ワタミの社長が、私の周りで人気です。
このブログを読んでいる方から、「これ、いいですよ!」と、社長の著書のコピーをいただいたこともあります。
社長のお名前は、「渡辺 美樹」さん(男性です)。略してワタミ。
高杉良の小説『青年社長』のモデルになった方です。
学生時代、居酒屋の「和民」には良くお世話になりました。
今ワタミは居酒屋の他、リサイクル事業、農業と、様々な事業を展開しています。
狭義の「社会起業家」とは違うかもしれませんが、この渡辺社長はまさにソシアル・アントレプレナーとしての理念を持った、大変優秀な経営者であると思います。
そんな彼が、郁文館学園という学園の経営に乗り出し再生させるまでの想いとプロセスを綴ったのが、以下でご紹介する、「さあ、学校をはじめよう」です。
さあ、学校をはじめよう―子どもを幸福にする青年社長の教育改革600日
まさに放漫だったそれまでの経営を、渡辺氏は理事長として次々に再生させていきます。
渡辺氏に共感を覚えるのは、氏が、その辺の教育者よりずっと深い愛情と思想を持って、「子どもの夢の実現」のために改革にまい進しているところです。
お金儲けのための学校では決してありません。
(むしろ理事長就任前の学園の経営陣の方が、バブル時代にホテルを建てるなど、はるかにマネーゲームに走っています)
「夢を実現させる力」をつけるのが郁文館の教育だ、という明確なコンセプト設定から始まる、諸々の教育内容も見事です。
細かな点にまで学園の教育コンセプトを徹底させている点は、私達が大いに参考にすべきところです。
またこの改革の中で特に教育関係者の目を引くのが、「教師達の改善」についての記述だと思います。
年功序列、努力した人としない人で変わらない給料、誰からもまったく評価・指導されない環境。
一般の企業社会からすれば、学校教職員のあり方は「異常」です。
定時30分前から暇つぶしをし、定時とともに校門を出る教員、
授業に遅刻する教員、
授業の予習をしない教員…
そうした教員が、この本にも登場します。
渡辺理事長は就任時、無能な経営者が交代し、やる気のある人間を引き上げる体制が整ったのだから、今後は教員達は大いに好きな教育に打ち込んでくれるだろうと期待します。
が、上記のような状態は変わりませんでした。
教員は聖職であり、真に子どものことを想える人が教員になっていると思っていた渡辺氏は、ショックを受けます。
そこで、
・給料に対する(一部)成果主義の導入
・360度評価制度の導入
・意欲、能力がある若手職員や女性職員、労働組合員の重用
(それまでは慣例で、優秀でも低いポストしか与えられてこなかった)
・ルールを守らない教員の処罰
といった改革を断行していきます。
がんばった教員が正当に評価され、がんばらない教員は淘汰される、そうした競争原理を導入することで、教員は努力を始めます。
もちろん、これらは企業社会では当たり前のことです。
でも、学校教職員の世界では、どれも実現不可能なこととされていました。
学校は、子どもにとって居心地がいい場所ではなく、教職員にとって居心地がいい場所になってしまっている。
渡辺氏は、そう指摘しています。
とても共感できる指摘です。
この本の内容すべては、ここではとても紹介し切れません。
教職員であるあなたにも、
教育を受ける学生または生徒であるあなたにも、
子どもと一緒に子どもの教育を選択する保護者のあなたにも、
非営利組織に勤めるあなたにも、
とにかくオススメの本です。
ぜひ、どうぞ。
・郁文館学園のwebサイトはこちら。「SQ」のコンセプトは特にすばらしいです
http://www.ikubunkan.ed.jp/