンネ聞き取りに余念がありません。

例えば、大学によっては、学部によってエライ、エラクナイの違いが、学内にありませんでしたか?

「看板は経済学部。法学部は、『自分達こそ看板』と思っているが、学内での評価は分かれる。商学部はチャラチャラ率高くて、学内での地位は低く見られがちだが、学内の雰囲気を決めるマス集団を形成。文学部は変人が多い別世界。理工学部はキャンパスが違うこともあり、同じ大学とは認知されていない」

みたいな記述が、『この大学図鑑!』には載っています。

「中高からの持ち上がり組が多く、彼らは総じて親がお金持ち。あからさまに貧乏学生を差別するような学生は少ないが、孤立感を感じることは否めないので、苦学生にはライバル校の○○大学をオススメする」

とか、

「一匹狼が多く、大企業よりはベンチャーへ進むヤツが尊敬される」

とかいった、キャンパスの雰囲気や学風、学生気質など、数値化できない情報が詰まっています。

こうした情報って、実は教授たちの論文数とか、図書館の蔵書数なんかよりも、場合によってははるかに重要になることがあるんじゃないかな、と、マイスターは思うのです。

正直言って、自分自身、4年間大学で過ごして自分の人生に影響を与えたのは、授業の内容よりも、親しい友人の考え方とか、成功した先輩の生き方とか、「こりゃ勝てねぇ」と思ってしまうくらい優秀な同級生とかだったような気が、実はするからです。

図書館が充実している大学より、刺激をくれる友人がいっぱい作れる大学、という選択は、現時点の日本では非常に有効に思えるからです。

なお、この本は大学のグループ分けに、偏差値を用いています。

それぞれのグループの中での、大学のポジショニングマップが付いています。
同じような偏差値でも、学生がガツガツしている大学、おっとりマイペースな大学、独自路線を行く学生の多い大学、なぜか格上に見られている大学など、大学の性格が比較できるので、とても面白いです。

Eグループ(いわゆる「大東亜帝国」レベル)ですと、グループマップの見出しに、

「『どこに行くか?』の前に、『なぜ大学か?』を考えよ」

と書かれています。
ね、ミもフタもないでしょう?

偏差値をグループ分けの根拠の一つにしている理由に、本書は、「学生の元気さ」をあげています。

いわゆる高偏差値大学には、受け答えも明瞭で、活気があり、前向きな学生が多い。進路についても、チャレンジする人間が混じっている。

反面、「偏差値よりも個性値さ!」と息巻く大学の学生には、実際には個性的な学生は少ない。就職も、はなから「サラリーマンになれれば…」くらいの野望しかないからか、保守的でつまらない学生が多い。

…この指摘が正しいかどうかは、正直、わからないのですが、そういう傾向があるというのは、マイスターも、実感できます。

学生時代、有名大学のキャンパスに遊びに行ったりしましたが、キャンパス中にただよう前向き、活動的なオーラ、そこにいるだけで自信を持てるような。キャンパスの空気を、うらやましく思ったのを覚えています。

自分の通っていた大学は、無気力で中流志向の高い学生が多く、キャンパスには「名の知れてる企業に就職できるといいな」みたいな空気が漂っていたので、何かに挑戦する気が起きにくい環境でした。

最終的にはもちろん本人次第なのですが。

そんなちょっと変わった視点の大学紹介本、一度、書店で見てみてください。
内容を鵜呑みにすることはありませんが、読み物として、楽しめます。